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- 政府関係者の中には、イーロン・マスク氏が国際問題に与える影響力を懸念する声もあるとワシントン・ポストが報じた。
- 同紙によると、マスク氏はアメリカ政府とは距離を保つ一方で、海外の要人とは連絡を取り合っているという。
- アメリカの政府関係者は、マスク氏と外国政府との関係をますます意識するようになっている。
アメリカの州政府や連邦政府はここ20年、イーロン・マスク氏のリスクの高い事業に大金をつぎ込み、同氏に収益性の高い、独占的な政府との契約を与えてきた。ただ、ワシントン・ポストの報道によると、政府関係者の中にはマスク氏が国際問題に対して影響力を持ち過ぎていると懸念し、競合他社に資金提供することでアメリカ政府へのマスク氏の影響力を抑えようとする動きがあるという。
「イーロンはどこにでもいる」とあるホワイトハウスの関係者はワシントン・ポストに語った。
「自分は天才で、自分にガードレールは必要ない、自分は何でもよく分かっていると彼は信じている」
マスク氏はこの1年、アメリカのバイデン大統領と公然と対立しているが、アメリカ政府に対する"不支持"が公になるにつれ、同氏はより多くの外国の首相や大統領と連絡を取り合うようになっていると、マスク氏に近い関係者はワシントン・ポストに話している。
マスク氏はロシアのプーチン大統領やブラジルのボルソナロ大統領といった外国の指導者と公に会談し、利益相反の問題が指摘されている。例えば、ユーラシア・グループのイアン・ブレマー(Ian Bremmer)氏が、マスク氏がプーチン大統領と会っていた —— マスク氏はこれを否定している —— と指摘した後、マスク氏はウクライナがクリミア半島をロシアに譲るべきだと主張し始めた。これはプーチン大統領の側近やロシア政府の関係者らの間で支持されている考えだ。
ワシントン・ポストはマスク氏側にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
また、関係者らはマスク氏のさまざまなビジネス上の関係に付随する国家安全保障の問題を懸念しているとも話している。
ブルームバーグの先週の報道によると、バイデン政権は440億ドル(約6兆5400万円)でのツイッター買収や衛星通信サービス「スターリンク」を含め、マスク氏が関与する取引の一部を国家安全保障の審査対象にすべきかどうかを巡り協議している(編集注:ただ、ロイターによると、ホワイトハウスのジャンピエール報道官は24日、マスク氏の事業を国家安全保障の観点から審査することを検討しているとの報道について「事実ではない」と否定した)。マスク氏はツイッターを外国人投資家とのコンソーシアムで買収する計画で、コンソーシアムにはサウジアラビアのアルワリード・ビン・タラール王子やカタールの政府系ファンド、中国出身の趙長鵬(ジャオ・チャンポン)氏が創業したバイナンス・ホールディングスなどが参加している。
マスク氏の事業への依存度を下げようと、政府関係者はその競合他社を支援しているとワシントン・ポストは報じている。具体的には、スペースXと競合するボーイングの「スターライナー(Starliner)」に資金提供をしたり、より多くの電気自動車メーカーにテスラとの競争を促したり、ウクライナでのスターリンクの代替を探すなどしている。
「スペースX以外にも選択肢はあるし、ウクライナが戦場で必要としているものを提供するのに、わたしたちが提携できる相手は他にもいる」と国防総省の広報官は10月14日に語った。
ただ、マスク氏との協業にはアメリカ政府からまだ大きな関心が寄せられていると、ワシントン・ポストは指摘している。
「1つ明らかなことは、マスク氏は自分が何でもよく知っていると信じていて、自分のやりたいことは何でもやるということだ。これには良い面もあれば、悪い面もある」と、ある連邦議会議員は同紙に語った。
Insiderはマスク氏側にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
(翻訳、編集:山口佳美)