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世界5400万人が使うリスキリングサービスは「学ばない日本」をどう見ているのか?Udemy最高学習責任者に直撃

メリッサ・ダイムラー氏

来日し取材に応じるUdemy CLOのメリッサ・ダイムラー氏。

撮影:横山耕太郎

政府の総合経済対策でリスキリングを含む人への投資に「5年で1兆円」を盛り込まれたこともあり、「リスキリング市場」が沸き立っている。

日本では国内外の企業がリスキリングのサービスを提供し競争は激化しているが、グローバル展開するサービスとして存在感を持っているのがアメリカ発のUdemy(ユーデミー)だ。

Udemyは一般の人でもオンライン講座を配信できる教育プラットフォーム。利用者は世界約180カ国に約5400万人おり、2021年にはナスダックに上場し、現在の時価総額は約21億ドルに(約3045億円。1ドル=145円で計算)にのぼる。

日本ではベネッセコーポレーションと独占的事業パートナー連携を結び、2015年から日本語に対応したサービスを開始し、国内の利用者は約100万人という。

そんな世界で戦うリスキリングサービス・Udemyは、日本市場をどうみているのか?

最高人材・組織開発責任者(CLO:Chief Learning Officer)メリッサ・ダイムラー氏の来日に合わせインタビューした。(聞き手・横山耕太郎)

メリッサ・ダイムラー(Melissa Daimler):Adobe、Twitter、WeWorkで学習・組織・人材開発部門の立ち上げを経験。UdemyではCLO(最高人材・組織開発責任者)として、顧客と従業員両方のための学習戦略を策定している。

アメリカ、約5年前から「リスキリング」に注目

ude

Udemyのウェブサイトの「デザイン」のページ。「開発」「IT・ソフトウェア」「自己開発」など多くの動画コースが用意されている。

撮影:横山耕太郎

──最高学習責任者と言われるCLO(チーフ・ラーニング・オフィサー)という役職は、日本ではあまりなじみがありません。アメリカでは一般的な役職なのでしょうか?

アメリカでは珍しくない役職で、ヨーロッパの企業でも普及していると感じます。

企業が学びと組織開発の重要性を認識することで、この役職が必要とされてきたのだと思います。CTO(チーフ・タレント・オフィサー)というのも出てきており、企業が社員の能力をどう伸ばすのか注目していることの現れだと感じています。

──日本では「リスキリング」という言葉が注目されたのは、ここ最近になってのことです。アメリカではどうでしょうか?

少なくとも5年ほど前から、リスキル(リスキリング)という言葉が言われていました。ただアメリカでも、特にこの2年くらいで、よく言われるようになりました。

アメリカでは、ほぼ同義の意味で「アップスキル」という言葉もよく使われます。

アップスキルは今あるスキルを伸ばしたり、新たなスキルを加えたりする意味です。リスキリングは別の役職に就くために全く新しいスキルを獲得する、という意味で使い分けることもあります。

リスキリングという概念も進化してきており、学ぶという行為だけでなく、どんなスキルを身につけるのか、というよりも「スキルを中核とした学び」のフェーズに移ってきています。

背景には「人材の争奪戦」

メリッサ・ダイムラー氏

メリッサ氏はAdobe、TwitterなどでCLOを務めたキャリアを持つ。

撮影:横山耕太郎

──なぜ外部からスキルを持った人材を採用するのではなく、社員のスキルを伸ばすことに注目しているのでしょうか?

イノベーションのペースが早く、必要なスキルがすぐに変わってしまうことがあると思います。

なので、すでに必要なスキルを持っている人材を獲得するというより、スキルをどう身につけてもらうかに注目しています。

また、アメリカでは人材の争奪戦が起きてきることも背景にあります。会社側は新しいスキルセットが必要になった時、外から採用するよりも、まずは社内の人材がいるかどうかを探すケースが増えているんです。

企業はたとえ100%のスキルがなくても、「7割くらいスキルがあれば、学びによって3割を埋めよう」と考えるようになってきた。

人材を雇用する場合でも「必要なスキルを100%持っていなくても、カルチャーフィットするならば採用して、リスキリングによってポストにふさわしい人を育てる」という発想があると思います。

(アメリカのコンサルティング企業の)ブーズ・アレン・ハミルトンでは、新たに社内で「5000人のデータサイエンティスト」を育成するとしています。

ブーズ・アレン・ハミルトンのウェブサイト。

5000人のデータサイエンティスト育成を目指すブーズ・アレン・ハミルトン。ウェブサイトを撮影。

撮影:横山耕太郎

働く側も「学べる会社」を選んでいる

──初めてデータサイエンスを学んで、仕事に活かせるレベルになるのでしょうか?

先ほど紹介したブーズ・アレン・ハミルトンでは、これまでに2000人以上がデータサイエンスを学び、9割以上が修了時に高いスキルを身につけるなど成果を上げています。

ある程度はデータを扱ったことのある社員がリスキリング・プログラムに手を挙げて参加しているはずで、たとえば私のようなキャリアの人にいきなり「データサイエンティストになれ」ということはないでしょう。

ただし、データサイエンティストに限らず、全く知識を持ってなかった人でも、Udemyのコースを受講してエンジニア、プログラマーになったという人はたくさんいます。

企業による人材の争奪戦になっていると言いましたが、逆に言うと働く側も「自分にとって一番良い企業どこだろう」と常に目を光らせています。

給料やカルチャーフィットはもちろん、成長する機会があるかどうかで働く会社を選んでいます。

いま離職理由としてよく挙がるのが、「この会社では学べない、自分が成長できない」という理由です。今いる社員をつなぎ留めるという意味でも、リスキリングが注目されていると言えます。

「学ばない日本」市場に可能性はあるのか?

学ぶ人の割合

職場以外で学んでいない人の割合を見ると、日本はAPACの中で特出して高いことが分かる。

出典:パーソル総合研究所「APAC就業実態・成長意識調査(2019年)」

──パーソル総研がAPACの14カ国を対象に実施した調査(2019年2月〜3月に実施し各国1000人が回答)では、日本人では勤務先以外で勉強をしていない人が46%を超え他国よりも高いことが分かっています。「学ばない日本人」の原因はどこにあると思いますか?

組織が直面している障害として、「大学を出たらもう勉強はいらない」、「学びは楽しくない」、「学んでもメリットがない」という意識があるのだと思います。

一方で、「学ばないといけない」とも感じている人も多いと思います。これまでのマインドを変え、「学ぶことは仕事の一部」「リスキリングしないと遅れてしまう」と考えるようになってほしい。

Udemyが日本でサービスを始めてから7年が経ちますが、学びへの勢いがついてきたと思っています。

日本では政府を挙げて、リスキリングに取り組むとしています。アメリカの場合には、社員など学ぶ側がリスキリングを引ってきましたが、日本の場合は政府のバックアップもあり、企業側が学習戦略に注目するようになるのではないでしょうか。

特に現在は仕事そのものに求められているスキルの変化スピードが上がっています。その意味でも、日本はアメリカよりもリスキリングが普及するのに時間がかからないと思っています。

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