カナダの金融最大手カナダロイヤル銀行(RBC)は2023年にかけて株式市場がポジティブに展開すると予測する。
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10月最初の2日(3・4日)は過去2年間で最高のパフォーマンスを記録し、株価は今度こそ息の長い回復基調に転じるかと思いきや、投資家の期待は最終的に裏切られた。
いまや株式市場は恐怖という名の雲にすっぽりと覆われている。
ただ、相場回復の種は誰もがあきらめたその時に蒔(ま)かれることもしばしばだ。
カナダロイヤル銀行(RBC)米国株担当トップストラテジストのロリ・カルバジーナは最近の顧客向けメールで、先を競って株式に資金を投じるべきとまでは言わないものの、これから数週間以内に相場は底入れし、続く2023年にはより力強い回復するとの見方を示している。
激動の1年もすでに第4四半期(10〜12月)に突入し、2022年は米国株にとって過去20年で最悪の年ということになりそうだ。
その展開は、2002年もしくは(世界金融危機の起きた)2008年に似ているというのがカルバジーナの見立てだ。
「過去2つの危機に際して、S&P500種指数は最初の底打ちを迎えて回復に転じ、その後再度急落してまた反落、完全な復元に至る前にまた下落して実質的には三番底を迎えました。パンデミック後の正常化プロセスも同じような展開をたどる気がしてきています」(カルバジーナ)
2022年はこれから数年にわたって続く景気サイクルの下落局面の始まりなのではないかと懸念するバイヤー(機関投資家や運用会社)に対して、カルバジーナはそうしたネガティブな見方を否定し、2022年は長引く低迷期の終わり(1941年あるいは2002年を想起してほしい)と位置づけるのがより適切と指摘する。
「米国株には強く反発する傾向があります。その一例が2002年で、S&P500種指数は23%の下落を記録した後、翌2003年に26%という大幅な反発を見せました。1974年も同様で、30%の下落後、翌1975年に32%の上昇を記録しているのです」(カルバジーナ)
投資家が決定的に弱気になった後に大きな反発がやって来る流れは、株式の世界ではよく知られたセオリーだ。
米個人投資家協会(AAII)が毎週発表している調査は、投資家センチメントを示す指標としてよく知られるが、それを見ても、足元で見られる投資家の警戒感は、世界金融危機の発生前後の2007〜08年とほぼ同じような水準にある。
当時は、金融機関も深く関与したサブプライムローン問題から住宅バブルが崩壊し、リーマン・ブラザーズの破たんを機に株式市場が急落、過去80年間で最悪の金融危機が世界に吹き荒れる展開となった。
結果として、S&P500種指数は1年半でほぼ半分まで落ち込み、下落幅を復元するのに4年かかった。アメリカの雇用の復元にはそれからさらに数年の月日が必要だった。
アメリカがこの後で深刻な景気後退に直面するとしても、当時ほどのダメージがあるとは到底考えられない。だからこそ、カルバジーナは足元で疑心暗鬼になる投資家の弱気姿勢に必然性はないと指摘するわけだ。
前出の週間調査によると、弱気の投資家の割合は強気の投資家のそれを10%以上上回って推移している。カルバジーナによれば、それほどの警戒感が指標から確認される場合の1年後予想リターンは平均15.5%に達する。
また、足元では企業の収益見通しが低下しているものの、今後より合理的な見通しに修正され、最終的には株価にとってポジティブな展開が想定されるとカルバジーナは指摘する。
仮にこれから数週間以内に見通しの十分な上方修正が行われれば、年末にも一定の反発があるかもしれない。
景気後退と中間選挙
株価回復のカギを握るのは、インフレがこれからどう推移するかだ。
最近の企業の決算説明会では、インフレやサプライチェーン問題が「ピークアウトしたように見える」との意見が相次いでおり、そうした議論からも2023年にはインフレが沈静化するとカルバジーナは分析する。
2022年、残る最大の関心事は、懸念されている景気後退入りが本当にあるのか、あるとすればそれはどの程度深刻な数字となって表れるかだろう。
だが、実際のところ、株式市場の低迷と景気後退が同時並行して起こるとは限らない。投資家は一般的に、何が起こるかを予想して事前にその発生に備え、事態が好転する前にはすでに楽観的になっているもので、そこにはたいていズレが生じるものだ。
なお、カルバジーナによれば、過去に国内総生産(GDP)の前年比伸び率がマイナスになった年のS&P500種指数のリターンは平均13.6%となっている。
そして今年は中間選挙の年でもある。
カルバジーナによれば、2022年と同じように中間選挙が実施された年のS&P500種指数は、安値との比較で平均7%上昇しているという。
中間選挙の結果、ねじれ状態が生じた場合、すなわちホワイトハウス(政府)は民主党、連邦議会は共和党優勢となった場合、過去のデータではS&P500種指数のリターンが平均13.5%となっており、株式市場にとっては好都合と言える。
こうした諸要素を念頭に置いて、カルバジーナはS&P500種指数の年末目標を「暫定的に」貯金安値を記録した10月12日の終値を約14%上回る「4100」とする。
直近わずか6週間の損失を帳消しにするだけでも年末までかかるというわけだ。
(翻訳・編集:川村力)