出前館、国内シェア1位も粗利マイナス19億円。赤字拡大続くビジネスモデルの持続性を考える

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Ned Snowman/Shutterstock

コロナ禍で深刻な影響を受けた業界の一つが飲食業ですが、そんな逆境にあっても市場規模を広げている業態があります。外出自粛や外食制限を逆手にとって台頭してきたフードデリバリーサービスです。

「自宅でもあの店の料理を楽しみたい」「家で料理するのが面倒」といった理由から、コロナをきっかけにフードデリバリーを使う機会が増えたという人も多いのではないでしょうか。

実際、コロナ前の2019年と比較すると、2021年までの2年間でフードデリバリー市場は91%も成長しています。

図表1

(出所)エヌピーディージャパン「CREST 2021/12/16レポート」より編集部作成

このように拡大しているフードデリバリー市場の中でも、とりわけ成長著しいのが株式会社出前館(以下、出前館)です。

デイリーアクティブユーザー(DAU:1日あたりの利用者数)のシェアで見ると、出前館は2020年8月期の27%から2022年8月期には48%にまでに増やしています。

図表2

(注)DAU(Daily Active Users):1⽇のうちアプリをアクティブに利⽤しているユーザーの数。

(出所)出前館 2022年8月期 決算説明資料より抜粋。

残りのシェア52%の中にUber Eats、Wolt、menuといったフードデリバリーの競合他社が含まれているわけですから、出前館がこの2年間でいかにシェアを伸ばしたか分かります。

実際、出前館のKPIを見ても、この3年で大きく成長しています(図表3)。

図表3

(注)GMV(流通取引総額):品代⾦+配達料(値引き前)+その他ユーザー⼿数料。アクティブユーザー数:1年以内に1回以上購⼊したユーザー数(購⼊ユニークユーザー数)。アクティブユーザー数は末⽇時点。

(出所)出前館 2022年8月期 決算説明資料をもとに編集部作成。

「GMV」とは出前館を通じてオーダーされた総額のことです。2022年8月期はGMVが2201億円、オーダー数が8603万件ということは、1件あたりの平均オーダー金額は2558円となります。

こうして見てくると出前館の勢いには目を見張るばかりですが、同社の売上高と営業利益に目を転じると、また違った景色が見えてきます(図表4)。

図表4

(出所)出前館 有価証券報告書および決算短信より筆者作成。

いかがでしょうか。GMVの増加とともに売上高も確かに増えていますが、同時に赤字の幅も拡大していますね。直近の2022年8月期にいたっては、前期の売上高より大きな営業赤字を計上しています。図表4から湧いてくる疑問を整理すると、ざっと次の3点でしょうか。

  • 直近でなぜこれほど赤字が増えているのか
  • 黒字から赤字に転じた背景には何があったのか
  • こんなに赤字を出し続けていて、資金繰りや倒産リスクは大丈夫か

そこで今回は前後編の2回にわたり、この3つの問いに答えを出すべく会計とファイナンスの視点から出前館のビジネスモデルを考察していくことにしましょう。

粗利の時点で19億円の赤字

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