人員削減に踏み切ると見られているメタ。ザッカーバーグ肝煎りのメタバース部門も無傷ではいられないようだ。
Facebook/Meta
メタ(Meta)が人員削減の準備を進めている。成長の鈍化と株主の反発を受けたもので、ほぼすべての部門が人員削減の対象になるとみられている。その影響は同社のメタバース部門「リアリティ・ラボ(Reality Labs)」にも及びそうだ。
リアリティ・ラボはAR/VRのプロダクトであるOculusヘッドセットなどのハードウェアやアバターなど、メタバースのプロジェクトを担う部門だが、メタの関係者2人がInsiderに明かしたところでは、同部門のスタッフの一部も解雇の対象になっているという。
マーク・ザッカーバーグCEOは2021年に社名をフェイスブックからメタへと変更し、メタバース構築への大規模な投資を発表して同社をピボットさせたが、これによって非常にコストがかさみ、社内は混乱を来し、開発の進捗もはかばかしくないという状態に陥っている。
そのため従業員は数カ月前から広範にわたる解雇が起こるだろうと予期してきた。11月9日(水)には同社が人員削減を行うだろうとウォール・ストリート・ジャーナルも報じている。
Insiderの既報どおり、メタ全体での人員削減は10%程度になる見込みだ。ただし特定の部門についてはさらに思い切った削減が行われる可能性もある。
この件に詳しい人物の話や、匿名の企業情報プラットフォームFishbowlの社員専用グループに投稿された内容に基づくと、解雇される従業員には11月9日の朝一番に電子メールで通知されることになりそうだ。
Fishbowlの投稿によると、Facebookは依然としてメタ最大のユーザー基盤を持つ収益の柱ではあるものの今回の人員削減により再編成される見込みで、マーケティング、パートナーシップ、人事などを含むビジネス部門は「より深刻な影響を受けるだろう」という。同じ投稿には「場合によっては部門全体が優先度を下げられるかもしれない」とも書かれている。
レイオフの具体的な計画については、11月8日(火)に経営陣から取締役に報告されたという。
現在8万7000人以上いる従業員の大部分を占めるのがエンジニアリング部門で、過去2年間で人員が激増したこともあり、今回の人員削減の影響は特に大きいだろう、とInsiderの取材に匿名で応じた関係者2人は予想する。なお、メタの広報担当者にも問い合わせたものの回答は得られなかった。
立て直しの具体策は示されず
ある関係者は、リアリティ・ラボは「マーク(ザッカーバーグ)にとっては我が子のようなもの」なので他の部門に比べれば削減の影響は少ないのではないかと見る。だがメタバース部門はいまも巨額の資金を食いつぶし続けており、同社の直近の決算発表後の投資家や金融界は極めて冷ややかなものだった。
10月26日、ザッカーバーグがインターネットと自社にとっての「未来」と見なすメタバース構築計画を強化すると発表したことで、同社の株価は急落した。メタは今年度すでにリアリティ・ラボで約94億ドル(約1兆3600億円、1ドル=145円換算)以上の損失を出しており、第3四半期だけで36億ドル(約5200億円)近くを計上していることを明らかにした。
リアイティ・ラボは2021年通期で約100億ドル(約1兆4500億円)の損失を計上しているが、それでもメタは同部門に投資を続けると述べている。
第3四半期決算の投資家向け説明会の翌日、ザッカーバーグは毎週恒例となっている社内Q&Aを開催し、事前に準備されていた社員からの質問に回答したと、会議を聞いた関係者は明かす。株価が100ドルを割り込んだことについて聞かれたザッカーバーグは、「投資家はもっと行動を求めている」ことを認めたものの、その行動とは具体的に何を指すのかという点については言及がなかったという。
ザッカーバーグの発言を聞いても従業員の間に安堵が広がることはなかったと、ある関係者は語る。メタでは経営陣が「強度を高める」ようにとの指示を新たに発したこともあり、同社で最近実施された業績評価では、一部の従業員に提示された「任意離職契約」について管理職のもとに質問が多数寄せられた。関係者の話では、この契約を結んだ従業員はレイオフ措置の前に退職金を受け取ったうえで退職できるのだという。
解雇を視野に入れた組織再編が広範にわたって進行する中、メタの従業員の大多数は、管理職から「200%の力を発揮しろ」と檄を飛ばされても様子見を決め込んでいる。
2008年に起きたリーマンショック後の不況、さらにさかのぼって2000年のドットコム・クラッシュを経験しているベテラン社員なら耐性がついているだろうが、ここ10年の強気相場しか知らない若手社員は差し迫ったレイオフにストレスを感じ、自分の行く先について「ちょっとパニックになっている」と同社の従業員は明かし、「まったくもって最悪ですよ」とこぼした。
(翻訳・常盤亜由子)