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アメリカではインフレ率が40年ぶりの高水準にあり、金利が急上昇している。消費者はすでに食料品や光熱費の高騰に直面している。
民間調査機関である全米産業審議会は、今後12カ月以内にアメリカが景気後退に陥る確率を96%としている。不況は、解雇や金融機関による貸し渋り、投資の減速をもたらす。
「こういった望まざる未来への備えは、実際に不景気になるかなり前から始めるべきです。今ならまだ間に合います」
そう語るのは、パーソナルファイナンスとリタイアに備えた資産管理の専門家で、アメリカ公認ファイナンシャルプランナーのジェイミー・ホプキンスだ。近々共著も出版予定のホプキンスは、投資家や消費者が個人資産の達成目標を守るためにできる具体的な手段があると考えている。
景気低迷の前と最中に、個人資産を守るための最良の「冬ごもり」戦略5つを聞いた。
今こそ投資の好機
不況が間近に迫っていると聞くと、すぐに株式や債券、投資信託を売却して現金を銀行に預けておきたくなるかもしれない。だが、ホプキンスはこれに警鐘を鳴らす。
「現金を銀行に預けておくのは得策ではありません。不況時に賢く戦略的に行動できれば、むしろ投資の好機となりえます」
こういう時こそETFなどにも目を向けてみてほしいとホプキンスは言う。
「現金を保管する場所を探しているなら、MMFやREITもあります。この時期に銀行にあまりに多くの現金を預けておくと、投資の成長機会を逃してしまうかもしれません」
投資ポートフォリオは「現状維持」
現在のポートフォリオに関しては、安易な決定を下さないことも重要だ。
「短期的な経済情勢から狼狽売りをすることは避けるべきです。例えば、もうすぐ定年退職を迎えるとして、退職後の期間はだいたい20年ほどありますが、不況は1年で終わる可能性が高いからです」
なお、退職が迫っている場合は、最初に引き出す金額を現金で手元に置いておくことも検討しよう。
「例えば、退職後の最初の2年間に引き出す金額を現金で用意しようと思っているなら、現在の市況やインフレ、金利がポートフォリオに与える影響をいま心配する必要はありません」
高額な買い物はしばらく控える
生活費や貯蓄を除いた自由に使えるお金は純所得の30%以下に抑えるべき、というのがよく聞く専門家のアドバイスだ。高インフレと金利上昇を考えると、不必要な大きな支出は先延ばしした方がいいだろう。
「住宅購入や豪華な旅行など、先延ばしできるならそうしたほうが合理的でしょう」とホプキンスは言う。
「いまは経済的な見通しがききにくくなっていますから、経済が回復するまでは、不必要な買い物は最小限にとどめておいた方がいいと思います」
負債の返済への対応は?
経済が不安定な時期には、まず借金を完済しようと考えるかもしれない。しかし、もしもの時や投資機会のために資金を充てる方が賢い使い道になることもある。
「高金利のカードローンと、住宅ローンや緊急時の低金利信用枠とは違います。景気後退への備えという意味では、今は不測の事態や失業にうまく対応できるようにしておいた方がより万全でしょう」
今こそファイナンシャル・プランを持とう
事前に対策を講じておくことで、実際に景気低迷に陥ったときにストレスを感じたりパニックに陥ったりせずにすむ。
「これは声を大にして言いたいんですが、とにかくギリギリまで待ったり、パニックに陥ったりしないことです。ストレスからパニックに陥ると、ほぼ間違いなく資産管理の判断を誤ります」とホプキンスは言う。
「こんな時だからこそ、ファイナンシャル・プランを持つことが重要です。不況へと進むなか自分の資産状態に不安を感じているのなら、どんな手段を講じれば資産を強化できるか、今一度考えてみてほしい。優れた金融戦略と投資戦略があれば、どんな不況が来ようが盤石なポジションを保てるはずです」
(編集・野田翔)