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【国際防災の日】早期警報システムの有無で死亡率が約8倍に。国連「防災先進国」日本のリーダーシップに期待

undrr  International Day for Disaster Risk Reduction Pakistan floods

国土の3分の1が水没したとされるパキスタンの大洪水。雨は上がったものの、マラリアが蔓延するといった二次被害も深刻化している。

REUTERS/Akhtar Soomro

10月13日は国連が定めた国際デー「国際防災の日」だ。世界各地では防災のための啓発活動が展開されている。

国連防災機関(UNDRR)は世界気象機関(WMO)と合同で報告書を発表。災害に対する早期警報システムの適用範囲が限定的であったり中程度であったりする国は、大幅に適用を拡大した国に比べて、災害死亡率が約8倍であると指摘した。

日本では、台風接近情報や地震速報、津波警戒情報、自治体の避難情報などさまざまな早期警報システムが身近な存在として定着している。しかし、世界では全人口の3分の1にそうしたシステムが普及しておらず、人々の命が危険にさらされたままの状態にあるという。

UNDRRトップの水鳥真美・国連事務総長特別代表(防災担当)は、国際防災の日に先立つ10月11日の記者ブリーフィングで、

「早期警報システムの有益性が証明されているにも関わらず、複数の危険(マルチハザード)に対処できる早期警報システムが整備されている国は95カ国と、世界の半数に過ぎない。この数字は後発開発途上国ではさらにその半分以下、さらに小島嶼国では3分の1になっている」(水鳥氏)

と語り、早期警報システムの普及に向け、日本をはじめとする国々や国際機関による一層の協力が必要だと強調した。

早期警報システムが死亡率を減らす

熱波や干ばつ、暴風雨、洪水など、異常気象による災害は年々深刻化し、大きな被害をもたらしている。

最近の例では、パキスタンでこの夏に発生した大洪水で国土の3分の1が水没したと同国政府が発表し、世界中を震撼させた。

水鳥氏はこのパキスタン洪水について「10月上旬時点で死者数は1700人近くと、すでにパキスタンでは観測史上最悪の気候災害になった」と述べつつ、

「それでも、パキスタン当局が早期に警報システムを発していなければ、亡くなった方の数はもっと大きくなっていた可能性が高い」(水鳥氏)

と、早期警報システムの重要性を指摘した。

UNDRRは2020年、近年の自然災害の9割は気候変動に関連しており、また災害数、被災者数、経済的損失がいずれも増加しているとの報告書をまとめている(【図1】)。

水鳥氏は、災害数の増加にも関わらず、唯一ほぼ横ばいなのが死亡者数だと指摘。その背景には、「早期警報システム制度構築の進捗と早期行動の必要性に対する教育の普及がある」(水鳥氏)との見解を示した。

undrr  International Day for Disaster Risk Reduction

【図1】災害による被害(1980〜1999年と2000〜2019年の比較)。自然災害の9割は気候変動に関連するものだとして、国連は早期警報システムの普及がと早期行動の重要性を訴えている。

提供:国連防災機関(UNDRR)

undrr  International Day for Disaster Risk Reduction

【図2】2020年の災害による年間死亡者数(1万5080人)は、2000〜2019年の年間平均値(6万1709人)に比べ大きく減少。UNDRRは早期警報システムの普及と進歩により、死亡者数は減少傾向にあると指摘している。

提供:国連防災機関(UNDRR)

地震・津波だけでなく気候変動災害も

国連は2015年3月、仙台市で開催した国連防災世界会議で「仙台防災枠組2015-2030」を採択。その具体的な目標の1つに、「2030年までに、マルチハザードに対応した早期警報システムと災害リスク情報・評価の入手可能性とアクセスの大幅な向上」を掲げた。

それから7年目を迎えた2022年3月、国連のグテーレス事務総長は「5年以内に世界中の人々に早期警報システムへのアクセスを可能にする」と、より踏み込んだ目標を発表した。

過去3回の国連防災世界会議をすべて開催してきた日本について、水鳥氏は「防災を国際的アジェンダに育て上げ、UNDRRを育ててきたのは日本」と述べ、今後の日本の果たすべき役割に期待を表明した。

「防災における日本の知名度は世界的に確立し、早期警報システムについても日本は世界の模範になっている。今後の日本にさらに期待したいのは、地震・津波だけでなく、激甚化している気候変動関連の災害についても日本がリーダーシップをとっていってほしいということだ」(水鳥氏)

(文・湯田陽子


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