アマゾンのフルフィルメントセンター内部(フランス)。倉庫作業の効率化・自動化に貢献するロボティクス関連事業にも「リストラ」の波が押し寄せている。
PHILIPPE LOPEZ/AFP via Getty Images
※10月13日に新たな組織統廃合が判明したため、内容を一部更新しました。
アマゾン(Amazon)は2019年に1億ドル超で買収した倉庫ロボティクスのキャンバス(Canvas)について、事業終了を決断した。Insiderの独自取材で判明した。
同社はコスト削減を進める中、キャンバス事業に限らず、ロボティクス関連のプロジェクト全般を再編成していく方針のようだ。
内情に詳しい複数の関係者によると、アマゾンは10月11日にキャンバス事業の終了を社内向けに発表した。
同事業に配属されていた100人強の従業員には、社内の別チームに異動するか、解雇手当を受け取って退職するかの選択肢が付与された。
キャンバスはアマゾンによる買収前から、倉庫作業向けの自動運転カートおよび関連技術でその名が広く知られており、産業用の完全自動運転カートシステムを世界で初めて完成させた企業とされる。
アマゾンはキャンバスの自動運転カートを倉庫に試験導入した上で、結局、テレビやカヤック、ベッドフレームといった準大型の商品を自動的に移動させる自前のシステムに(キャンバスの)ソフトウェア技術を用いるにとどまった。
アマゾンの広報担当はInsiderの取材に対し、同社がロボット倉庫を開発、性能向上を進めるプロセスでキャンバスは大きな役割を担ってきたことを強調し、そこから得られたあらゆる知見は「さらなる発展と拡大に向けて活用される」と説明した。
「当社は、顧客および社内チームにとって正しい選択や判断をできているか逐次確認するため、プロジェクトのレビューを常時繰り返しています。
そのような取り組みの中で、顧客に最大の利益、好影響をもたらす事業に集中するため、ロボティクスに関連するいくつかの初期段階の研究開発プロジェクトを統合する決定を下しました。
その結果として、一部の従業員は社内の他のチームへの移動が決まり、現在当社はそのプロセスをサポートしている最中です」(広報担当からのメール文面)
なお、キャンバスの事業終了に続いて、アマゾンは別の倉庫向けロボティクス事業「ORCA」も廃止することがInsiderの独自取材で判明した。担当部署の従業員数は明らかになっていないものの、キャンバスと同じ文脈での事業整理とみられる。
成長の鈍化と迫り来る景気後退を前に、同社は近ごろ、足元のビジネス環境において優先度の低い事業からの撤退を相次いで決定している。
10月上旬、アマゾンは2019年にアメリカで始動した小型配送ロボット「スカウト(Scout)」の開発提供を終了する判断を下した。このスカウトと今回終了が判明したキャンバスはいずれもロボティクス部門で進められていた事業だった。
また、Insiderが過去記事(日本語版は10月12日公開)で報じたように、破壊的イノベーションの創出を目指す社内研究組織「グランド・チャレンジ(Grand Challenge)」も、事実上の創設者が突如退任するなど縮小の方向にある。
他にも、大企業の顧客を抱えていた法人向け遠隔診療サービス「アマゾン・ケア(Amazon Care)」も、2022年末の事業終了が決まっている。
(翻訳・編集:川村力)