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節約よりも「増収」を! クリエイターであり続けるためのマネープラン。ミレニアル世代の家計診断 ヨウジさん編 #2

どんな環境でも柔軟に生きたい、経済的にも自立したい——。連載「ミレニアル世代の家計診断」では、そんなふうに考えるミレニアル世代の読者の家計診断をFPとともに行います。

【ミレニアル世代の家計診断 ヨウジさん編 #1】に引き続き登場するのは、「ワークライフインテグレーション」の実現を目指す、デザイナーのヨウジさんです。

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クリエイターの場合、節約よりも収入を増やしたしたほうが、仕事にも生活にもプラスになるはず。

imtmphoto/Getty Images

  • クリエイタータイプの人の資産形成は、「自動化」「仕組み化」が大事。
  • また、「支出を減らす」のではなく「収入を増やす」ことを考えたほうがよい。
  • 「ワークライフインテグレーション」の実現のためには、独立も視野に。

都内のメディア企業でデザイナーをしているヨウジさんは、会社での昇進や昇給のために身を粉にして働くことに違和感を持っている。そこで、仕事とプライベートを統合することで、人生をより豊かにするワークライフインテグレーションを実現したいという。

とはいえ、一緒に暮らしているパートナーとの結婚など、これからのライフイベントに備え、貯蓄も必要だ。また、安定した生活を送るために、給与以外の収入も実現したいとも思っている。

現在の月収は約32万円。1カ月の収支は、趣味のライブに複数回行かなければトントンか、やや黒字。保有資産としては、約80万円を定期預金しているうえに、親からの相続として投資信託3本と外貨MMFが約500万円、そして兄と折半して登記している実家の土地と家屋が残されているという。

この状況でヨウジさんの目標を実現するためには、どのようなプランがあるのか。 ファイナンシャルプランナーの西山美紀氏に話を聞いた。

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取材をもとにBusiness Insider Japan作成

お金を増やす方法を「仕組み化」

ヨウジさんのようなクリエイターが金銭面の不安を解消するためには、できるだけ資産運用の方法を「自動化」「仕組み化」してしまうことが大事だと、西山氏は語る。

「クリエイターの場合、お金のことで日々わずらわしい思いをするのは避けたいだろう。例えば投資の場合、どうしても相場の波がある。そのたびに一喜一憂して、売買したりしていては、本業に差し障るはずだ」

それを踏まえたうえで西山氏は、ヨウジさんの資産運用のために、2点の提案をした。その1点目は、自分の口座から自動で定期的に貯金をしていくことである。

年齢に応じてマネジメント層に移行するのではなく、クリエイター人生をまっとうするには、どこかで独立を意識する場面も来るだろう。そのためには、「現在、定期預金に80万円があっても、少し心もとない」と、西山氏は指摘する。

というのも、独立した場合、病気は収入の途絶を意味する。また、退職後しばらくは失業手当で何とかしようと思っても、自己都合の退職だと、通常2カ月は待機しなくてはならない。さらに失業期間が長引くと、焦りのあまり次の仕事選びに失敗する可能性もある。

「そのようなとき、今の月収の6倍くらいの預貯金、つまりヨウジさんなら200万円ほどがあれば、精神的に余裕ができる。金銭のことで退職に迷うこともないし、落ち着いてやりたい仕事を模索できるだろう」と、西山氏は語る。

「そのためには、まずは月に1万円でもいいので積立貯金などを始めて、その金額を増やしていくこと。大切なのは、自分が何もしなくても自然とお金が貯まっていく仕組みをつくることだ」

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相続した投資信託を賢く見直し

そしてもう1点が、3本の投資信託の見直しだ。

「現在のヨウジさんが所有している投資信託は、数十年前に発売された商品なので、手数料も高いのではないか」と、西山氏は指摘する。

そもそも投資信託は、購入時手数料、運用時には信託報酬、そして売却時には解約手数料(信託財産留保額)など、さまざまなプロセスでコストがかかるのが一般的だ。そのため、一見、高いリターンであっても、大きなコストがかかっていれば「期待していた利益が出ない」ということになりかねない。

例えばリターンが5%だったとしても、信託報酬が3%かかり、さらにほかの手数料もかかることを考えたら、実質的な利回りは2%未満になってしまう。

そこで、西山氏が薦めるのが「つみたてNISA」だ。

「現在保有している投資信託を、運用状況がいいときに、例えば半分ほど売却して、それを元につみたてNISAを始めてみてはどうだろう。つみたてNISAなら、金融庁の基準をクリアした、手数料が低めの投資信託が揃っているほか、利益に対して約20%の税金がかからないメリットもある」と、西山氏はアドバイスする。

「あるいは、急に現金が必要になった場合に備えて、投資信託を売却した後の現金の一部を定期預金などにしておき、月収の中から、積立貯金のほかに月に1万円でも5000円でも、つみたてNISAに回すと良いだろう」

資産形成という意味では個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」という選択肢もある。iDeCoと似たような仕組みとして、勤務先で加入する企業型DCもあるが、いずれも非常に節税効果が高く、効果的に老後資金を構築できるので、知名度も人気も高い。しかし、ヨウジさんのケースでiDeCoを始めるのは、少し考えたほうがいいと西山氏は指摘する。

「iDeCoは年金ということもあり、原則60歳になるまで引き出せない。ヨウジさんはこれから結婚などの大きなライフイベントもあると思うし、そのときに『iDeCoに入れているあのお金が下ろせれば……』と後悔する可能性もある」

そして、西山氏は「今は貯蓄を増やしていきたい段階なので、節税面よりもいざというときに現金化しやすい、つみたてNISAの積立額アップを優先したほうがいいだろう。可能ならつみたてNISAで月3万円を目指したい」と、付け加えた。

節約するよりも、収入を増やす

資産運用の道筋は見えてきた。その一方、毎月の収入を増やす方法はどうか。

休眠資産である実家の賃貸はヨウジさんが否定しているし、西山氏も「東京と地方で居住地を分散して確保できていることは、リスク回避になる」と評価する。

そこで西山氏が言及したのは、やはりヨウジさんが望む働き方、「ワークライフインテグレーション」を実現することだ。

「ヨウジさんのような仕事の場合、やはり支出を減らすよりも、収入を増やして好きなことに堂々と使えるお金を確保したほうが、仕事にも生活にもプラスになるはず。その仕組みをつくることが重要だと思う」

そのためにはまず、副業が認められる環境を存分に活かし、本業以外にやりたい仕事にもチャレンジして、たとえ少額でも追加収入を得ていくこと。それをサブスクリプションサービスやライブチケットなど、「デザイナーとしてアイデンティティを確保するために欠かせない」と考えている支出に充当できれば、充実した仕事と生活に向けた好循環になるだろう。

そして、副業に取り組むなか、ヨウジさん独自の得意先を見つけて手応えを感じ、さらに月収の半年分ほどの貯蓄ができたころに、一度フリーランスになってみるのもいいのではと、西山氏は提案する。

30代前半であれば、万が一うまくいかなくてもやり直しがきく。フリーランスという働き方なら、好きなときに地方にある空き家の実家に滞在して仕事をすることもできるだろう。さらに、そこから新たな仕事へと広がるかもしれない。

「さまざまな経験は、クリエイター人生を邁進していくうえで大きな財産になるはずだ。チャレンジする価値はあると思う」と、西山氏は語る。

「ただ、フリーランスになると健康管理が自分次第になるため、より一層の留意が必要だ。健康は、収入や幸福度、将来の安心感にも直結する。健康診断を定期的に受けるなど、心身の健康を特に大切にしてほしい」

(文・滝口雅志、連載ロゴデザイン・小川いずみ、編集・長田真)

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