著名エコノミスト、デイビッド・ローゼンバーグが推奨するテーマ型上場投資信託(ETF)12銘柄は、不透明な時代のリスクを逆手に取ったラインナップだ。
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投資家が企業の業績見通しを慎重に吟味しつつ、金融政策のさらなる引き締めに備える一方で、10月第3週(17〜21日)の株式市場は前週比プラスで引けた。
S&P500種指数、ナスダック総合指数、ダウ工業株30種平均指数はいずれも4〜5%の大幅上昇を記録した。
先週のパフォーマンスは弱気相場における一時的な上昇という株式市場の「あるある」に終わるのか、それとも長期的な回復のはじまりなのか。いずれにしても、これでひと安心と結論するわけにはいかない現状があるのは確かだ。
米ウォール・ストリート・ジャーナルは10月21日、米連邦準備制度理事会(FRB)が11月上旬に開催予定の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%の利上げを決定する見込みと報じた。
著名エコノミストでローゼンバーグ・リサーチ(Rosenberg Research)創業者のデイビッド・ローゼンバーグは10月19日付の顧客向けレポートで、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)のデータを使って次のように指摘している。
「2022年の弱気相場は市場のほぼあらゆる分野に被害をもたらしました。株式60%、債券40%という古典的ポートフォリオのパフォーマンスは、この100年間で最悪の結果になりそうです」
投資家たちはいま、さまざまな経済指標やインフレ率、地政学的不安定性など複雑な要素を組み合わせて解釈しながら、淀んだマクロの海をかき分けつつ前に進んでいる状況だ。
ただ、そのような厳しい状況があればこそ、割高な取引が続いていた企業のバリュエーションはより合理的な水準に引き下げられ、それによって長期投資の期待リターンが改善される面もある。
ローゼンバーグは先述のレポートで、長期保有を通じたリターン確保を目指す投資家が考慮すべき重要投資テーマについて概説している。
水不足と食糧難
まず第一に考慮すべきテーマは「水不足」だ。
水の需要量は今後8年間で供給量を40%上回る見通しだ。現在、水の70%は農業分野で使用されており、より効率的な水利用あるいは排水量の削減を実現できる企業には、長期的に見て大きな成長の余地がある。
ローゼンバーグに言わせれば、水不足の緩和や解消に貢献する破壊的なテクノロジーが登場する可能性があるということだ。
「供給面では、近年の脱塩装置・設備の進歩により、従来は高コストでエネルギー集約的な処理工程だった脱塩(海水に溶けた塩類の除去)が、より現実的に『使える』選択肢になりました」
「最近になって研究開発が急速に進む採水・処理技術によって、地下水(地表下に存在する水)へのアクセスが向上し、得られる水質も改善されました。とりわけ、淡水の9割以上が地表下にあるアメリカでは、この技術進歩は決定的な意味を持ちます」
ローゼンバーグによれば、水関連企業へのエクスポージャー(資産を特定のリスクにさらす割合)を取りたい投資家は、インベスコ(Invesco)やファースト・トラスト(First Trust)が組成する上場投資信託(ETF)が検討対象となる。
第二に、ロシアのウクライナ侵攻によるサプライチェーンの混乱を受け、世界は「食糧難」の深刻なリスクにさらされている。小麦と大麦に関しては、ロシアとウクライナが世界貿易(輸出)量の約25%を占め、その影響は極めて大きい。
ローゼンバーグによれば、アグリテックと呼ばれる農業技術への投資を通じて、「短期・長期それぞれのトレンドによって生じる食料需給へのプレッシャーを軽減できる可能性があり、したがって(逆に言えば)、食糧難は長期投資のテーマとして非常に魅力的」という。
エクスポージャーを取る選択肢としては、グローバルXの農業関連ETFが挙げられる。
航空宇宙・防衛・エネルギー
ローゼンバーグは「航空宇宙・防衛」セクターにも注目すべきという。
ロシア・ウクライナ戦争の長期化を受け、世界の国防予算は増加の一途をたどり、青天井の様相を呈している。当事者の両国はもちろん、アメリカ、ドイツ、日本、カナダなどウクライナを支援する先進各国も同様の措置を講じている。
ローゼンバーグによれば、2025年までに世界の防衛費が20%増加するとの予測も散見され、関連銘柄への注目も高まっているという。
「ESG(環境・社会・ガナバンス)関連投資が近年存在感を強める中、防衛関連銘柄は(その真逆の性質を持つがゆえに)忌避されてきましたが、世界の防衛費増大を受けて再び脚光を浴びています」
投資の選択肢としては、米ブラックロック(BlackRock)が提供するiシェアーズ(iShares)の関連ETFは、航空宇宙・防衛セクターに広く分散投資するもので、先行き不透明な相場からの「隠れ家」を必要とする投資家にとっては有力な選択肢となる。
また、ローゼンバーグによれば、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)が提供する航空宇宙・防衛関連のETFは年初来、S&P500種指数を約20%上回るパフォーマンスで推移しているという。
代替エネルギー・原料
世界がより環境に優しい代替エネルギーを見出そうと取り組む中、今後10年間は「リチウム」「水素」「ウラン」といったテーマも重要になってくる。
ローゼンバーグはウランを例に挙げる。
「世界各国がそれぞれのエネルギー計画に原子力を組み込むことに積極姿勢を強めており、したがって、原子力発電の燃料として使われるウランは今後、強気相場が続くと想定されます」
ロボット工学、ヘルスケア、その他
60歳以上の高齢人口は今後も増加していく。「ヘルスケア」「バイオテクノロジー」「製薬」セクターがその最も直接的な受益者になる。
とりわけ、足元の弱気相場においては、ヘルスケア・プロバイダーが他のセクターの企業に比べて優位性を持つとローゼンバーグは強調する。
「ヘルスケアセクターは景況との連動性が低く、取引価格も魅力的な水準を維持しています」
最後に、ローゼンバーグは「ロボティクス」を今後の重要なテーマに挙げる。
人件費の高騰を受け、企業は生産性の向上と投入コストの削減を企図して、日常業務のオートメーション化を推し進めていくことになるだろう。
推奨ETF12銘柄
以下に、ここまでローゼンバーグが推奨投資先として触れてきたものも含め、「次の10年間に決定的な役割を果たす」上場投資信託(ETF)12銘柄を紹介しよう。
誕生から間もない発展途上の業界をテーマにしたETFが多く、短期的には価格の上下動が想定されることに留意されたい。
インベスコ・ウォーター・リソーシズETF
Markets Insider
[英語名]Invesco Water Resources ETF
[業界]天然資源
ファースト・トラスト・ウォーターETF
Markets Insider
[英語名]Invesco Water Resources ETF
[業界]天然資源
グローバルX アグリテック&フード・イノベーションETF
Markets Insider
[英語名]Global X AgTech & Food Innovation ETF
[業界]農業
ファースト・トラスト・ナスダック・サイバーセキュリティETF
Markets Insider
[英語名]First Trust Nasdaq Cybersecurity ETF
[業界]テクノロジー
iシェアーズ 米国航空宇宙・防衛ETF
Markets Insider
[英語名]iShares U.S. Aerospace & Defense ETF
[業界]資本財
グローバルX リチウム&バッテリーテックETT
Markets Insider
[英語名]Global X Lithium & Battery Tech ETF
[業界]天然資源
ディレクション・ハイドロジェンETF
Markets Insider
[英語名]Direxion Hydrogen ETF
[業界]天然資源
グローバルX ウラニウムETF
Markets Insider
[英語名]Global X Uranium ETF
[業界]天然資源
SPDR S&PバイオテックETF
Markets Insider
[英語名]SPDR S&P Biotech ETF
[業界]医療
ヴァンエック・ファーマシューティカルETF
Markets Insider
[英語名]VanEck Pharmaceutical ETF
[業界]医療
iシェアーズ 米国ヘルスケア・プロバイダーズETF
Markets Insider
[英語名]iShares U.S. Healthcare Providers ETF
[業界]医療
グローバルX ロボティクス&人工知能ETF
Markets Insider
[英語名]Global X Robotics & Artificial Intelligence ETF
[業界]その他
(翻訳・編集:川村力)