進行役を務めるNotion Labs Japan 営業統括の生垣侑依氏(左)、ゼネラルマネージャーの西 勝清氏(中央)、Notion Labs 共同創業者兼CEOのアイバン・ザオ氏。(右)
撮影:太田百合子
ドキュメンテーションサービス「Notion(ノーション)」が、11月9日に日本語版を正式リリースした。
これは同日開催されたイベント「Notion Japan 発表 イベント for チーム」で発表されたものだ。あわせて日本市場における事業展開を本格化することも表明した。
Notion Labs 共同創業者兼CEOのIvan Zhao(アイバン・ザオ)氏、Notion Labs Japan ゼネラルマネージャーの西勝清氏はBusiness Insider Japanのインタビューに応じた。
Notionの経営トップが見据える日本でのビジネスの進捗や、上場も含めた起業家としての「ゴール」のあり方を直撃した。
Business Insider Japanのインタビューに応えるアイバン・ザオCEO。
撮影:太田百合子
── 2021年の日本語ベータ版提供以降、日本での手応えについて聞かせてください。
ザオ氏:(ユーザー数は)かなり増えています。特にエンタープライズが顕著に変わってきている(※具体的な数字は後述)。
日本語版を投入したことで、日本の市場に対して我々が真剣だということ、スタートアップだけではなく、ビジネスユーザーにもフォーカスしていることが、伝わったのだと思います。
西氏:ユーザーの裾野が広がったというのが、一番感じるところです。
その結果として、大企業のDXやイノベーションを推進する部署からの問い合わせが増えています。
ハイブリッドワークに伴って、新しい働き方をどう考えるのかといったところで、需要が増えているのだと思います。
── 日本ではコミュニティーが活発で、それがセールスを牽引しているように見えます。グローバルでも同じなのでしょうか?
ザオ氏:グローバルでも同じですが、コミュニティーはいずれも自然発生的に立ち上がってきたものです。
例えば、ミートアップのようなイベントにしても、みなさん「Notionが好き」という思いで集まっていただいている。良い意味で我々にはコントロールができません。
我々にできるのはその活動をサポートすること。今は3人のメンバーが専任で、イベント用にノベルティーを送付するといった仕事をしています。
Notionは熱心なファンの集まりに支えられている。
出典:Notion
── Notionのどういう点が熱心なユーザーを惹き付けているのだと思いますか?
ザオ氏:我々のミッションは、ツールメーキングをユビキタスなものにすること。Notionではプログラマーではない人も、レゴのようにパーツを組み合わせることで、自分の使いたいツールをつくれます。
クリエイティビティーを発揮して良いツールがつくれたら、それをほかの人にもシェアしたくなるし、ヒントになることを教えたいとも思う。そうやって広がってきているのだと思います。
ザオ氏は何度か「レゴのように」と、機能やツールを組み合わせることを表現している。
出典:Notion
── 日本でも「Notionチャンピオンズコミュニティ」が始動します。これはどのようなものですか? また、日本での活動に期待することは?
ザオ氏:期待するのはもちろん、チャンピオン(組織内にいるNotionに詳しいユーザー)のみなさんが、所属する組織にNotionを持ち込んでくれることです。
実際に個人でNotionを使っていたユーザーが価値を見い出してくれて、「これを使えば自分の仕事やチーム、会社の問題を解決できる」と、組織に持ち込んで広がっていくことが多いんです。
私たちはそのようなチャンピオンをできるだけ増やすことで、Notionのビジネスを成長させたいと思っています。
そのためには、チャンピオンのためのベスト・プラクティスとして、彼らに互いに語り合ってもらうことが大切だと考えています。
西氏:「ほかの会社ではどうしているのか」という質問をよくいただきます。
それを我々が説明するより、今日のイベントで登壇いただいた4社のように、実際に導入している組織のチャンピオンから聞いてもらうことができれば、その方が説得力がありますよね。そういう場になればと思っています。
Microsoft Loopは「うれしい競合」
──「Microsoft Loop」など他のドキュメンテーションツールに対する優位点をどう考えていますか?
ザオ氏:Notionはレゴのようなもので、何にでもなり得る分だけたくさんの競争相手がいます。
中でもMicrosoft Loopは、我々にとってうれしい競争相手です。比較されるということは、この方向性が間違っていないということだからです。
その上でスタートアップである我々の強味は、やはりスピードだと思います。イノベーションを起こすことができるし、そうしなければならないと思っています。
Microsoft Loopはすでにマイクロソフトの製品を持っている人がたくさんいるので、それを活用できるのはユーザーにとって便利だし、コストを削減できるかもしれません。
でも、生産性という面ではどうなのか。自由度の高さ、柔軟性ではどうでしょう。
多くの企業が生産性を重視しているのは、それが最終的にはコスト削減につながるからです。Notionは自由度が高く柔軟なので、生産性を高められるしコストも削減できます。
上場かバイアウトか。Notionにとってのゴールは?
── Notionの次のステップとして、考えていることがあれば教えてください。
ザオ氏:これから数週間とか数カ月のうちに、たぶん目にすることになると思いますが、レゴのように新しいブロックを追加していくことを考えています。
追加して以前のすべてのブロックと連動させることはかんたんなことではありません。
でも、組み合わせることでツールキットやラベルサーバー、独自のアプリをつくれます。
これからもっと多くのアプリケーションが選択肢に入ってくる。もっといろいろなものが、つくれるようになるでしょう。
アイバン・ザオCEO(左)とNotion Japanの西ゼネラルマネージャー(右)。
撮影:太田百合子
── 最後に少し踏み込んだ質問をさせてください。最近ではFigmaがAdobeに買収されるという、スタートアップ業界に衝撃のニュースがありました。上場、事業売却など、Notionにとっての「ゴール」はどう考えますか。
ザオ氏:私は10年前からこのプロジェクトに取り組んでいますが、ツールメーキングをユビキタスなものにするという使命には、常に忠実でありたいと思ってきました。
これは本当に長い目標で、実現するまでにはおそらくあと10年、いや20年はかかるでしょう。だから、長い時間をかけてやっていくつもりです。
日本の大企業での導入が進むNotion
Notionの日本語版がベータ版から正式版に移行した。
出典:Notion
今回のイベント「Notion Japan 発表 イベント for チーム」で語られた内容と現在のNotionの状況を最後にまとめておく。
Notionは2021年10月から日本語ベータ版を展開。新しいツールに感度の高いスタートアップに加え、エンタープライズでも導入が進んでいる。
日本語化から約1年間で、チームで利用するワークスペースの新規開設数は前年比2.7倍、「エンタープライズプラン」は前年比2.3倍に拡大しているという。
イベントでは実際にNotionを導入するトヨタ自動車 未来創生センター、スマートニュース、SOMPO HDのデジタル事業子会社SOMPO Light Vortex、LayerXの4社の担当者が登壇し、導入の経緯や活用方法について紹介した。
Notionを導入済みの企業の一覧。大手も名を連ねている。
出典:Notion
キーノートでは、ザオ氏と西氏がトークセッションを展開。
日本語版の正式リリースのほか、ヘルプセンターの完全日本語化や、企業の利活用をサポートする担当者の採用、ITコンサルティング会社との提携など、日本でのサポート体制を強化する取り組みが紹介された。
Notionの「詳しい人」同士のNotionチャンピオンズコミュニティが日本でも始まる。
出典:Notion
また、組織内でNotionの導入、運用、サポートに取り組む担当者が、組織の垣根を越えてつながれる「Notionチャンピオンズコミュニティ」が、日本でも開始されることもアナウンスしている。