米銀大手バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)は、この時期ならではの投資戦略を紹介している。
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どんなに有望だとしても、絶対確実に利益を得られる投資戦略というのは存在しない。
ところが、米銀大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)によれば、S&P500種株価指数が年初から10月まで下落を続けた場合に限ってながら、100%もれなくリターンを生み出してきた実績を持つ戦術がある。
いわゆる「タックス・ロス・ハーベスティング(tax-loss harvesting)」の対象となり得る銘柄を選んで購入する手法がそれだ。
株式市場での損失を軽減するために用いられる投資戦略で、投資家は下落して回復の見込みのない銘柄を売却して損失を確定させ、良好なパフォーマンスを発揮した銘柄を売却して得られる利益と損益通算で相殺し、課税時に低い税率が適用されるようキャピタルゲイン(利益総額)を減らす段取りになっている。
端的に言えば、含み損を抱えた銘柄を手放すことで、自由に使える資金を増やすと同時に税金対策を講じることができるわけだ。
ある株式ポートフォリオを例に取ると、少し前に急成長を遂げたグロース株が2022年になって下落し、一方でエネルギー株は値上がりして含み益がある場合、前者のグロース株を売却して損失を確定させ(損出し)、エネルギー株の売却益と通算して相殺することで、キャピタルゲイン税を年間最大3000ドル節税できる。
「負け組」銘柄が「勝ち組」戦略に化ける
バンカメの米国株・クオンツ戦略責任者を務めるサビータ・スブラマニアンによれば、2022年はS&P500種構成銘柄の3分の2以上が年初来10%以上の大幅下落を記録しており、その分だけ損出し売却の候補銘柄が多く、タックス・ロス・ハーベスティングは例年以上に活況を呈することになりそうだ。
10月末の米ミューチュアルファンド決算に向けて、「負け組」銘柄のパフォーマンスはさらに悪化する可能性がある。また、個人投資家の損出し期限は(確定申告の計算対象期間が終わる)12月31日で、そちらの売却の影響も想定される。
しかし、スブラマニアンはむしろそこに投資機会を見出す。
10月末までの損出し売却、あるいは12月末まで損出しのために売られる銘柄が増える一方で、11月から1月にかけては逆にそれらの銘柄に資金が流入する傾向がある。
言い換えれば、損失を確定させる売却の対象となった銘柄は、その後買われて大きく反発する可能性が高いということだ。
1986年以来、1年間のうち10月までに10%以上の下落を記録した銘柄は、その後11月から1月までの3カ月間、69%の確率でS&P500種指数のパフォーマンスを上回り、アルファ(超過収益率)は平均1.8%ポイントとなっている。
同条件におけるS&P500種指数の上昇率がそもそも平均4.5%なので、注目すべきパフォーマンスと言っていいだろう。
また、スブラマニアンによれば、S&P500種指数のリターンが10月までマイナスの年に限り、タックス・ロス・ハーベスティングの損出し対象になった銘柄は、11月から1月にかけて平均8.2%ポイントのアウトパフォームを100%確実に達成してきた実績もあるという。
損出し売却後に株価上昇する推奨28銘柄
バンカメは最近、11月から1月にかけて反発する可能性があり、なおかつ同行が投資判断を「買い」とするタックス・ロス・ハーベスティングの損出し候補159銘柄を特定している。
いずれも10月5日時点で年初来10%超の株価下落に至った「負け組」銘柄ながら、「タックスロスハーベスティングによって一時的にさらなる下落を経験しつつ、続く数カ月間はファンダメンタルズも堅調で(S&P500種指数に対して)アウトパフォームを期待できる」(スブラマニアン)という。
Insiderはバンカメの「買い」159銘柄をさらに28銘柄のリストに絞り込んだ。いずれも10月5日時点で年初来40%超の下落という苦境にある銘柄ばかりだ。時価総額、セクター、10月5日時点での年初来リターン下落幅も付した。
【銘柄1】マッチ・グループ(Match Group)
[時価総額]136億ドル[セクター]通信サービス
[年初来リターン]-61.4%
【銘柄2】シーザーズ・エンターテインメント(Caesars Entertainment)
[時価総額]77億ドル[セクター]一般消費財
[年初来リターン]-58.8%
【銘柄3】メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)
[時価総額]3597億ドル[セクター]通信サービス
[年初来リターン]-58.7%
【銘柄4】エヌビディア(Nvidia)
[時価総額]2881億ドル[セクター]情報テクノロジー
[年初来リターン]-55.1%
【銘柄5】ディッシュ・ネットワーク(Dish Network)
[時価総額]75億ドル[セクター]通信サービス
[年初来リターン]-53.6%
【銘柄6】アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(Advanced Micro Devices)
[時価総額]924億ドル[セクター]情報テクノロジー
[年初来リターン]-52.8%
【銘柄7】ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(Warner Bros. Discovery)
[時価総額]291億ドル[セクター]通信サービス
[年初来リターン]-52.1%
【銘柄8】シグネチャー・バンク(Signature Bank)
[時価総額]96億ドル[セクター]金融
[年初来リターン]-50.3%
【銘柄9】ペイパル(PayPal)
[時価総額]982億ドル[セクター]情報テクノロジー
[年初来リターン]-50.2%
【銘柄10】ジェネラック・ホールディングス(Generac Holdings)
[時価総額]100億ドル[セクター]資本財
[年初来リターン]-49.2%
【銘柄11】バス・アンド・ボディワークス(Bath&Body Works)
[時価総額]77億ドル[セクター]一般消費財
[年初来リターン]-49.2%
【銘柄12】シーゲイト・テクノロジー(Seagate Technology)
[時価総額]108億ドル[セクター]情報テクノロジー
[年初来リターン]-49.2%
【銘柄13】アプティブ(Aptiv)
[時価総額]224億ドル[セクター]一般消費財
[年初来リターン]-47.2%
【銘柄14】ボール・コーポレーション(Ball Corporation)
[時価総額]155億ドル[セクター]素材
[年初来リターン]-47.1%
【銘柄15】SVBファイナンシャル・グループ(SVB Financial)
[時価総額]201億ドル[セクター]金融
[年初来リターン]-46.3%
【銘柄16】エクスペディア・グループ(Expedia Group)
[時価総額]147億ドル[セクター]一般消費財
[年初来リターン]-45.2%
【銘柄17】ウェスト・ファーマシューティカル・サービシズ(West Pharmaceutical Services)
[時価総額]184億ドル[セクター]一般消費財
[年初来リターン]-44.6%
【銘柄18】EPAMシステムズ(EPAM Systems)
[時価総額]189億ドル[セクター]情報テクノロジー
[年初来リターン]-44.5%
【銘柄19】ラムリサーチ(Lam Research)
[時価総額]477億ドル[セクター]情報テクノロジー
[年初来リターン]-44.4%
【銘柄20】デジタル・リアルティ・トラスト(Digital Realty Trust)
[時価総額]265億ドル[セクター]不動産
[年初来リターン]-44.0%
【銘柄21】インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)
[時価総額]667億ドル[セクター]ヘルスケア
[年初来リターン]-44.0%
【銘柄22】アプライド マテリアルズ(Applied Materials)
[時価総額]674億ドル[セクター]情報テクノロジー
[年初来リターン]-43.3%
【銘柄23】ウェスタンデジタル(Western Digital)
[時価総額]110億ドル[セクター]情報テクノロジー
[年初来リターン]-43.0%
【銘柄24】チャールズリバー・ラボラトリーズ・インターナショナル(Charles River Laboratories International)
[時価総額]103億ドル[セクター]ヘルスケア
[年初来リターン]-42.8%
【銘柄25】アンシス(Ansys)
[時価総額]183億ドル[セクター]情報テクノロジー
[年初来リターン]-41.7%
【銘柄26】ドミノ・ピザ(Domino's Pizza)
[時価総額]111億ドル[セクター]一般消費財
[年初来リターン]-40.6%
【銘柄27】ゼネラル・モーターズ(General Motors)
[時価総額]464億ドル[セクター]一般消費財
[年初来リターン]-40.6%
【銘柄28】サイモン・プロパティー・グループ(Simon Property Group)
[時価総額]305億ドル[セクター]不動産
[年初来リターン]-40.1%
(翻訳・編集:川村力)