ファッションEC「ZOZOTOWN」を運営するZOZOが、同社初となる常設の「リアル店舗」を12月16日にオープンする。東京・表参道ヒルズに隣接する一等地で提供するのは服ではなく、AIとスタイリストによる「超パーソナルスタイリングサービス」だ。しかも「タダ」。
洋服通販のネックである「サイズ」の不安解消を目指したZOZOSUIT(ゾゾスーツ)の発表から約5年。もう一歩先の「似合う」を目指し、「採算度外視」とも言える挑戦が始まる。
貸切でスタイリングを提供
店舗とファッションテックの構想について語る、ZOZOの澤田宏太郎社長。
撮影:竹下郁子
2022年3月期連結決算で売上高・営業利益ともに過去最高を記録したZOZOが、新たなサービスを発表した。その名も「niaulab by ZOZO(ニアウラボ)」。
同社初となる常設店舗にはZOZOTOWNで取り扱うブランドの商品700点以上が用意され、完全予約制で、客1人につき2時間以上を貸切で利用できる。
客は事前に回答したファッションの悩みや、なりたいスタイリングのイメージなどを記入するアンケートに回答。その回答に基づき、ZOZOの独自AIとスタイリストが、本人に「似合う」であろうスタイリングを3パターン提案する。
最終的にその中から1着を選んで着用し、プロによるヘアメイク、写真撮影を行うまでがサービスだ。
店舗で買い物はできないが、使用した商品URLは当日共有するため、気に入ればZOZOTOWNでスマートに購入できる。
リアル店舗とは違い、「周りの目」を気にしたり、「似合ってないのに売りたいから勧めているのでは?」と訝る必要も必要ない。
ZOZOTOWNのレコメンド向上へ
ZOZOが公開した店舗のイメージ画像。
撮影:竹下郁子
サービスは全て無料。1日4〜5人からスタートし、年間1000人程度の利用者を見込む。
ZOZOがこの試みを始めたのは、ZOZOTOWNユーザー、特にZ世代が「どのようなファッションが似合うか分からない」という悩みを抱えていることが背景にある。
11月9日にZOZOが開いた会見で澤田宏太郎社長は、
「これは一言でいうと『超パーソナルスタイリングサービス』。単純に服を売るのではなく、似合うものを届ける。そこにビジネスの価値があると判断しました」(澤田社長)
と語った。店舗で得た知見をZOZOTOWNや同社が運営するファッションコーディネートアプリ「WEAR」のレコメンドの質の向上に活かしていくという。
「店舗単体でみるとそれなりにコストをかけるものになります。現状はAIとスタイリストの掛け算ですが、これをどこまで機械化、自動化していけるかが鍵です。
私たちは成長の源泉に『ファッションテック』を据えて成長してきました。最終的にはZOZOTOWNやWEARで全力で似合うを届けるパーソナルサービスを導入したいという構想を持っています。
ラボという通り、今は研究段階です。パーソナルサービスは対面だからこそできると判断したら店舗を増やしていくし、完全に機械に任せることができるなら海外での事業展開も考えられます」(澤田社長)
店舗のオープン、サービス利用希望者の応募開始は12月16日からだ。
(文・竹下郁子)