マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ。
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マイクロソフトが、Azureクラウド事業からの収益をひた隠しにしていることはよく知られている。前CEOのスティーブ・バルマーでさえ、透明性を高めるよう呼びかけたほどだ。
マイクロソフトはこれまで、Azureの収益を直接報告するのではなく、収益成長率のみを具体的な数値で示してきた。肝心の利益は「インテリジェント・クラウド」という大きな括りに分類され、Windows Serverなどの製品や、コンサルティングサービスと合算されているため内訳は不明だ。
なお、マイクロソフトのインテリジェント・クラウド部門は2021年度に、752億ドル(11兆1296億円、1ドル=148円)の収益を計上している。しかし同部門がカバーする領域は広範にわたるため、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)などクラウド市場の競合他社とAzureの業績を比較することができない(ちなみに、AWSは2021年度に622億ドル〔9兆2005億円〕の収益を上げている)。
だが、今回Insiderが閲覧する機会を得たマイクロソフトの社内プレゼン資料から、マイクロソフトが顧客のクラウド支出に関してどんな指標を重視しており、支出が過去5年間でどの程度増加したかが明らかになった。なお、これらの数字についてマイクロソフトに照会したものの回答は得られなかった。
プレゼン資料の中の「MSUS Ent Azureミックスと成長」と題された表には、「ACR」(Azure consumed revenueの略。顧客のAzure利用による収益)として以下の数字が記されていた。
- 2023年度:159億ドル(2兆3532億円)見込み
- 2022年度:109億ドル(1兆6132億円)
- 2021年度:72億ドル(1兆656億円)
- 2020年度:47億ドル(6956億円)
- 2019年度:29億ドル(4292億円)
「MSUS Ent」が何を意味するかは不明だが、MSUSはマイクロソフトの米国子会社の呼称のことだ。それらの子会社がマイクロソフトの1万1000以上にのぼる官民の米国顧客について販売とサポートを担当している。
マイクロソフトは財務諸表でACRを公表していないが、社内では非常に重要な指標とされており、近年では一部の社員の評価にACRを含めるようになったと、この変更に詳しい人物は話す。
これまで、クラウドにおけるマイクロソフトの業績は、同社が「クラウド収益」と呼ぶ指標から垣間見えるのみだった。この指標もいくつかの収益をひとまとめにしたもので、Azureとビジネス向けOffice 365スイート、LinkedInの収益の一部、同社におけるSalesforceの競合製品Dynamics 365などの収益が合算されたものだった。
マイクロソフトは、2022年6月期決算で「クラウド収益」を912億ドル(13兆4976億円)と報告しているが、この数字に占めるAzureの割合は明らかにしていなかった。
※この記事は2022年11月9日初出です。