2015年6月、サンフランシスコで開催されたイベントで登壇したオキュラスの創業者、パルマー・ラッキー。
Thomson Reuters
- パルマー・ラッキーは2012年に創業したオキュラスを、2014年にはフェイスブックに20億ドルで売却した。
- 彼はメタバースの構築を望んでいるが、現在フェイスブックが提供する「ホライゾンワールド」は「良くない」と述べている。
- それでも、将来的には成功する可能性があると彼は考えている。
パルマー・ラッキー(Palmer Luckey)は、メタ(Meta、旧フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)CEOが開発したメタバース向け製品のことがあまり好きではないが、メタバース自体は最終的には成功すると考えている。
ラッキーは、2022年10月24日に開催されたウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)主催の年次会合「テックライブ」で、メタの中核となるメタバース製品「ホライゾンワールド(Horizon Worlds)」について「よい製品だとは思わない」と語った。
ラッキーは2012年に創業したバーチャルリアリティのスタートアップ、オキュラス(Oculus)を2014年に20億ドルでフェイスブック(Facebook)に売却した。ザッカーバーグはAR(拡張現実)やVR(仮想現実)のデバイスを通じてアクセスする没入型のデジタル世界「メタバース」に150億ドル以上の投資をしており、オキュラスの買収もその一環だった。
これだけ巨額の投資をしているものの、その成果として見えるのは「メタ」への社名変更、いくつかのVRヘッドセット、初期型のデジタルプラットフォームとなる「ホライゾンワールド」ぐらいのものだ。
ラッキーはホライゾンについて「よいものでもなければ、楽しいものでもない」と述べている。
「開発チームのほとんどのメンバーは、それがよい製品ではないということに同意するだろう」
ラッキーは2016年にフェイスブックを解雇された。「評判の悪い」キャンペーンに政治献金を行ったことが原因だったと彼は述べている。彼は現在、セキュリティと防衛製品に特化したスタートアップ、Anduril Industriesを経営している。敵対する形での退社となったが、ラッキーはARとVRの開発に長年携わっており、ファンでもあることから、メタがその構築に成功することを望んでいるという。
「マーク・ザッカーバーグは世界一のバーチャルリアリティファンだ」とラッキーは言う。
「彼ほど多くの資金と時間をつぎ込んでいる人はいない」
ザッカーバーグがこのプロジェクトに投入している金額だけを見ても、ホライゾンワールドが向上し、メタバースが成功する可能性があることを示しているという。
「今はひどいものだが、将来はすごいことになるかもしれない」と彼は続ける。
「ザッカーバーグはそのための資金を投入するだろう。長い目で見れば誰よりも勝てる立場にある」
だが時間がかかり、失敗も伴うはずだ。パルマ―はそれを趣味の車に大金をつぎ込んで「プロジェクトカー」をつくることに例えた。
「うまくいったとしても、誰もそれに価値を見出さないかもしれない」と彼は言う。
「つまずくだろうか。もちろん、つまづくだろう。多額の資金を無駄にするだろうか。『プロジェクトカー』に付け加えたものを、後になって取り外すこともあるだろうか。たぶんそうなるだろう」
これまでのところ、メタのメタバース構築へのシフトは多額の資金がかかっている。同社は2021年、Meta Questと改名したオキュラスを含むすべてのメタバース・プロジェクトを担当する部門であるReality Labsは100億ドルの損失を出した。ウォール街のアナリストは、2022年も100億ドル以上の損失を出すと予想している。
特に、フェイスブックはユーザーと収益の成長率の鈍化に対処しているため、ウォール街はこれまでのところ、このプロジェクトに良い反応を示していない。10月初め、ザッカーバーグはまだ使えない脚のあるアバターや他の新たなメタバースの機能をデモンストレーションしたが、その後、メタの株価は2018年以来の安値に落ち込んだ。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)