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- 新型コロナウイルスのパンデミックとその余波の中で有給休暇を取得した労働者と、取得しなかった労働者を連邦委員会が新たに調査した。
- その調査の報告書によると、パンデミックの間、有給休暇を取得した労働者の方が、仕事に留まる可能性が高かった。
- 有給休暇を取得した人の方が昇給や昇進の可能性も高く、有給休暇が仕事の定着に役立っていることも示されている。
従業員に長く働いてもらいたいのであれば、彼らが休暇を取るための経費を割くことが重要かもしれない。
コロナウイルス危機に関する特別小委員会(Select Subcommittee on the Coronavirus Crisis)の新しい報告書は、労働者は有給休暇を取得できたのか、そしてパンデミックの間どのような状況だったのかを調査したものだ。彼らは、国内最大の雇用主12社(いずれも2020年にレイオフを実施)とそこで働く労働者を2019年から2021年にかけて追跡調査した。
有給休暇のない会社では、有給休暇のある会社と比較すると3、4倍も退職する可能性が高いことが分かった。この報告書が分析するある企業では、2020年に有給休暇を取得できなかった女性の時間給労働者は3分の1以上が辞めたという。一方、その企業で有給休暇を取得した女性の時間給労働者のうち退職した人はわずか12.4%だった。
さらに、休暇を取ることは、労働者が戻ってくる可能性が高いことを意味している。休暇を取った労働者は休暇を取らなかった労働者よりも退職する割合が少なく、さらに昇給率も昇進する可能性も高かったというのだ。
「休暇を取った労働者は、取らなかった労働者よりも高い確率で昇給・昇進を果たしている。これは、休暇を取った結果、ストレスや燃え尽き症候群が減少し、パフォーマンスが向上したことを示している可能性がある」と報告書は伝えている。
しかし、女性よりも男性の方が休暇を取ることによる利益を多く得ており、休暇を取った女性よりも昇進する可能性が高かった。これは、パンデミック時に職場で特に困難な状況に直面した女性にとって、依然として存在する構造的不平等を物語っている。
この調査結果では有給休暇の利点がより広範囲に及ぶ可能性があることを示唆されているにも関わらず、アメリカ連邦議会は長い間審議して2022年8月に成立した「インフレ抑制法(Inflation Reduction Act)」に、有給休暇の保証を組み込めなかった。
Women Effect Action Fundとマサチューセッツ大学アマースト校(University of Massachusetts Amherst)の研究によると、有給休暇を取得すると、アメリカ人の収入は毎年285億ドル(約4兆1673億円)以上増えるという。この研究によると、連邦政府の政策のもとで年間1800万人以上の労働者が有給休暇を取得すると、定着率の向上につながる可能性があることが明らかになっている。
カリフォルニア州では2002年から有給休暇が制度化されている。ベイエリアカウンシル経済研究所(Bay Area Council Economic Institute)の分析によると、この政策が施行されて以来、カリフォルニア州では新規に働き始めた母親たちの雇用水準が上がり、中小企業の人件費の負担は軽減されたという。
有給休暇を取得している労働者と取得していない労働者の差はあるものの、分析対象企業を含め、全体的に2020年の退職者は少なかった。これは、パンデミック時代の不安によるものかもしれない。そして、対象企業はいずれもレイオフを実施していた。
しかし、この2020年の全体的な退職率の低さは、2021年春に始まった退職ブームの原動力となったとも考えられる。グラスドア(Glassdoor)のシニアエコノミスト、ダニエル・ザオ(Daniel Zhao)によると、辞めたいという欲求が鬱積していることが示されており、パンデミックがなければ、2021年8月までにさらに370万人が退職していたかもしれないという。景気回復後に、どれだけ多くの時間給労働者や低賃金労働者が退職したかを考えると、この報告が分析した労働者の間では、仕事を辞めたいという欲求は一般的だったようだ。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)