2つの恒星から成るウォルフ・ライエ140は、8年ごとにダストでできたリングを形成する。それが幾重にも重なった様子が、NASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって捉えられた。
NASA, ESA, CSA, STScI, JPL-Caltech
- ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、宇宙に浮かぶ「指紋」のような珍しい光景を捉えた。
- この「指紋」は、少なくとも17個の同心円状のダストリングで構成されている。
- ウォルフ・ライエ140の2つの恒星が8年に1度すれ違うときにこのダストリングが形成される。
アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は、これまで観測されたことのない不思議な光景を捉えた。宇宙に浮かぶ指紋のような模様だ。
NASAが2022年10月12日に公開した画像には、同心円状に広がるリングのようなものが写し出されており、その中心には2つの巨大な恒星がある。1つは太陽の10倍の大きさのウォルフ・ライエ星で、もう1つは太陽の30倍の大きさの巨大な恒星だ。この連星系はまとめて「ウォルフ・ライエ140」と呼ばれており、地球から約5000光年の距離にある。
NASAの説明によると、この2つの恒星が8年ごとに軌道上で接近するたびに、恒星からのガスの流れが圧縮されてダストリングが形成される。
NASAは、2つの恒星間の相互作用とそれらが接近したポイントから発せられる波状のリングを「天体のダンス」と表現している。また、年輪にも例えており、それぞれのリングが8年のサイクルを示しているという。
「この星系で1世紀以上にわたってダストリングが形成されてきた様子を見ることができる」と、ウォルフ・ライエ140に関する研究論文の筆頭著者である天文学者、ライアン・ラウ(Ryan Lau)は述べている。
「またこの画像は、JWSTがいかに高感度であるかということも示している。これまで地上の望遠鏡からは2つのダストリングしか見えなかったが、今では少なくとも17個のダストリングが見えるようになった」
シドニー大学の天文学教授で、この論文の共同執筆者であるピーター・タシル(Peter Tuthill)がガーディアンに語ったところによると、この画像は、ウォルフ・ライエ140が「時計のように」8年周期でダストリングを「吐き出す」様子を示しているという。
「8年後、この連星が軌道上で再び接近すると、同じようにリングが現れ、これまでできたリングの内側で広がっていくだろう。ちょうど入れ子になったマトリョーシカ人形のように」
JWSTは、宇宙で最も古い135億年前の銀河など、人類がこれまで見たことのない宇宙の姿を次々と撮影して地球に送信している。JWSTは現在、地球から約160万キロメートル離れたラグランジュ点(地球と太陽からの重力や遠心力が均衡する点)の1つであるL2にあり、はるかかなたにある銀河の光を捉えようとしている。
2022年9月には、地球から約1350光年の距離にある星形成領域である「オリオン大星雲」の姿を撮影した。赤外線カメラを利用して、星が生まれる雲や繭のようなガスの塊を捉えることができたのだ。これはハッブル望遠鏡ではできなかったことだ。
また同じく9月に海王星の環の姿も鮮明に捉えた。それは1989年のボイジャー2号の接近以来、人類が目にした海王星の最高の眺めだった。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)