フェンスの奥がウエストレイク埋立地。2012年3月13日、ミズーリ州ブリッジトンで。
Laurie Skrivan/St. Louis Post-Dispatch/Tribune News Service/Getty Images
- ミズーリ州にあるヤナ小学校で高レベルの放射能汚染が見つかったという報告書が発表された。
- この学校は、1940年代から50年代にかけて汚染された川の近くにある。
- 報告書には、校舎の内外で放射能汚染が確認されたことが記されている。
第二次世界大戦中に核兵器を製造していた工場の近くにある、ミズーリ州セントルイス郊外のヤナ小学校で、放射能汚染が確認されたことが、新たな報告書で明らかになった。
この報告書は、環境調査企業のボストン・ケミカル・データ(Boston Chemical Data Corp.)が2022年10月に作成した。同年8月に、ミズーリ州フローリッサントにあるヤナ小学校から土壌、ほこり、植物のサンプルが採取されて検査が行われていた。サンプルは校舎周辺の野原や運動場のほか、図書館、キッチン、教室などの屋内でも採取された。
息子がこの学校に通うPTA会長のアシュリー・バーノー(Ashley Bernaugh)さんはこの報告書を読み「胸が張り裂けそうだった」とSt. Louis Post-Dispatchに語っている。
「陳腐に聞こえるかもしれないが、まさに息ができなくなるようだった」
この調査に誰が資金を提供したのかについては不明だが、2018年にアメリカ陸軍工兵司令部(USACE)が開始した調査に続いて、学校の汚染状況について懸念を抱かせるものになった。この先行調査の結果は、非営利団体「ミズーリ環境連合」が、2022年初めに情報公開法(FOIA)に基づいて入手した。
初期の核兵器開発跡地を浄化する任務を負うUSACEが行ったこの先行調査では、学校の汚染度は最新調査よりもかなり低いものだった。しかし先行調査では学校から90メートル以内や建物内部からのサンプルは採取されていない。
一方、ボストン・ケミカルはいくつかの種類の放射能汚染が、予測値や許容量をはるかに超えるレベルで存在していることを明らかにした。
放射性同位元素の鉛210は、幼稚園の遊び場で予測値の22倍と「スーパーファンド法」(土壌汚染対策法)が定めた許容量の何倍ものレベルで存在していたのだ。
特に注目すべきなのは、学校内で検出された放射性の粒子状物質だ。これらを摂取あるいは吸入すると、「アルファ線」に長期間さらされる可能性があるという。これは他の形態の被曝よりも「特に生物学的に有害」だと報告書に記されている。
ヤナ小学校はコールドウォーター川沿いの氾濫原に位置している。この川は、第二次世界大戦中の核兵器製造による放射性廃棄物で汚染されていた。汚染源は、1940年代から50年代にかけての「マンハッタン計画」で原子爆弾用のウランを生産していたマリンクロット・ケミカル・ワークス(Mallinckrodt Chemical Works)まで遡ることができる。
2018年、アメリカ有害物質疾病登録局(ATSDR:Agency for Toxic Substances and Disease Registry)が行ったアセスメントによると、クリアウォーター川付近で長期にわたって放射性廃棄物に曝されていた人は、ある種のガンにかかるリスクが高いと判定された。
ボストン・ケミカルの報告書では、校舎の内外から発見された放射能汚染が許容範囲内に収まるようにするには「確実な改善プログラム」が必要であるとしている。しかし、コールドウォーター川自体が浄化されない限り、洪水で校庭が再び汚染される可能性があるとも記している。
ヘーゼルウッド学区理事会のベッツィ・レイチェル(Betsey Rachel)会長は、次の会議でこの報告書について議論すると、セントルイス・ポスト・ディスパッチ紙に語っている。
InsiderはUSACEにコメントを要請したが、回答は得られていない。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)