Mike Blake/Reuters; Savanna Durr/Alyssa Powell/Insider
アマゾンが10月27日に発表した2022年第3四半期(7〜9月)決算は投資家を失望させ、同社の株価は急落した。時間外取引では当日の終値に比べて一時20%以上下げた。
説明会で発表された、11月下旬からのホリデーシーズン(年末商戦)を含む第4四半期(10〜12月)の業績見通しも市場予想を下回った。売上高は1400億~1480億ドルの範囲とし、市場予想の1550億ドルに届かなかった。
アマゾン最高財務責任者(CFO)のブライアン・オルサフスキーは、コスト削減策の一環として人員削減を進めていることを強調した。
直近の事例として、同社は決算発表翌日の28日、ライブラジオアプリ「アンプ(Amp)」の運営部門に所属する従業員を150人減らして半数規模にすると社内向けに通告している。
ウォール街の評価揺るがず
10月18日、アマゾンの創業者で前最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾスは、迫り来る危機に備えるべき(Batten down the hatches)とツイートし、景気後退入りの可能性を示唆した。
一方、米銀大手バンク・オブ・アメリカ(以下バンカメ)は、アマゾンが自ら示した「厳しい業績見通しこそが、すでに景気後退に突入したことを物語っている」と顧客向けメールで指摘している。
そうした厳しい状況が明白であるにもかかわらず、米ウォール街の金融各社は、アマゾンの第3四半期決算発表を受けて目標株価をそれぞれに修正したものの、依然として投資判断を「強気」に据え置いたままだ。
アマゾンの従業員たちは安全性の確保されていない過酷な労働環境を内部告発するなど悲痛な叫び声を上げてきたが、株主やウォール街のアナリストらの評価尺度を変えるには至らなかった。
それより、同社の経営健全性について懸念すべきは、将来の営業益を圧迫するサプライチェーン制約の長期化とエネルギーコストの上昇というのが株主やアナリストらの見方だ。
バンカメのアナリスト、ジャスティン・ポストは顧客向けメールで次のように指摘する。
「年末商戦の売上高見通しは想定以上に厳しく、利幅の拡大にも限界があります。しかし、いかに見通しが厳しいとは言え、第3四半期は(売上高が前年同期比15%増と)大きく市場シェアを伸ばしており、第4四半期も引き続きシェア拡大が予想されます」
ドイツの市場データ分析会社スタティスタによれば、アマゾンの米Eコマース市場におけるシェアは37.8%となっている(2022年第2四半期末時点)。
「今後のマージン(利益率)拡大に向け、アマゾンは配送費用および設備投資額について前年並みとなるよう計画の圧縮に取り組んでいます。第3四半期の従業員数の増加率もわずか5%に抑え込んでおり、マクロ環境さえ好転すれば、マージンは大幅に改善されるでしょう。
当行としては、アマゾンは今後3年にわたって、クラウド事業、広告事業、サードパーティの手数料売上高(2023年の売上高見通しベース)で計690億ドルの利益を稼ぎ出すポテンシャルがあると予測しています」
直近の高値(10月25日終値)から現在(10月31日終値)までに約15%下落、年初来で見ると40%も下落したアマゾン株だが、バンカメ、ゴールドマン・サックス、JPモルガンなど米ウォール街の大手金融各社のアナリストらは「買い」の投資判断を崩さない。
大まかに言えば、アマゾンの業績見通しがパッとしないのは、長引くサプライチェーン問題による供給制約や米連邦準備制度理事会(FRB)の積極利上げ方針など、厳しいマクロ環境にすべての要因があると考えている。
ゴールドマン・サックスのエリック・シェリダンは、アマゾンが今後アウトパフォーマンスに転じる可能性は十分にあると指摘する。
「アマゾンは着実に売上高を積み重ねていくとともにマージンも拡大し、複数年にわたる投資サイクルを通じて利回り/リターンを生み出し続けるでしょう。当行の従来からの予測に変化はありません」
「過去2、3年は一定の価格レンジ内で(なおかつ市場平均をアンダーパフォームして)取引される時期が続きました。
しかし、Eコマース分野のマージンが正常化し(2018〜19年の水準に戻るだけで十分)、2017年にローンチした広告事業が急成長を続け、クラウド事業のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が企業顧客のニーズ変化に対応して(売上高成長と利益確保のバランスを取りつつ)ロングテールの成長機会を活かす余地があることを踏まえれば、アマゾンは今後のアウトパフォーマンスを十分期待できるでしょう」
また、JPモルガンのミスラフ・マテイカはより強気で、アマゾンをオーバーウェイト(ポートフォリオ内の組み入れ比率を多くすること)として、顧客に押し目買いを推奨する。
さらに、米資産管理会社ザックス・インベストメント・マネジメントの顧客ポートフォリオマネージャー、ブライアン・マルベリーは、厳しい経済状況ながら「アマゾンのパフォーマンスは十分信頼に足る」と太鼓判を押す(同社はアマゾン株を保有)。
「今回の決算発表シーズンでは、ほぼすべての企業がドル高の収益にもたらす影響について言及しています。アマゾンはそのインパクトが想定以上だったとしており、為替の影響だけで売上高を9億ドルもしくは4.6%押し下げる効果があったと言います。
今後1、2年の間に金利上昇はピークに達し、その影響で短期的には株価が下落し、ドル高の影響も強まると思われますが、(アマゾン株価への影響は)総じて軟化していく展開を予想しています」
(翻訳・編集:川村力)