ルイジアナ州バトン・ルージュのミシシッピ川沿い。水位が低くなったことによって現れた難破船が見える。2022年10月17日撮影。
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- ミシシッピ川の干ばつで19世紀に沈没した難破船と人骨が発見された。
- アメリカ中西部全域で干ばつが続く中、ミシシッピ川は歴史的な低水位に陥っている。
- 気候変動による干ばつでミシシッピ川の水域が縮小しているため、さらなる発見がありそうだと専門家は話している。
長引く干ばつで、北米大陸を流れるミシシッピ川は干上がり、数百年前の難破船と白骨化した遺体が発見された。
主要な航路でもあるこの川は、2022年10月に干ばつの影響で過去最低の水位を記録した。化石燃料の燃焼による地球の気温上昇は川の蒸発を促進し、干ばつをより深刻なものにしているとする研究が増えてきている。
2022年10月初旬、ルイジアナ州バトン・ルージュのミシシッピ河岸で、川が低水位になり、古い沈没船が発見された。AP通信によると、考古学者らはこの船が19世紀末から20世紀初頭の間に沈没したものだと考えているという。
ルイジアナ州バトン・ルージュのミシシッピ河岸にて。水位低下により現れた難破船。2022年10月18日撮影。
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船が完全に水面上に出てきたのは今回が初めてだが、これは新たな発見というわけではない。1990年代、低水位時に船の小さな部品が出現していた。
「当時、船は完全に泥で覆われていて、周りも泥だらけだったため、船の側面の先端部分しか見えなかった」とルイジアナ州の考古学者チップ・マクギムジー(Chip McGimsey)はAP通信に語っている。マクギムジーは「当時は、その断片を見るためのたくさんの泥をよけなければならなかった」と話している。
ルイジアナ州の日刊紙「The Advocate」の記事アーカイブによると、マックギムジーはこの船が1915年に嵐によって沈没するまでミシシッピ川を渡る人々や馬車を運んでいた「ブルックヒル・フェリー(Brookhill Ferry)」ではないかと考えているという。
ミシシッピ川の水位低下で人骨が現れた
干ばつに見舞われて水が引いたミシシッピ川ではさらに残酷な発見もあった。2022年10月15日、川のほとりで、ある女性が家族と一緒に石を探しているとき人骨を発見したのだ。ミシシッピ州のコアホマ郡の主任検視官スコッティ・メレディス(Scotty Meredith)は、「発見された骨には下顎骨、肋骨、その他の未確認の骨片などが含まれていた」とCNNに語っている。
「ミシシッピ川の水位がとても低くなっているため、人骨が見つかるのは時間の問題だと思っていた」と、遺骨を発見した女性のクリスタル・フォスター(Crystal Foster)は地元テレビ局のWMCに語っている。
アメリカ最大の貯水池であるネバダ州のミード湖でこの数カ月間に複数の人骨が発見され、それにこのミシシッピ川での発見が続いた。ミード湖は気候変動による干ばつの影響で歴史的な低水位に下がっており、2022年の夏に複数の白骨化した遺体が発見されている。
人間の遺体が入った樽が見つかった場所の近くにある錆びた金属製の樽。この樽は2022年5月5日にミード湖西部が干ばつで低水位となった時に湖岸に現れた。
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人為的な気候変動によって地球が温暖化し、干ばつが深刻化しているため、水位の低下によって過去の遺物がさらに発見される可能性があると専門家は指摘している。
ミード湖での死亡事件を調査しているクラーク郡の検死官事務所の顧問を務める法人類学者、ジェニファー・バーンズ(Jennifer Byrnes)によると、長い間、水中にあったものを発見するのは大変なことだが、これらの水の大きな減少は行方不明者事件の解決に当たる専門家にとって好都合なことかもしれないという。
「大量の水がなくなることは、法医学的な面でも我々の助けになる」とバーンズはInsiderに語った。
カリフォルニア州立大学チコ法人類学研究所の法人類学者、エリック・バートリンク(Eric Bartelink)は以前Insiderに、水位の低下によって、何年もの間、水面の下に隠れていた遺骨が発見されたと語っている。
「我々にとっては、行方不明者を発見する機会が増え、事件が発覚する可能性が高まる」 とし、 「通常であれば簡単には見つからない水中にあったものを明らかにすることになる」 と彼は付け加えた。
[原文:A 19th-century shipwreck and human remains were uncovered as the Mississippi River recedes]
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)