ションフェルド・グループのライアン・トルキンCEOは、オフィスに社員を呼び戻すためにユニークな方法をとることにした。
Schonfeld Strategic Advisors
140億ドル(約2.1兆円、1ドル=150円換算)規模のヘッジファンドであるションフェルド・グループ(Schonfeld Strategic Advisors)は、社員をオフィスに呼び戻し、長期にわたって人材を確保するために、他社とは違う方法をとっている。
ションフェルドはもともとファミリーオフィス(富裕層の資産管理を行う組織)だったが、その後ヘッジファンドに転身した企業だ。そんなションフェルドが、ニュージャージー州サミットに新しいオフィスを開設した。サミットは、シタデル(Citadel)やミレニアム(Millennium)といった巨大投資運用会社と肩を並べたいと考える同社がサテライトオフィスを構えるような土地柄ではないにもかかわらずだ。
ションフェルドは2021年初めにライアン・トルキンがCEO(36)に就任して以来成長を続けていて、この1年で20の新しい投資チームを増やし、およそ250人の従業員を戦略的に採用している。
「パンデミック後、当社は人を中心に据えた職場づくりをしようと進化を続けてきましたが、この新しいオフィスはその取り組みを示す最新事例です」(トルキン)
もっと多くの時間を家族と過ごしたい
トルキンは、ニューヨーク市外からションフェルドのマディソン・アベニューのオフィスに通勤している従業員にアンケート調査を実施し、話を聞いた。その結果、実は多くの従業員が自宅の近くで働き、もっと多くの時間を家族と過ごしたいと思っているということが分かった。
「もし、オフィスを従業員たちの自宅近くに移すことができれば、週の大半はオフィスで過ごすことで従業員同士コラボレーションもしやすくなりますし、ざっくばらんに意見交換もできますしね」(トルキン)
トルキンは、ニュージャージー州やコネチカット州を含むニューヨーク都市圏にオフィスを増やし、フレキシブルな勤務体系を採用することで、より多くの人材を惹きつけようと考えている。
ションフェルドの社員は通常、週3日はオフィス勤務をしているが、その状況はチームによって異なる。本社はニューヨーク市内にあるが、コネチカット州のスタンフォードにも拠点があり、ニューヨーク州のジェリコには同社の最初のオフィスもある。
「より広範な人材プールにアクセスすることによって、それぞれのオフィスが自ずと成長していくと考えています」と、同社の最高投資責任者も兼任するトルキンは話す。
同社はここ数年、複数の投資チームの採用を進めており、業界のベテランであるコリン・ランカスター(Colin Lancaster)とミテッシュ・パリーク(Mitesh Parikh)を新しいマクロ取引部門のリーダーとして採用し、注目を集めた。現在、同社の従業員数は900人近くにまで増えている。
また、ションフェルドは世界19カ所にオフィスを構え、グローバルに展開している。直近では、ロンドンのオフィスをより広い場所に移転させた。
ウォール街と一線を画したオフィス戦略
社員は2022年9月から9000平方フィート(約836平方メートル)の広さの新オフィスで働いている。サミットにあるこのオフィスでは、トレーダー、金融分析とロング・ショート・ビジネスに携わるポートフォリオ・マネジャー、技術者、オペレーション担当、人事など多岐にわたる社員が働く。トレーディングと執行のグローバルヘッドであるジェフ・ジェイガー(Jeff Jager)もこのオフィス勤務だ。
現在は33人がこのサミットオフィスに勤務しているが、非常勤も含めると週に60〜80人ほどになる。常勤の3分の1は投資の専門家だが、いずれ人数は増えるだろうとションフェルドの広報担当者は見ている。
マンハッタンから電車通勤圏内の郊外にオフィスを構えたヘッジファンドはションフェルドが初めてではないが、同社が他の大手ヘッジファンドの傾向と違うことは間違いなさそうだ。
ブルームバーグは2022年5月に、ヘッジファンドが採用を増やし、対面での仕事環境を促すため、マンハッタンに多くのオフィススペースを開設していると報じた。例えば、ベリション・ファンド・マネジメント(Verition Fund Management)はオフィス拡張のためパーク・アベニューに移転したし、スカルプター・キャピタル・マネジメント(Sculptor Capital Management)やシタデル、ブラックストーン(Blackstone)も新たな移転先を探していたという。
ウォール街の企業幹部の多くは、従業員がオフィスに戻ってくることを望んでいる。2022年初め、JPモルガン(JPMorgan)は社員IDの入退室データを追跡し、誰が実際にオフィスに来ているのかを確認するようになった。ジェフリーズ(Jefferies)は投資銀行業務が滞るのを解消するため、もっと「定期的に」出社するよう従業員に要請した。ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)もこの秋、新型コロナウイルス感染症による制限を解除し、スタッフをオフィスでのフルタイム勤務に戻すよう命じている。
(編集・大門小百合)