メタの開発者会議Connect 2022で、未発表のフォトリアリスティック・アバターのデモを行うマーク・ザッカーバーグCEO。
Facebook/Meta
メタ(旧Facebook)のCEOマーク・ザッカーバーグは、メタバースという高価な賭けを成功させる必要に迫られている。その成果を出すため、現在ライバル企業を説得し、提携を進めているところだ。
メタは、2022年10月11日に開かれたMeta Connectの会議でもメタバースに焦点を絞っていた。毎年開催しているこの開発者会議では、より多くの人にメタバースを利用してもらうことを目指し、テック業界の大手ライバル企業とのパートナーシップを締結したと発表した。
発表されたパートナーは、ズーム(Zoom)、アクセンチュア、そして、注目すべきは、マイクロソフトとその子会社のゲーム会社であるエックス・ボックス(XBox)だ。
オープンで相互運用可能なメタバース目指す
この会議で、メタは、長年のライバル会社であるグーグルのアプリが人気を博していることにも感謝の気持ちを述べている。メタの最高技術責任者(CTO)で、リアリティ・ラボ(Reality Labs)の責任者であるアンドリュー・ボスワース(Andrew Bosworth)は、同社のバーチャルリアリティヘッドセットQuest 2のアプリストアで「最も人気のあるアプリの1つ」がYouTube VRであると語った。
さらにヘッドセット「Quest」のユーザーに対して、「YouTubeのチームは、よりソーシャルな体験ができるようにがんばっています」と称賛したのだ。
メタとグーグルは長年にわたり、広告、ビデオ、ストリーミングなど消費者向けインターネットのさまざまな分野で真っ向から競合してきた。
しかし、2022年のConnect会議では、ザッカーバーグをはじめとするメタの幹部が、今までのように自社アプリや製品だけで運営する仮想世界ではなく、「オープン」で「相互運用可能」かつ「没入型」の仮想世界を構築したいと発言した。
「オープンで相互運用可能なメタバースは、誰にとってもより良いものになると確信しています。当社の役割は、このオープンなエコシステムの構築を支援するだけでなく、このインターネット時代で勝ち残ることだと考えています」(ザッカーバーグ)
また、メタは、マイクロソフトのMicrosoft365のツールで、Quest 2と、より高価なQuest Proで利用できるようにするための大規模なパートナーシップを発表している。これは、人々がメタバースを仕事で使えるものにしようというフェイスブックの試みにとってはうってつけの提携である。
メタは、Microsoft Teamsがどのような見え方になるのかについても、デモを発表した。
Facebook/Meta
今回のパートナーシップにより、マイクロソフトのワークツールのバーチャルグループ・ミーティング、カレンダー、Xbox CloudゲームがQuestヘッドセットで利用できるようになった。
この会議で、マイクロソフトの最高経営責任者、サティア・ナデラ(Satya Nadella)は、「これから何が起こるか楽しみだ」と語っている。なお、マイクロソフトは、メタバース部門の混乱の中、2022年初めにヘッドセット・プロジェクトを閉鎖している。
メタは、マイクロソフトのほかズームやアクセンチュアとも提携を行った。新たな提携により、メタのアクティブなメタバース・プラットフォームの1つであるHorizon Workroomsは、2023年早々にZoomにアクセスできるようになるという。
一方、アクセンチュアもメタに時間給労働者を提供することで大規模な契約を締結している。アクセンチュアは、今後も一部の研修コースでQuestのヘッドセットを使用する予定だという。
とはいえ、メタがさらにメタバースを広く普及させるためには、まだまだ長い道のりが必要なようだ。
同社のリアリティ・ラボは毎年数千億円規模の損失を出しているし、社員は同社のメタバースプロジェクト重視の方向性に戸惑っている。
また、メタの株価は2022年10月11日にはさらに4%下落し、過去1年間の最安値圏で推移したことに、ウォール街も焦りを感じているようだ。一方、主力のソーシャルアプリは収益の伸びとともに成長が鈍化。将来レイオフが行われる可能性も視野に入り始めている。
(編集・大門小百合)