ハーバード・ビジネス・レビューの研究は、常にアプリを切り替えることが労働者に与える影響について調べたものだ。
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- 「alt+tab」のショートカットを過剰に使用すると、燃え尽きに結びつきかねないことが、最新の調査で示唆された。
- ハーバード・ビジネス・レビューの調査で、労働者は年間で5週間もの時間をアプリの切り替えに費やしていることがわかった。
- WalkMeの調査では、大手企業で平均76人の従業員が「技術的な不満」で離職していることがわかった。
仕事で燃え尽きたと感じる理由は、長時間労働から人出不足、副業まで数多くある。だが、考えもしなかったことが理由かもしれない。それが繰り返し行うアプリケーションソフトの切り替えだ。
ハーバード・ビジネス・レビューが8月に発表し、ブルームバーグが報じた調査で、労働者はアプリやウェブサイトを1日最大1200回も切り替えていることがわかった。
つまり、従業員はアプリを切り替えることに週に4時間もかけていることになる。「1年間では5週間にもなり、年間の労働時間の9%にあたる」と、その調査は指摘している。
この「切り替え税」が、従業員に退職を決意させる一因になっている可能性が、別の研究によって指摘されている。
アイデンティティやアクセス管理を行うOktaはブルームバーグに対し、同社のクライアントは2021年に89のアプリを導入したが、2015年は58だったと述べている。大企業は平均187のアプリ使っている。WalkMeの調査によると、そのうち30%近くが重複しているか、価値をもたらさないという。
だが最大の問題はこの「切り替え税」が従業員の燃え尽きを助長しているかもしれないことだ。WalkMeのクライアントの大企業では、過去1年間に平均76人の従業員が「技術的な不満」で離職していたことがわかった。
この数字は、企業の世界でデジタル化が進んでいるが、必ずしも良い方向に進んでいるわけではないことを物語っている。
OPEXEngineによると、パンデミックをきっかけにした在宅勤務への移行は、サービス型ソフトウェア(SaaS)市場を急拡大させ、投資家は有望なスタートアップに900億ドルも投じることとなった。そして企業は、Slack、Zoom、Monday、Microsoft Teamsなどのコミュニケーションアプリに飛びついた。
だが、機械学習企業のSrocoの創業者兼チーフ・テクノロジー・オフィサーで、ハーバード・ビジネス・レビューの調査の共同著者であるローハン・ナラヤナ・ムルティ(Rohan Narayana Murty)は、異なるアプリの価値は、それらを使い、管理する人によるのかもしれないと、ブルームバーグに語った。
「我々の働き方は気晴らしに過ぎない。我々は一日中、アプリの切り替えを繰り返し行っているだけだ」とムルティは語った。
ガートナーの従業員エクスペリエンス・テクノロジー・グループのシニアディレクター・アナリスト、トーリ・ポールマン(Tori Paulman)は実際、ある人事マネージャーから従業員がこれらのアプリの操作で感じる疲労に対処するアプリはないかと聞かれたという。
「テクノロジーは大きな成功要因から、大きな阻害要因になってきている」と彼女は話している。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)