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アマゾン(Amazon)には、「より少ないリソースでより多くの結果を出す」ための社内ルールがある。
例えば、「プレゼン資料よりも数枚の文書を優先する」「会議はピザ2枚分を配れる人数で行う」「製品の開発着手前にプレスリリースを書く」といったルールがあることがよく知られている。
アマゾン幹部から起業家に転身した者の多くは、自身のスタートアップ企業を成功させる上で、これらのルールをアレンジして活用している。
事業を軌道に乗せたアマゾンの元幹部3人に、とっておきの戦術を聞いた。
プレゼン資料より6ページの文書を作る
プレゼンを「聞く」よりも「読む」ほうが速いため、アマゾンではスライドよりも文書を重視している。事業計画の立案や会議のアジェンダ設定に際しても、リーダーは6ページの短い社内文書を作成するよう指示されている。
この文書は本来、情報を迅速に要約し、読み手の理解を促すことが目的だが、ある元幹部はこの手法を応用して、自社を顧客に売り込んだという。
Globaliveの創業者兼CEOである梅野浩介は、ID5、Browsi、Acorn-iなどのアドテクノロジーの顧客を獲得するために、アマゾン風の文書を作成して売り込みを行っているという。
梅野によると、こういった文書を準備するには綿密なリサーチが必要なため、顧客からはユニークで有用な情報が詰まっていると好評だという。
「アマゾンで働いたことで、こういうものの書き方が身についていたんだなって、かなりうれしかったですね」(梅野)
なお、梅野は顧客の理解を深めるために、文書の一部にPowerPointのスライドを挿入することにしているそうだ。
会議は少人数で行う
アマゾンでは、大人数の会議はすべきではないという社内ルールがある。大規模な会議は、小規模な会議よりも社員の時間を消費し、なおかつ生産性も低いためだ。ちなみに、「大人数」の基準は、2枚を超える枚数のピザを、出席者に提供しなければならなくなるかどうか(通称「ピザ2枚ルール」)である。
ProductWindの共同創業者兼CEOジェイソン・コワルスキー(Jason Kowalski)は、このルールをさらに進化させている。
会議のスケジュールを立てる前に、まず、過去の同じような会議に費やした時間と、出席したメンバーの給与に基づいてコストを計算する。その上で、その会議に本当に出席すべき人物は誰かを判断しているのだという。
製品が完成する前にプレスリリースを書く
アマゾンは顧客中心主義で有名だ。この規律を実践するため、アマゾンでは新製品の開発に着手する前にプレスリリースが作成される。
このプロセスを踏むことで、担当の社員は消費者が製品をどのように使うか事前に想像できるようになり、ひいては余計な試行錯誤に膨大なリソースをかけずに済むのだ。
このルールは、アマゾンの元幹部であるアレックス・ウォーカー(Alex Walker)が、アマゾンに特化した代理店Expert Edgeを創業した際にも役立った。ウォーカーは、クライアントがアマゾンでどのような課題を抱えているかを先に想像し、それを同社が提供するサービスの指針にしたという。
「多くの会社がウチは顧客志向ですって口を揃えて言いますけど、アマゾンは本当に実践していますからね」(ウォーカー)
(編集・野田翔)