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「憧れの大学生活」あきらめ続けた2年間。就活を目前に感じる焦りとむなしさ

人がいない東京

2020年4月7日、政府は第一回の緊急事態宣言を発出した。この写真は、緊急事態宣言下で人がほとんどいなくなった当時の有楽町駅付近の様子。

撮影:竹井俊晴

新型コロナウイルスの流行と共に大学に入学した世代の就職活動が始まっている。

現在、津田塾大学総合政策学部に通う私も、その当事者の一人だ。

2020年春、私たちの「キャンパスライフ」は、入学式もなくひっそりと始まった。入学直後には一度目の緊急事態宣言が発令されたことで、サークルやインカレの新歓もなければ、講義も全てオンラインに。

自宅の机の前で過ごす、画面越しでしか会ったことのない友人らとの「キャンパスライフ」は、高校の頃に憧れていたものとは遠くかけ離れたものだった。

「どんな大学生活を送ってきましたか?」

就職活動で問われるそんな当たり前の質問にむなしさを抱いてしまうこともある。

誰も経験したことのない「コロナ入学世代」である私たち大学3年生は、就活においても、人知れぬ悩みに直面している。

気がついたら就活。入学後2年間の空虚感

就活生

2022年、やっと本来の学生生活を取り戻したと思った矢先に就職活動が始まった。

撮影:今村拓馬

「真面目すぎる。楽しみ方、知ってる?」

今年の春、サマーインターンの準備をしていた際に母からふと言われた一言が、私の心の中に引っかかっている。

思い返すと、これまでの2年間ではいわゆる「大学生だからこそできる楽しみ」を経験した覚えがない。

時間がある1〜2年生の頃に入ろうと思っていたサークル活動は、コロナの影響で断念。大学まで片道約1時間半以上かかる場所に住んでいる私にとって、Zoomを使った講義の後にサークルや課外活動のためだけに東京まで出ていくことは難しかった。

2021年になり、ワクチンが普及したことで生活が戻ってきた時には、すでにサークルへ入る気力は失われていた。

入学する前に夢見ていた、友人らと空きコマや授業後に課題をしたり、近くのカフェでお茶をしたりという何気ない大学生活。長期休みでの留学や海外旅行への憧れもあった。

思い返せば、大学1年生の頃、約2カ月あった夏休みの間に友人と会ったのはわずか5回だけ。海外旅行や留学も、結局実現できなかった。

大学3年生になった今、企業説明会や秋・冬インターンなど、確実に「就活」の足音が聞こえている。

この2年間、オンラインでも活動できる学内プロジェクトや文化祭の実行委員、学生団体などを通じて、やりがいを感じてきた。それが私にとってのいわゆる「ガクチカ」になっている。

ただ、思えば1年生の時から、「将来やってくる就職活動に向けて何かをしなければ」という思いが頭の片隅にあった。

学生団体やプロジェクトなど、大学生活で満足できたこともある一方で、思い描いていたキャンパスライフがほとんど送れなかった。就職活動が本格化する前に、もっと何かできなかったのかと、今更ながらモヤモヤを感じている。

「やりたいこと」の見つけ方を見失ってしまった

テレビを見る女性

やりたいことをやろうにも、常に「コロナ」がつきまとっていた。

Getty/PhotoTalk

「自分で自分の可能性を狭めているのではないか」

都内有名私立大学に通う3年生のあかりさん(仮名:21歳)は、コロナ禍での学生生活を振り返ってこう語る。

あかりさんも筆者同様、「大学生だからこそ」の活動をやってこなかったと心残りを感じている一人だ。

あかりさんは、選考が早い業界を志望する友人の話を聞いて、今年の4月末から就活をスタート。サマーインターンでは、20社以上にES(エントリーシート)を提出したという。

ただ、「ここ数ヶ月、人生で一番嘘をついてきたと思う」と、将来やりたいことを考えようにも、どの企業に対しても熱を持てない状況に悩んでいると語った。

この2年間、自分がやりたいことをやろうにも、常に「コロナ」がつきまとってきた。

留学をしようにも、コロナ禍ではハードルが高いと諦めてしまった。社会生活がある程度戻ってきた中でも、友人がコロナに感染するなどして、思い描いてきたキャンパスライフを送ることはできていない。

そして今年は常に「就活」の二文字が頭に残る。

あかりさんの周りでは、昨年から準備をしていた友人が複数名留学に行くという。

コロナ禍でも自分のやりたいことを見出し、着実に準備を進めてきた友人に対して、形としては次のステップである就活を進めながらも「自分がやりたいこと」が何なのか、その見つけ方さえも見失ってしまったという現状に、あかりさんはもどかしさを感じているという。

一生付き合える友達がいない

スマホを見る女性

オンライン生活のせいで深い友人関係を築けていない。

撮影:今村拓馬

「高校時代のような結婚式に呼びたい友人がいない。就活の話も友達の間でできる雰囲気ではない」

こう語るのは、明治学院大学の経済学部に通うさおりさん(仮名:21歳)だ。

さおりさんは、大学2年目までは(オンライン講義が主で)大学に行けず、ほとんどを1人で過ごした。人とのコミュニケーションはもっぱらインターネット上の連絡ツールのみだ。

1年生の初めの頃こそ、友達ができないことへの焦りから、学生主催のZoomでの交流会に参加していたというが、結局そこで出会った人たちとの関係は続いていない。

ただ、就職活動が始まった今、さおりさんは改めて人とのつながりの重要性を感じているという。

今年になって所属している大学のゼミでは、この夏「最低2つサマーインターンに参加する」という決まりがあった。周りの学生から少し遅れて半ば強制的に就活をスタートさせたさおりさんだったが、授業との両立の難しさや企業分析不足など、ただただこなす作業になってしまっていたこともあってか、ESすら通らないことが続いた。

選考が通るようになり、インターンに参加する中で、「就活は人とのつながりで進んでいる」と感じるようになったという。

大学のキャリアセンターを通じた紹介や、インターンから本選考のステップへ進む仕組みそのものはもちろん、他大学のインターン生と関わる中で、異なる価値観に触れて就活に対する考え方も変わった。

深い友人関係と言えるものではないかもしれないが、就活を進めるいま、人とのちょっとしたコミュニケーションが、さおりさんにとって非常に重要な学びの機会となっている。

コロナ禍でも満足の学生生活。一方で、就活の現実も…

オンライン授業

コロナ禍では、多くの大学でオンライン授業が「当たり前」の光景になった。

撮影:猪野陽菜

東京出身で、立命館アジア太平洋大学の国際経営学部に通うゆうたさん(仮名:20歳)は、コロナ禍である程度制限された学生生活を送らざるを得なかったものの「思い描いていた大学生活は送れた」と満足そうに語る。

ゆうたさんは大学入学とともに東京の実家を離れ、大学のある大分県で寮生活を始めた。

しかし、新型コロナの流行によって、寮でオンラインの講義を受ける日々が続いた。

2021年度には、希望すれば対面で受講できることになったものの、結局数える程度しか大学には行かなかった。というのも、ゆうたさんの大学は留学生が多いことが特徴だったこともあり、入国が止まっていたコロナ禍ではキャンパスに行っても留学生と対面で交流することができなかったためだ。

こう聞くと、ゆうたさんは学生生活にかなりの不満をもっていそうなものだが、この2年間の満足度は高いという。

もともと期待していた海外の学生との交流や英語の勉強は、確かに理想とは異なっていた。ただ、2022年度に入って一気に状況は改善。また、英語が一定レベルに達しなければ卒業できないカリキュラムの特性上、留学生がキャンパスにいない時期にも英語に集中的に取り組む環境で鍛えられたという。

自転車

趣味をきっかけに地元住民との関係性が生まれた。

Getty/Hiroshi Watanabe

また、学業以外の学生生活も大きな後悔はない。

ゆうたさんはもともと、サークルなどの大人数での集まりよりも、一人で趣味の自転車に乗るのが好きだった。

趣味の自転車を通じて、地域住民との関係性も生まれた。自転車を楽しむ時間や、訪れる場所で出会う地域の人々との交流は、都心出身のゆうたさんにとって、得難い経験になったという。

ただ、就職活動に向けて動き出したタイミングで、これまでの2年間とは違った難しさも感じている。

「インターンや就活とかで東京行くとなると、お金がいくらあっても足りないです。先輩たちはオンラインだったから助かっていたようだけど、今年からはみんな東京に行かなければいけなくなって、その問題が再燃しています」

コロナ以前から、ゆうたさんの大学では東京から企業を招き、企業説明会を開催していた。今年もすでに多くの企業が大学に来て説明会を開催している。

しかし、コロナ禍で普及したオンラインでの面接やインターンが、徐々にリアルに回帰している現状がある。

大学の先輩に就活のノウハウを聞こうにも、今の学生とは状況がまるで異なる。この先、就職活動が本格化していく中で、多くの地方学生がこの壁に悩まされることになるかもしれない。

あきらめ続けた大学生が、これからどう就活を乗り越え、残りの学生生活を送っていくのか?

「コロナ入学世代」の私たちは、悩みながら歩み続けないといけない。

(文・猪野陽菜、編集・三ツ村崇志

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