アマゾンCEOのアンディ・ジャシー。
Richard Brian/Reuters
アマゾンの経営陣は10月上旬に開催された全社会議で、「さらに倹約を徹底」するよう従業員に促した。Insiderはこの会議で使われたスライドや要約の内容を確認した。
スライドでは、従業員に対して「より少ないリソースで、より多くの結果を出す」よう指示している。これは、人員を含めたコスト削減や在庫の削減を意味する。
スライドには「制約があるからこそ、創意工夫、自立、イノベーションが育つ」「人員や予算、固定費を増やすことに意味はない」などと書かれていた。
それ以外にも、スライドには次のような戦略が示されており、CEOのアンディ・ジャシー(Andy Jassy)とCFOのブライアン・オルサフスキー(Brian Olsavsky)が、その意図を説明した。
- キャッシュバランス(現金収支)と流動性の維持
- 需要に応じた在庫の調整
- 顧客に結びつかない裁量的なコストの削減
- ビジネスニーズと優先順位に基づいた雇用の調整
- 新規施策よりも顧客体験を優先
- さらなる倹約を徹底
会議に出席した社員によると、オルサフスキーCFOは、2020年から2021年にかけて同社の事業運営能力はほぼ倍増しており、今後はより倹約してコストを管理する必要があると述べたという。
この発言は、アマゾンという巨大小売企業が成長の鈍化と経済情勢の悪化に直面し、支出の抑制に舵を切ったことを意味する。アマゾンは他のテック企業と比べると節約志向として知られるが、最近の景気減速でさらにコスト削減圧力が高まっている。
この会議で、景気減速がアマゾンの将来の投資に与える影響について質問されたジャシーも、同様の趣旨の発言をしている。
Insiderが入手した会議の録音によると、アマゾンは長期的な施策への投資は続けるものの、支出についてはより慎重になるだろうとジャシーは述べている。
「それはみなさんにとっても気になる問題ですよね。もちろん何が起こるかは誰にも分かりませんが、アメリカ経済が今後、厳しくなることを示す兆候がいくつもあります。
この状況がいつまで続くかは分かりませんが、いくつか検討中の事柄のうち、2023年はさらなるスリム化を図りながら事業を拡大していく、ということは決めました」(ジャシー)
ジャシーは、アレクサ(Alexa)やネットスーパーなど、いくつかの長期的な取り組みについては引き続き投資するものの、「戦略的な忍耐と戦術的な性急さ」の適切なバランスを見つける必要があると述べた。
「みなさんよく忘れがちなんですが、健全で長期志向で持続可能なビジネスが毎年急成長するとは限らないんです」(ジャシー)
大企業病や研究機関の縮小も
ここ数カ月、アマゾンは遠隔医療サービス「アマゾン・ケア(Amazon Care)」など注目のプロジェクトを次々と中止し、自動運転ロボット「スカウト(Scout)」のテストも中止した。
Insiderが以前報じたように、アマゾンはロボット工学のチームや破壊的イノベーションの創出に取り組む研究機関「グランド・チャレンジ(Grand Challenge)」の規模を大幅に縮小したほか、倉庫や配送パートナーの拡大計画も縮小している。
アマゾンを創業したジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)はこれまで「Day1」の精神を持ち続けることの重要性を繰り返し口にしてきた。創業からどんなに時間が経過しても、常に創業初日のスタートアップのように行動すべきだという意味だ。
だが全社会議に参加したアマゾンの社員はInsiderに対し、「これじゃあ『Day2』じゃないですか」と批判する。
アマゾンが「Day2」に突入することへの懸念とは、勢いが失われ、マネジメントの層が無駄に厚くなり、「お役所仕事」が増えていくことだ。Insiderが報じてきたように、同社社員の間では以前からこうした懸念が高まっている。
[原文:Leaked Amazon slides instruct employees to 'double down on frugality' in all-hands meeting]
(編集:野田翔)