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マイクロソフト、新発表のSurface Pro 9で「ARM系チップ」拡大の狙い…インテルに逆風

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2in1モデルの人気機種の最新版「Surface Pro 9」。

出典:マイクロソフト

マイクロソフトは、日本時間10月13日未明にオンラインイベント「Microsoft Fall 2022 Event」を開催し、自社ブランドPC「Surface」シリーズをはじめとした新製品群を発表した。

その中でもっとも驚きだったのは、同社がメインストリーム商品としており、日本でも多数の利用者がいる「Surface Pro」シリーズだ。従来のインテル製プロセッサーの他に、クアルコムとマイクロソフトの共同開発プロセッサー「SQ3」を使ったモデルを「完全併存」させることになったことだ。

それはどのような意図によるものかを考えてみよう。

Windows 11の新機能に対応するSurfaceシリーズ3製品

今回発表されたSurfaceシリーズは、主に3つある。

1つ目は「Surface Laptop 5」。一般的なクラムシェル型のノートPCであり、13.5インチと15インチの2ラインナップがある。基本的なデザインはこれまでと変わらず、プロセッサーをインテルの「第12世代Core iシリーズ」に変更したのが特徴だ。結果的に性能と消費電力の面で改善が見られている。

10月25日発売、日本での価格は15万1580円から。

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新型の「Surface Laptop 5」。

出典:マイクロソフト

2つ目は「Surface Studio 2+」。主にクリエイター向けのディスプレイ一体型PCで、ディスプレイがスムーズに移動する「ゼロ・グラビティ・ヒンジ」が特徴だ。こちらは2018年以降刷新がなかったのだが、CPU・GPUなどを強化し、Windows 11をプレインストールした「2022年モデル」として再登場している。11月1日発売、価格は71万9180円から。

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デスクトップタイプの新型「Surface Studio 2+」。

出典:マイクロソフト

そして3つ目が「Surface Pro 9」。発売日はこの3つのなかでは最も遅く、11月29日発売予定。

こちらも、従来からサイズやデザインには大きな変更はない。カラーバリエーションが増え、プロセッサーが今年の技術トレンドに合わせて強化された。ただ、後述するとおり、今回の発表の中で最も注目すべき内容だ。

ビビットカラーのケースやキーボードなども追加され、個性を演出する幅も広がった。

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タブレットにもなる2in1モデルの人気機種の最新版「Surface Pro 9」。

出典:マイクロソフト

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出典:マイクロソフト

OSとプロセッサーの刷新によって、どの機種でも、先日行われたWindows 11のアップデート版「Windows 11 2022H2」の機能がより活用できる。機械学習機能を使った、ビデオ会議や音声通話の最適化機能「Windows Studio Effects」も利用可能だ。

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ビデオ会議などのニーズ増加に伴うOS側の強化に、新ハードでは対応している。

出典:マイクロソフト

「Surface Pro 9」にArm系チップモデルが登場した衝撃

Surface Pro 9については、その「プロセッサーの変更」こそが大きな意味を持ってくる。今年からは「Surface Pro 9」という同じ製品の中に、

  • インテルの「第12世代Core iシリーズ」プロセッサーを搭載した仕様(価格16万2580円から)
  • クアルコムと協業で開発したARM系プロセッサー「SQ3」を搭載した仕様(価格21万6480円)

の2つの製品ラインに変わる。

正確には、インテル版が「Surface Pro 9」、SQ3版が「Surface Pro 9 With 5G」という名称。5Gでの通信機能を標準搭載するモデルは後者、という扱いだ。

インテル版もSQ3版も、ボディサイズ・重量にほとんど違いはない。ディスプレイなど基本的なスペックは、どちらも変わらない。

通信機能を除く主な違いは「バッテリー駆動時間」だ。インテル版が「一般的な処理で15.5時間」とされているのに対して、SQ3版は「19時間」。

ちょうど2年前に、MacBook Airがインテル系チップからArm系の独自チップM1に一新され、実働バッテリー駆動時間が一気に長時間になったことを思い起こさせる。

SQ3版で動作するのはARM版Windows 11ということになるが、現在は多くのx86向けアプリ(おおむね、インテル/AMD CPU向けアプリと読み替えていただいて構わない)がそのまま動作するので、一般的な利用ならほとんど問題はない。

Surfaceが「X」から「9」へ。Windows 11で「ARM対応」が加速

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Surface Pro 9の外観。

出典:マイクロソフト

こうした展開には予兆もあった。

2019年10月、マイクロソフトは「次の世代を見据えたSurface Pro」として、「Surface Pro X」というモデルを発表していた。

Surface Pro Xでマイクロソフトは、自社製品としては初めて、PCのプロセッサーにx86系ではなく、クアルコムと共同開発したArm系チップの「SQ1」を採用した。薄型・大画面で4G回線によるネット接続も内蔵し、非常に意欲的な製品に仕上がっていた。

当時のSurface Pro Xには、アプリの互換性に弱点があった。

2019年当時はx86系CPU向けに作られたアプリをArm系Windowsの上で動かす「エミュレーター」が、現代のアプリでは一般的な「64ビット版アプリ」に対応していなかったのだ。

そのため使えるアプリに制限があり、Surface Pro X自体は大きなヒット作にならなかった。

ただ、この互換性の問題は、最新のWindows 11世代を搭載するArm版Pro 9では、おおむね解消されている。

Windows 11搭載のエミュレーターは「64ビットx86アプリ」に対応し、互換性の問題を大きく改善したからだ。ゲームや開発環境の一部など、特殊な部分も多いソフトには動作しないものもあるが、一般的な作業ならほとんど苦労することはないだろう。

SQ3版は「企業向け」狙い、個人ユーザーはインテル版中心

ただし、留意が必要な点もある。

マイクロソフトはSQ3を使った「Surface Pro 9 with 5G」を、主に企業向けと位置付けている(公式サイトからの注文では個人でも購入は可能)。

個人ユーザー向けに出荷するのは、あくまでインテル製プロセッサーを使った「Surface Pro 9」となる。これは、エミュレーションによる分かりにくさに関するリスクなどを避けた結果かとも思う。

マイクロソフトのこの対応は、2020年にアップルが一気に「M1」でArm系チップに舵を切ったのとは対照的とも言える。アップルも、当初はエミュレーションを売りにしてアプリの互換性を担保していたからだ。

また、5G接続は企業ニーズが中心、ということも影響しているだろう。だから、インテルのシェアが一気に下がる……ということは考えづらい。

とはいえマイクロソフトの主力製品に「インテルとArmが並ぶ」のは、なかなかインパクトのある変化だ。性能や価格の評価によっては、今後の「Arm系Windows PC」増加に影響する可能性も高い。

もちろんインテルもこれらの流れに刺激を受けて、現行の「第12世代製品」や、今後出てくる「第13世代製品」で、消費電力・発熱・GPU性能などを向上させている。

プロセッサーをめぐる競争の激化がPCのあり方をまた変え始めているのだ。

絵を描くAI「DALL-E2」がMicrosoft 365に入る

最後に1点、興味深い、アプリの変化の話もある。

マイクロソフトは新Surfaceシリーズと同時に、「Microsoft 365」への新しいアプリケーション追加も発表した。それが「Microsoft Designer」だ。

これは簡単にいえば、パワーポイントの基盤技術を応用し、メッセージカードやSNS・動画向けのタイトル、チラシなどを簡単に作れるアプリだ。基本的な利用は無料。Microsoft 365ユーザーにはプレミアムな機能が用意される予定だという。

この種のアプリとしては、アドビが2021年末、同様の機能を持った「Adobe Express」を市場投入しており、その対抗策にも見える。

ただしDesignerの特徴は、デザイン作業にテンプレートではなく「AI」を使うところだ。

AIには、StableDiffusionやMidjourneyなど、急速に進化する「お絵描きAI」の元祖とも言える、OpenAIの「DALL-E2」(ダリーツー)が使われている。

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「Microsoft Designer」はテンプレートだけでなくAIを使い、キーワードからデザインを作っていく。

出典:マイクロソフト

同時に、「Bing」に「Image Creator」という機能が搭載され、BingでもDALL-E2を使ったAIによる画像生成が使えるようになる。

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「Bing」にDALL-E2を使った「Image Creator」が登場。キーワードから簡単に絵を作れる。

出典:マイクロソフト

予想以上に早く、マス向けの製品にお絵描きAIを活用した製品が登場したことになる。

この技術には色々な課題もある。マイクロソフトは、センシティブな画像の生成や学習バイアスなどの問題に「慎重に機能提供を進める」と説明し、利用者からのフィードバックを求めながら規模を拡大していく、としている。

編集部より:Surface Pro 9のSQ3版の購入方法について追記しました 2022年10月13日 19:00

(文・西田宗千佳

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