※本記事は、2022年6月2日に掲載した記事の再掲です。
トルコを拠点とするバイカル・テクノロジーズの最高技術責任者を務めるセルチュク・バイラクタル。彼が設計した強力なドローン「バイラクタルTB2」を用いて、ウクライナ軍はロシアの戦車やミサイル発射システムを破壊した。
Anadolu Agency/Getty Images
- 「全世界」が軍用ドローンの「バイラクタルTB2」を購入したがっていると、その設計者がロイターに語っている。
- レーザー誘導ミサイルを発射できる「バイラクタルTB2」を開発したのはトルコのバイカル・テクノロジーズだ。
- ウクライナ軍は、このドローンを用いてロシアの地上軍を撃退している。
2022年2月にロシアのウクライナへの侵攻が始まって以来、トルコ製の強力な軍用ドローンによって、ウクライナ軍はロシアの地上軍を何度も撃退してきた。
ウクライナ軍の成功に触発されて、世界中の軍隊がこの壊滅的なパワーを持つ軍用ドローン「バイラクタルTB2」を手に入れようとしており、「全世界が顧客だ」と、その開発者であるセルチュク・バイラクタル(Selcuk Bayraktar)がロイター通信に語っている。
また、最近アゼルバイジャンで行われた展示会では、「TB2は、最新鋭の防空システム、高度なミサイル発射システム、装甲車両を破壊するという、想定された役割を果たしている」とも述べている。
彼の父親であるオズデミル・バイラクタル(Ozdemir Bayraktar)は、1980年代にイスタンブールでバイカル・テクノロジーズ(Baykar Technologies)を設立し、2021年に72歳で亡くなった。同社の最高技術責任者を務めるのがセルチュク・バイラクタルであり、彼は、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdoğan)大統領の娘婿でもある。
ロシア軍の攻撃に対し、ウクライナ軍はTB2を用いて戦車や9K37ブーク地対空ミサイル発射システムなどのロシア兵器を破壊してきた。TB2は、高度7600メートルの上空を飛び、レーザー誘導ロケット弾を敵に浴びせかけることができる。
ウクライナの高官で、ヴォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領の顧問を務めるミハイル・ポドリアク(Mikhail Podolyak)は、TB2を「最高の兵器」だと3月にツイートしている。彼は「ロシアの戦車をそつなく破壊している」と述べ、「TB2はどんなタスクでも、気付かれないように、ぞっとするほど、壊滅的にこなしていく。戦車は燃え続けるだろう」と付け加えた。
トルコ製の軍用ドローン「バイラクタルTB2」は、ウクライナ軍がロシア軍を撃退するための重要な兵器となっている。
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バイラクタルは、ウクライナの紛争でTB2が広く使用されていることに満足感を示し、「これは違法な侵略であり、(TB2は)ウクライナの名誉ある人々が国を守る手助けをしているのだ」とロイターに語っている。
ウクライナの紛争で戦果を挙げたTB2は、各国から引き合いを受けるようになった。これまでにシリア、リビア、イラクなど他の紛争地域でもTB2は使用されており、トルコが「防衛装備品の輸出を推進」するにあたっての基礎を固める役割を果たしたと、ロイター通信が報じている。
5月初旬、リトアニアでは、ウクライナ軍に供与するTB2を購入するために、自国民から支援金を集める活動が行われた。そしてわずか3日間で500万ユーロ(約7億円)の寄付が集まった。一般のリトアニア人からの寄付額の多くは10ユーロから500ユーロだったと、リトアニア政府はツイートしている。
ドローンタクシーで都市部の交通に「革命」を起こす
バイラクタルは、先進的な兵器だけでなく、インナーシティ(大都市周辺の低所得地域)の交通を補強するための「ドローンタクシー」の開発にも取り組んでいるとロイターに語っている。
「長期的な観点から、我々はドローンタクシーに取り組んでいる」と彼は言う。
「そのためには、より高度な自律化技術(基本的にはAI)を開発する必要がある。これは都市における人々の移動手段に革命をもたらすだろう」
しかし、ウクライナでTB2が使用されたことで、バイカル・テクノロジーズが攻撃型兵器の技術で世界的に知られるようになったことは間違いない。
同社では現在、TB2の次世代機となるTB3を開発中だという。これは翼が折り畳み式で「滑走路が短い空母」でも運用できるとロイター通信は報じている。
同社が開発したTB2以外のドローンも、目覚ましい成果を上げている。
例えば、無人戦闘機のアキンチ(Akinci)は、TB2よりも長く広いボディを持つドローンで、このほどトルコの最西端からアゼルバイジャンまで「目視困難」な飛行を行ったと、同社はニュースリリースで述べている。その飛行時間は5時間で、3カ国を横断し1900キロメートル以上を飛行した。同社によるとこれは「トルコ航空史上初」のことだという。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)