TikTokを運営するバイトダンスは、2022年9月に音声コマース分野を含む商標出願書類をアメリカで提出した。
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TikTokが音声を使ったショッピングを可能にする新技術のリリースを検討していることが、親会社のバイトダンス(ByteDance)が2022年9月にアメリカで提出した商標登録の出願書類から明らかになった。
今回バイトダンスは「Fulfillment by TikTok Shop(TikTokショップによるフルフィルメント)」と題する商標登録を出願。その中心となるのはオンラインショップのフルフィルメント(決済処理や発送のための梱包、倉庫保管サービス、返品処理といった一連の業務)に関連する商品・サービスだ。
しかし今回の出願には、音声によるオンラインショッピングや金融取引を可能にする付加的なサービスも含まれる。出願書類で触れられている分野は幅広く、電灯やテレビ、エアコンを遠隔操作したり、ニュース、天気予報、オンライン百科事典の情報を音声で検索したりする技術への言及もある。
こうした応用例の多くは、オンラインショップでのフルフィルメントとはほぼ無関係にも思えるが、企業が商標出願をする際には、商品やサービスに幅広く網をかけるのはよくあることだと、Insiderが取材した商標弁理士は語る。
「今回のような大企業の案件では、商標出願の際に数撃ちゃ当たる的にいろいろ詰め込むのはよくあることです」と、ガーベン法律事務所(Gerben Law Firm)のジョシュ・ガーベンは言う。彼は2022年9月、この出願についてツイートしている。「関係がないこともたくさん含まれているかもしれない。会社の担当者たちが会議の席でしゃべっているのを、弁理士が耳にして書き入れたという程度のものもたくさんあるだろうから」
TikTokが商品やサービスについて商標登録を出願するのは勝手だが、登録されるためには、商品やサービスを実際に提供しなければならないとガーベンは言う。
アップルのSiri、アマゾンのAlexa、Google Assistantなど、音声アシスタントを搭載した家庭用機器の増加に伴い、音声コマースという分野が注目されつつある。だが、多くの消費者はショッピングの手段としての音声コマースには慎重な姿勢を崩していない。
TikTokが目下eコマースのさまざまな分野に急速に手を広げていることを考えれば、いずれ音声コマースへ参入しようと考えるのは驚くに値しない。
求人情報によれば、TikTokはアメリカにおける「フルフィルメントセンター(商品発送センター)の計画およびソリューション設計」などのサプライチェーンのロジスティクスを担当する専門部署の立ち上げに向け、人員の増強を進めている。最近では、広告部門の幹部の1人をアメリカにおけるTikTok Shopのプロダクト担当へと異動させたとフィナンシャル・タイムズは報じている。
TikTokはオーディオ技術にも力を入れており、アプリの中でもサウンドを核に据えている。新しいオーディオ技術を開発する「SAMI(speech, audio, and music intelligence)」という専門チームもある。また、TikTokは現在、音声認識に関連する複数のポストで人材を募集している。その中には「多言語音声認識におけるコアテクノロジーの構築と最先端の研究を行う」音声認識の専門家の求人も含まれている。
[原文:TikTok could be preparing to take on Amazon and Google in voice shopping, a trademark filing hints]
(編集・大門小百合)