リア・ウィリアムズは、ひょんなことからピッチデックデザイナーになった。
リア・ウィリアムズ
Leah Williams
かつて女優を目指していたが断念、PRイベント会社で経験を積んだ。その後、プレゼンテーションの仕事を請け負う人材紹介会社クリエイティブ・サークルに問い合わせたことがきっかけで世界的な広告代理店マッキャンでの仕事を請け負うようになり、オグルヴィやディスカバリーチャンネルなど多くの著名クライアントと仕事をする足がかりを得た。
ウィリアムズは現在、資金調達、基調講演、取締役会、新規事業の提案、M&Aなど、さまざまな目的のピッチデックのプロジェクトを同時に3つ掛け持ちしながら、1時間150〜200ドルの報酬を得ている。
「(ピッチデックを)専門的に作っている人がいることすら知りませんでした。学校ではそんなこと教わりませんからね」(ウィリアムズ)
ウィリアムズによれば、ピッチデックのデザインには、クリエイティブなデザインとビジネスセンスのバランスが必要だという。
「これはビジネスを進める際のスイートスポットのようなものです。私の場合は、ピッチデックのライティングもデザインもやります。ワンストップショップみたいなものですね」(ウィリアムズ)
そんなウィリアムズに、企業が自社のピッチデックを最大限に活用するための5つの戦略を教えてもらった。
1. 個人的なストーリーを盛り込む
個人的なストーリーをピッチデックに盛り込むことで、あなたがどれだけその会社を大切に思っているかを投資家に示すことができる。素晴らしいビジネスアイデアがひらめいたときには無一文だった、というように。
「すごく感動的なストーリーがあるのかもしれないし、何かをやり遂げることにかけては誰にも負けない自信があるかもしれない。あるいは、あなたの事業はとても人間的な側面が元になって生まれたものなのかも。そういう要素を盛り込まず、すぐにお金の話をしてしまう人が多いんです。
それと投資家としては、創業者自身が自分の会社に自分の資金を投じているかも知りたいポイントです」(ウィリアムズ)
2. ピッチデックのデザインは「引き算」で
ピッチデックは、その場にいる人たちと歩調を合わせて歩く際の大切な補助線だと考えること。
ピッチデックのスライドは何枚が適切か、唯一絶対の正解はない。創業年数、投資家が見たい財務情報、さらにはプロダクトやサービスをどれだけ詳しく説明するかなど、さまざまな要素によってピッチデックの長さは変わってくる。
しかし、ことピッチデックに関しては「捨てられない症候群」(ウィリアムズ)にかかってしまう起業家が多い。
「起業家は子どものようなところがあるんです。何かに心底興奮して、自分が持てるすべてのものを相手にぶつけてくるんです」(ウィリアムズ)
ウィリアムズは第三者の立場なので、感情に流されることなく、必要に応じてコンテンツやグラフィックをカットすることもしやすい。デザイン面では、テクスチャーやグラフィックを使いすぎないこともポイントだ。
「あらゆるものを断捨離していくんです。編集スキルも活用します。細かく書かれた箇条書きも、全部は必要ないので大半はカットしてしまいます」(ウィリアムズ)
3. 「お願い」から入らない
いくら資金調達したいのか、という点は重要ではあるが、その「お願い」のスライドを先頭に持ってこないこと。ビジョンを詳しく説明し、お金の話はピッチデックの最後に置くのがウィリアムズのお勧めだ。
「あなたがいくら必要なのかをVCに知ってもらう前に、まずはビジョンを理解してもらい、心からワクワクしてもらいましょう。プレゼン中、ずっと$マークが頭に浮かんでしまっては困りますから」
4. フォントは本当に重要
フォントの選び方ひとつで、ピッチデックが格調高くもなれば目障りなものにもなる。
「美しいフォントを適切に使えれば、ピッチデックのデザインの半分は終わったようなものです」(ウィリアムズ)
ウィリアムズのお気に入りフォントは「Futura PT」や「Archer」。逆に、よく使われる「Calibri」や「Arial」は使わない方がいいという。
「システムフォントは安っぽく見えてしまうんです。良いフォントを使うと高級感が出せますよ」
ピッチデックのフォントが、ウェブサイトのブランディングとマッチしていることもポイントだ。
5. 高解像度の写真は、あなたが思っているより用意するのは簡単だ。
お金を払わなくても、素晴らしい高解像度の写真を利用できる。ウィリアムズのおすすめは、写真家の高解像度画像を300万点以上無料で提供しているサイト「Unsplash」だ。
メンバー紹介のスライドに自分たちの写真を載せる場合は、iPhoneのポートレートモードを使い、背景は無地にして照明にこだわり、笑顔を心がけるとよい。
「笑顔のない写真を何回か見たことがありますが、すごく意地悪そうでしたよ。おどける必要はありませんが、親しみの持てる印象を与えたいものです。こんな人と一緒に仕事できそうにないなと思われないようにしたいですね」