多様化するプラットフォームがクリエイターエコノミーの拡大にも影響している。レポートでは、クリエイターエコノミーを支える代表的なサービスのカオスマップも作っている。
出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング
動画やイラスト、テキストなどコンテンツを発表するプラットフォームが多様化するなかで、その中で稼いでいる人たちの経済「クリエイターエコノミー」はどれほどの規模になっているのか? このほど、その市場規模が1.36兆円(2021年)にのぼるとの試算が公表された。レポートは、一般社団法人クリエイターエコノミー協会と、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが共同で調査したものだ。
調査対象者:サンプル数:クリエイターとして活動している方1557名
調査実施期間: 2022年7月4日~8月16日
出所:一般社団法人クリエイターエコノミー協会、三菱UFJリサーチ&コンサルティング「国内クリエイターエコノミーに関する調査」
日本の市場規模は1.36兆円、専業の半数以上が20万円以上の収入
レポートによると、国内クリエイターエコノミーの市場規模は1兆3574億円。
2021年に実施された海外の調査では、世界のクリエイターエコノミーの市場規模は約1042億ドル(1ドル=145円とすると15.1兆円)と推計され、国内クリエイターエコノミーがその約1割に相当する計算だ。
また、専業クリエイターの半数近くが、月20万円以上の収入を得ていることも、調査でわかった。なかでも、モノ・グッズの販売や動画投稿に関連した広告、スキルシェアの寄与が大きく、それぞれ 2000〜3000 億円程度を占める。
市場規模がここまで拡大した理由は4つあるという。
世界市場は15.1兆円、日本市場は1.3兆円にのぼる
出所:一般社団法人クリエイターエコノミー協会
専業クリエイターの半数近く(47%)が月20万円以上の収入を得ている
出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング
多様なプラットフォーム・収益化手法の登場
レポートによれば、1つ目の要因として、多様なプラットフォームや収益化手法の登場により、クリエイター個々のスキルや志向に 沿った活動が進めやすくなったことが挙げられる。
従来のクリエイターエコノミーは、「コンテンツに紐づいた広告」で収益化するケースが多く、幅広いユーザーの関心を集めるコンテンツを作成できることが、クリエイターとして活躍する必要条件だった。
しかし、現在のクリエイターエコノミーは、広告で収益化を行う以外にも、限定的な範囲のユーザーを対象として、モノやコンテンツ、スキルを直接販売したり、ファンコミュニティを構築してサポートを得たりするプラットフォームが登場したことにより、必ずしも幅広いユーザーの関心を集める必要がなくなってきている。 これにより、新たなクリエイターが流入してきているのだ。
副業・兼業の増加
2つ目の要因として、副業をはじめとした働き方の選択肢の拡大が挙げられる。
2018 年、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成、公表した。働き方改革の一環として、副業・兼業をはじめとした多様な働き方が政府によって推進されており、各企業も社内制度の整備などを進めている。このような流れを受け、副業・兼業としてクリエイター活動に取り組み始める層が増加してきたと考えられるという。
新型コロナウイルスの感染拡大による可処分時間の増加
3つ目の要因として、新型コロナウイルスの感染拡大に端を発した可処分時間の増加がある。コロナ禍の感染予防対策として、外出を控え在宅で過ごす時間が増加した結果、これまで外出や移動に充てていた時間が新たな可処分時間となり、在宅で手軽に楽しめる動画視聴等の娯楽への需要が高まった。
その結果、コンテンツ消費量が大幅に増加したと考えられるという。また可処分時間をモノやコンテンツの創作に充てるケースもあり、クリエイター活動を開始する契機にもなったと、レポートでは分析している。
”推し活”の増加
上記以外では、技術的な要因として、コンテンツ編集技術の向上等により、個人でも質の高いコンテンツの制作・発信が容易になったことや、社会的な要因として、好きなクリエイターなどを応援する“推し活”やインフルエンサーマーケティングが普及したことなどが考えられる。“推し活”については、SNS やライブ配信が普及したことで、以前にくらべて“推し”の対象とファンとの距離が近くなった結果、“推し”の対象を見出しやすい環境となっており、これが“推し活”の拡大につながっていると考えられるとレポートは分析している。
(文・杉本健太郎)