2022年10月に初のスマートウォッチ「Pixel Watch」(上写真)を市場投入したグーグルが、若年層向けの市場獲得も狙っている模様だ。
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ウェアラブル端末を所有する子供たちが増える中、グーグル(Google)はこの層をユーザーに取り込もうと、傘下のFitbit(フィットビット)部門でプレティーン(8〜12歳頃の子供)向けの端末を開発している模様だ。
内情に詳しいグーグル従業員3人への取材から判明した。3人はメディアへの情報提供権限を持たないため、Insiderはその身元を確認済みだが、本稿ではいずれも匿名とする。
社内コードネームは「プロジェクト・イレブン(Project Eleven)」。
開発中の端末は、年長の子供たちがスマートフォンやソーシャルメディアの健全な利活用をサポートする目的で設計が進められており、保護者が子供と連絡を取ったり、子供の居場所を把握したりする安全確保機能が盛り込まれるという。
Insiderが確認した内部資料によれば、同社バイスプレジデント(特別プロジェクト担当)のアニール・サバルワル率いるFitbit部門(オーストラリア拠点)がプロジェクトをけん引する。
ウェアラブル端末の発売予定は2024年中とされているが、まだ開発途上のため計画変更の可能性があるという。
拡大する若年層向け市場
グーグルはウェアラブル端末分野で他社に大きく遅れをとっている。
そんな中で、Insiderは10月13日付の記事でグーグルの新たな動きを報じた。
競合するアップル(Apple)に追いつこうと、グーグルは10月に市場投入したばかりのスマートウォッチ「Pixel Watch(ピクセルウォッチ)」の次世代モデル開発に資金と人材を集中させる模様だ。
IT・通信分野専門の米調査会社IDCによれば、ウェアラブル端末出荷台数に占めるアップルのシェアは2021年時点で約30%に達する。
しかも、アップルの優位性は若者や子供たちにまで及ぶ。
米ニューヨーク・タイムズ(9月1日付)は、早いケースでは5歳の子供にApple Watch(アップルウォッチ)を買い与える親が全米で増えている昨今の状況を報じている。いずれスマートフォンにステップアップする足がかりになるというのがその主な理由だ。
実際、米投資銀行パイパー・サンドラー(Piper Sandler)が10代の若者を対象に行った最新調査(8月12日〜9月23日、平均年齢15.8歳、サンプル数1万4500人)では、87%がiPhoneを、31%がApple Watchを持っていると回答している。
そうした現状を踏まえると、グーグルの「プロジェクト・イレブン」から出てくる新たなウェアラブル端末は、放っておけばアップル製品の支持者に育つであろう少年少女たちにアピールし、拡大する若年層向け市場に食い込む可能性を秘めていると言える。
Fitbit部門の従業員に近い取材源の1人も、「ティーン市場に食い込みたいという話をよく聞きます」と語る。
グーグルの広報担当にプロジェクトとその狙いについてコメントを求めたが拒否された。
新たな端末の試行錯誤
内情に詳しい複数の従業員によれば、「プロジェクト・イレブン」開発チームはこれまで、情報を表示するディスプレイのあるバージョンとないバージョンの両方を試したり、サブスクリプションの特典として月替りで新しいバンドを送るアイデアを検討したり、実験を重ねてきた。
同端末にはGPS(全地球測位システム)とデータ通信機能が搭載され、スマートフォンなしでもユーザーと連絡を取ったり居場所を確認したりできるようになる可能性が高い。
その点は、Fitbitの子供向け(対象年齢6〜12歳)アクティビティトラッカー「Ace 3(エーススリー)」からの改善と言えるだろう。
保護者目線で考えた場合、現行のAce 3だと、接続するアプリを通じて我が子の基本的な睡眠パターンとアクティビティを確認できるものの、物理的な居場所を特定できないのが残念なところだ。
「プロジェクト・イレブン」で開発中の端末には、他のウェアラブル製品と同様、運動を促して健康の増進を図る性質がある。
例えば、前出のAce 3には「運動リマインダー」機能が付いていて、子供たちが長時間(保護者がアプリで設定可能)動かずにいると、端末を通じて運動を促すようになっている。
なお、情報提供してくれた従業員たちによれば、Fitbitはかつて子供や高齢者向けのスマートウォッチ開発に取り組んでいたものの、グーグル傘下入り後に中止に追い込まれた。データ通信機能とカメラも搭載する計画だったが、技術的な課題や物流上の問題などに阻まれ思うように進んでいなかったようだ。
(翻訳・編集:川村力)