2022年10月8日、DARTが衝突してから285時間後、ディモルフォスの表面から吹き飛ばされた破片をハッブル宇宙望遠鏡が撮影。
NASA/ESA/STScI/Hubble
- NASAは2022年10月11日、二重小惑星リディレクションテスト(DART)が小惑星を動かしたことを確認した。
- DART宇宙船は宇宙の岩に激突し、より大きな岩を回る軌道を32分変更した。
- 危険な小惑星を地球から遠ざけるために、これが有効な方法であることを証明した。
アメリカ航空宇宙局(NASA)は2022年10月11日、宇宙船を小惑星に衝突させるミッションで小惑星の軌道を変更することに成功したと発表した。
二重小惑星リディレクションテスト(DART)の宇宙船は、9月26日にディモルフォス(Dimorphos)という小惑星に激突し、より大きな小惑星ディディモス(Didymos)にわずかに接近させた。
DARTはディモルフォスをディディモスに近い新しい軌道に押し出すように計画されていた。
NASA/Johns Hopkins APL
このミッションは、危険な小惑星を地球から遠ざけるための訓練だった。NASAが把握している限り、少なくとも今後100年間は、そのような宇宙の岩が地球と衝突することにはない。しかし、専門家は、それが起こるのは時間の問題だと警告している。
NASAのビル・ネルソン(Bill Nelson)長官は、10月11日の会見で、「我々は、NASAがこの惑星を防衛するために真剣に取り組んでいることを世界に示した」と述べた。
「これは惑星防衛と全人類にとって重要な分岐点だ」
2022年9月26日、探査機が岩に接近し、衝突した際のDARTのカメラからの映像のスクリーンショット。
NASA Live
ネルソン長官は、公転周期が10分短くなれば「大成功」だっただろうと述べた。DARTが成功したとみなすために必要な最小の周期短縮は73秒とされていた。
しかし、地球上の望遠鏡を使った天文学者の観測により、ディモルフォスは現在、DARTの衝突前よりも32分±2分で早くディディモスの軌道を回っていることが明らかになった。
DART衝突の余波を示す画像。、イタリア宇宙機関(ASI)のLICIACubeが撮影。
ASI/NASA
以前は、ディモルフォスがディディモスを一周するのに11時間55分かかっていた。しかし、DARTの衝突により、11時間23分になった。
NASAの惑星科学部門のディレクター、ロリ・グレイズ(Lori Glaze)は「史上初めて、人類が『惑星』の軌道を変更した」と会見で述べた。
ディモルフォスに近づくDARTのイメージイラスト。
NASA/Johns Hopkins APL
ディモルフォスの軌道が変わったのは、ゴルフカートサイズの探査機がぶつかったときの運動エネルギーによるものだ。しかし、その後の観測で、小惑星から破片が宇宙へ飛び出したときの反動もその要因であることがわかった。
風船から吹き出す空気が風船を反対方向に押すように、この「噴出物」の流れがディモルフォスをディディモスに向かって押し出したのだ。
この噴出物が軌道の変化にどの程度影響したかを知るために、天文学者は現在もこの小惑星系の観測を続け、さらにデータを収集・分析している。
(翻訳・編集:Toshihiko Inoue)