メルセデス・ベンツ「EQS 580」(上)と、ポルシェ「タイカン ターボS クロスツーリスモ」。
Tim Levin/Insider
- 高価な4ドア電気自動車を購入したいのなら、選択肢はテスラだけではない。
- ポルシェはタイカン(8万6700ドルから)、メルセデスはEQS(10万2000ドルから)を販売している。
- 両方のフル装備バージョンに試乗して、その性能を比較した。
ラグジュアリー感のある電気自動車を買いたいが、ポルシェの「タイカン(Taycan)」と、メルセデス・ベンツの「EQS」どちらにしようか決めかねている――読者の中にそんな人はいるだろうか。
あなたがもしそうなら、そんな贅沢な悩みを抱えるほどのお金があるわけだから、まずはそれだけで祝福されるべきだろう。
この2つのドイツ車に試乗した筆者の感想を述べるなら、ゼロエミッションで贅沢な移動をしたいのなら、どちらも素晴らしい選択肢だということだ。ただし、それぞれが違ったタイプの長所を備えている。
ポルシェ「タイカン ターボS クロスツーリスモ」2021年モデル。
Tim Levin/Insider
この試乗比較は、完全に同格な条件で行われたわけではない。ポルシェから貸し出された20万9000ドルの「タイカン ターボS クロスツーリスモ(Taycan Turbo S Cross Turismo)」は、現在売り出されているタイカンの中では最高のパフォーマンスを誇るモデルで、ハッチバックタイプだ。一方、メルセデス・ベンツから貸し出された14万1000ドルの「EQS 580」も最高グレードのモデルだ。しかしこのシリーズには、さらにスピードを追求した「AMG EQS」モデルがあるため、スポーティなタイカンと比べるなら、こちらの方がより適切だったかもしれない。
それでも、この2台に試乗するだけで、両社のモデルそれぞれの強みやキャラクターの違いについて、十分に理解することができた。
ポルシェとベンツ、それぞれの価格は?
メルセデス・ベンツ「EQS 580」2022年モデル。
Tim Levin/Insider
タイカンは8万6700ドルから、EQSは10万2000ドル前後の価格設定だ。
※日本ではタイカンは1226万円から、EQSは1578万円から。
航続距離は?
ポルシェ「タイカン ターボS クロスツーリスモ」2021年モデル。
Tim Levin/Insider
ベースモデルの「EQS 450+」では、メルセデスの航続距離はアメリカ環境保護庁(EPA)の算定で350マイル(約563km)と、かなりの数字をたたき出している。四輪駆動の「EQS 580」でも、航続距離は340マイル(約547km)だ。このセダンの丸っこいフォルムが気に入らない、という人もいるかもしれないが、空気抵抗を軽減し、航続距離を伸ばす効果があるのは確かだ。
一方、タイカンの航続距離はスペック上はそこそこといったところだ。試乗した2021年モデルではわずか202マイル(325km)しかない(EPAによると、2023年モデルのタイカンでは、最長で246マイル=約396kmまで伸びたという)。
だが、EPAの数字は必ずしも実態を反映しているとは言えない。筆者が試乗したタイカンでは、航続距離は250マイル(約402km)に迫っていた。また、自動車情報サイト「エドマンズ(Edmunds)」に掲載された、2020年モデルのタイカンに試乗したレビューでは、1回の充電で323マイル(約520km)走行可能だったとしている。さらに同サイトによると、EQS 450+では422マイル(約679km)をたたき出している。
ハンドルを握った感想は?
メルセデス・ベンツ「EQS 580」2022年モデル。
Tim Levin/Insider
自分で運転するなら、タイカンの方が楽しいのは間違いない。750馬力のターボSは、時速60マイル(約96km/h)までをわずか2.7秒で、ロケットのように加速する。思わず息をのみ、頭がついて行けなくなるほど速い。
ステアリングは正確性が高く、操縦性能も非の打ちどころがない。ただしそれと引き換えに、路面の衝撃はあまり吸収されず、乗り心地はやや犠牲になっている。
一方のEQSは、路面をすべるようにスムーズに、静かに走行し、ポルシェとは違った形で乗る者をもてなしてくれる。試乗したEQS 580は、タイカンのように荒々しい加速を見せることはなかったが、それでもかなり速かった。
充電時間は?
ポルシェ「タイカン ターボS クロスツーリスモ」2021年モデル。
Tim Levin/Insider
タイカンは、現在市場に出ている電気自動車の中でもトップクラスに速い充電時間を誇る。270キロワット以上の高速充電ステーションに接続すれば、タイカンは22.5分で5%から80%まで充電できる。
EQSは、200キロワットまでの充電ステーションに対応し、10%から80%まで充電するのに31分を要するという。
しかし、EQSの方が搭載しているバッテリーの容量が大きく、航続距離も長いため、ある期間内の走行距離あたりで見た充電時間はほぼ同じだ。
インテリアの豪華さは?
メルセデス・ベンツ「EQS 580」2022年モデル。
Tim Levin/Insider
EQSに乗り込むと、レザーや高級素材をふんだんに用いた、豪華でゆとりあるインテリアに衝撃を受けるだろう。マッサージ機能付きのシートに加え、ハイテクをこよなく愛するドライバー向けには、56インチの「ハイパースクリーン」などもオプションで用意されている。
ポルシェ「タイカン ターボS クロスツーリスモ」2021年モデル。
Tim Levin/Insider
ポルシェも豪華なオプションには事欠かないが、こちらはよりスポーティな雰囲気をかもし出している。運転席のシートはタイトなつくりで、道路を曲がるたびにドライバーの体をしっかりホールドし、ずれないようにしてくれるが、乗り込む時には、シートの縁をまたいで体を収める必要がある。
また、EQSの後部座席がゆったりとした空間になっていると比べると、タイカンの後部座席は、やや狭い。筆者が試乗したタイカンには、いくつかタッチスクリーンが装備されていたが、EQSの方が使いやすいという感想を持った。
結論
ポルシェ「タイカン ターボS クロスツーリスモ」2021年モデル
Tim Levin/Insider
タイカン ターボSは、あり得ないほどの速さと一級品のハンドリングで強烈な印象を残した。A地点からB地点に向かう移動の間も楽しみたいと思う人向けの、まさにドライバーズ・カーだ。EQSも非常に優れているが、こちらはもっぱら、乗る者を静かな「動くビジネスラウンジ」に包み込むことを狙いとしている。
結論を簡潔に述べるなら、ポルシェは自分が運転するためのクルマ。メルセデスは、運転は誰かに任せて快適に移動するためのクルマだ。
(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)