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難民を国際人材に変える。「WELgee」渡部カンコロンゴ清花さんの源流と愛読書

集合

「WELgee」の事業について語る渡部カンコロンゴ清花さん(写真左)。

画像:番組よりキャプチャ

ウクライナからの避難民も1800人を超え、わずか0.7%(2021年)という日本の難民認定率の低さが指摘されています。そんな中、NPO法人WELgee(ウェルジー)は、難民申請中の人が日本企業に就職する手助けをする活動をしています。

連載「ミライノツクリテ」でも取材をしたNPO法人「WELgee」代表理事・渡部カンコロンゴ清花さんに、オンライン番組「BEYOND」に登場いただきました。番組の抄録を、一部編集して掲載します。

当日の様子は、YouTubeでご視聴いただけます。

撮影:Business Insider Japan

──WELgeeの事業について教えてください。

渡部:日本へ逃れてきた20〜30代を中心とした難民に対して、これまでの経験やスキル、パッションを生かして人生を再建していくサポート(伴走)をしています。

難民が日本語も分からない中で、就職活動のあり方や企業文化、市場を知るのは相当難しいことです。そこでWELgeeでは、この問題を解消するキャリア教育やメンターシップ、スキル開発などのプログラムを提供しています。

「WELgee」の展開するプログラム

「WELgee」の展開するプログラムについて。

画像:番組よりキャプチャ

──このプログラムは、終了までにどの程度時間がかかりますか?

渡部:平均1〜2年かかります。しかし、人によって人生プランや設計などフェーズが異なるため、5年かかった方もいます。

他には、バイトで現金を稼いだ後にWELgeeのプログラムに戻り、就職先を決めた方もいます。

──就職や在留資格を変更できた方はどの程度いますか?

渡部:WELgeeは6年目を迎え、出会った難民は300人を超えます。その中で就職まで至ったのは20人で、在留資格を変更できたのは5件です。

この20人は、一時的なバイトではなく自分のスキルを活かしたポジションに新規雇用された方です。

「WELgee」の実績

「WELgee」の実績。

画像:番組よりキャプチャ

就労マッチングに留まらない「WELgee」の取り組み

──日本では難民として認定されることが難しいと聞きます。現状を教えていただけますか。

渡部:申請者に対して難民に認定される割合は1%未満です。他の先進国では30〜50%の国もある中で、かなり難しい状況だと考えます。

──この状況をWELgeeはどう考えますか?

渡部:安定した在留資格を得られる別の方法があるのではないかと、設立初期に仮説を立てました。

それが、「技術・人文知識・国際業務」という就労系の在留資格への切り替えです。

「WELgee」の挑戦

難民の在留資格を技術・人文知識・国際業務へ切り替える「WELgee」の挑戦。

画像:番組よりキャプチャ

渡部:「技術・人文知識・国際業務」であれば、企業が難民を雇用することでスポンサーになり、在留資格を変更できると考えました。

WELgeeは単なる就労マッチングだけではなく、こうした法的テーマの確立にもチャレンジしています。

採用実績

「WELgee」の採用実績。

画像:番組よりキャプチャ

──採用事例として、例えば家具メーカーのオカムラでは、どのような方が採用されたんでしょうか?

渡部:アフリカ大陸のある国の出身で、元々ビジネス経験があり、ビジネスディベロップメントや新規ビジネス開拓などの知見がありました。

オカムラでも、そういったスキルや経験を評価されて採用に至っています。

しかし難民には、既に経験やスキルがある方もいれば大学を卒業したばかりの方、紛争によって学問を諦めた方など、さまざまな背景があります。

そういった一人ひとりの強みや個性を引き出していくハンズオンの伴走をWELgeeでは心掛けています。

──難民一人ひとりへの理解が必要ということですね。

渡部:そうですね。WELgeeのメンバーと、この併走についてパズルみたいだと話すことがあります。難民でかわいそうなので雇ってあげる、何でもいいから仕事を提供してあげるということではありません。

強みや個性を見つつ、それが企業の事業戦略やミッションにマッチするか、どう位置付けられるかまでを考えて難民と企業の双方に寄り添う壮大なパズルと考えています。

今につながる気付きを得た、バングラデシュでの経験

──渡部さんは大学時代にバングラデシュを訪れ、NGO駐在員やUNDP(国連開発計画)で2年ほどインターンをされています。そこからWELgeeの設立にはどのようにつながるのでしょうか?

渡部:滞在した場所は、中央政府と先住民族の間で紛争が20年以上続いていた地域でした。

そこで初めて国家が守らない国民に出会ったことが、今につながる大きなことだったと思います。

──今も活きている経験やスキルはありますか?

渡部:気付きが大きかったと思います。

紛争を通して国家が非常に大きな権力を持ち、そこから逃げざるを得ない難民がいることを認識しました。さらに日本へ帰国後、難民として逃げてきた同世代の若者に出会いました。

私の関心事であった、国家に守られない方たちを国際社会でどのように支えていけるかを念頭に、彼らと対話をしました。

──具体的にはどのような話をしましたか?

渡部:彼らから、「祖国を再建したい」「夢を諦めたくなく、日本でもう一度立ち上がりたい」「難民認定されて置いてきた家族を呼び寄せたい」など、さまざまな話を聞きました。

この同世代の難民と語ることに大きなヒントがあると考えました。

彼らと日本社会の一員である私たちがタッグを組めば何かを変えられるのではないかと思い、立ち上げたのが任意団体WELgeeでした。

──そこから今のかたちへ成長したわけですね。

渡部:はい。最初は壮大な仮説でしかなかったため、ここまで来たのは、チームの力があったからだと思います。参画してくれた多くの方の存在が大きいです。

渡部さんを支えた「トランジション」の考え方

トランジション

渡部カンコロンゴ清花さんの源流『トランジション 人生の転機を活かすために』。

作成:Business Insider Japan

──渡部さんは、WELgeeを立ち上げ後、アメリカで自分を見つめ直した期間がありました。その頃に読まれた本に影響を受けているということで、ご紹介いただけますか。

渡部:アメリカへ渡った時期に私のメンターが教えてくれた本です。この本の中で書かれている「トランジション」という概念に救われました。

──トランジションとはどのような意味ですか?

渡部:この言葉は変化や変容と訳されますが、特に外部的な変化のことです。

例えば仕事が変わる、結婚する、引越しをするなどです。このような外部的な変化を経る過程で、自分の内面が変容していくことをトランジションと定義しています。

これが自分にとって響き、生きていく上での考え方の指針の一つになりました。

──どのような点が響いたのでしょうか。

渡部:本の中で「何かの終わりは何かの始まり」という大切な考えが出てきます。

私は30代目前で、今のやり方や考え方では前へ進めないと気付かされました。一旦、終わらせないといけない局面がありました。終わらせた後と、次を始める移行期間の中で、自分をどう捉えていくかのヒントがこの本にはありました。

──どのような方にオススメしたい本ですか?

渡部:ビジネスにすぐ役立つスキルやノウハウの本ではないですが、頭や心の休憩として読んでいただけるとよいと思います。

一つのトランジションを抜けると次のトランジションの始まりポイントにいるんですよね。そのため、20代、30代、40代と、ある節目で繰り返し読むたびに、新しい発見があると思っています。

自分にしか気付けない違和感を大切に


野田と渡部さん

画像:番組よりキャプチャ

──これからの未来をつくっていく方へ向けて、チャレンジをし続けている渡部さんからメッセージをお願いします。

渡部:「自分の中の違和感に気付かないふりをしないこと」です。

違和感に気付くと辛いこともあります。気付かなければ、これまで安定した生活を送れるかもしれません。しかし、自分しか気付けない違和感はあるのです。

気付かないふりをすると、誰も気付かないまま人生が過ぎていきます。自分しか気付けない違和感を大切にしてもらえたらと思います。

また、難民問題は難しいと感じる方も多いと思います。ただ事実として、現在も日本に来ている方はいて、身近になる方も出てくるかもしれません。

WELgeeでの活動を通して、難民から距離を置いたり、寄り添うとしても「受け入れてあげよう」という一方的ではなく、「一緒に生きていこう」と皆さんが思える状況を日本でつくりたいです。

(聞き手・野田翔、構成・紅野一鶴


「BEYOND」とは

毎週水曜日19時から配信予定。ビジネス、テクノロジー、SDGs、働き方……それぞれのテーマで、既成概念にとらわれず新しい未来を作ろうとチャレンジする人にBusiness Insider Japanの記者/編集者がインタビュー。記者との対話を通して、チャレンジの原点、現在の取り組みやつくりたい未来を深堀りします。

アーカイブはYouTubeチャンネルのプレイリストで公開します。


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