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会社員の副業に「インボイス制度」は必要? 個人事業主との違いは? 疑問を専門家に聞いてみた

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写真はイメージです。

Oscar Wong/Getty Images

2023年10月1日から、消費税の仕入税額控除に関して、インボイス(適格請求書)制度が導入されます。最近、ニュース報道などでようやく話題になる機会が増えてきました。

認知度はまだそれほど高くありませんが、副業している会社員にとっても無関係ではありません。「副業」の観点からインボイス制度対応が必要かどうかを考えると、以下の3点に集約されます。

  • 副業がBtoBの場合はインボイス対応したほうがよい
  • 副業がBtoCの場合は状況により免税事業者のままでもよい
  • インボイスに対応するなら2023年3月末までに登録が必要

その理由は何なのか?

会計・人事労務クラウドサービスを展開するfreeeのインボイス制度統括責任者である尾籠威則氏とプロダクトマネージャーの小野寺知佳氏に取材しました。

インボイスをめぐる「誤解」

freee

freeeインボイス制度統括責任者の尾籠威則氏(左)、プロダクトマネージャー公認会計士・税理士の小野寺知佳氏。

写真提供:freee

本来、会社員は、取引先から送られてくる請求書の確認や経費精算などを除き、インボイス制度にはあまり関係ありません。

ただし、「副業」をしている場合は注意が必要です。個人事業主向けには、「インボイス対応をしないと、取引打ち切りなどが起こる可能性がある」などの注意喚起がなされていますが、この問題は実は副業にも共通しています。

基本的な話ですが、インボイス制度は「年間売上高が300万円以下なら雑所得になる」とか「20万円以下なら確定申告が不要」といった話とは一切関係がありません。これらは「所得税」の話で、インボイスは「消費税」の話です。

ポイントの1つ「仕入税額控除」ってなに?

インボイス制度の重要キーワードは「仕入税額控除」です。

私たちが買い物をする際は、消費税を負担しなければなりません。しかし、私たち全員が直接税務署に納税するわけにもいきません。そこで、事業者が一時的に顧客から消費税を預かり、「代わりに納税」することになります。

例えば、売上高が300万円で消費税率が10%だった場合、預かった消費税は30万円になります。しかし、この売り上げをつくるための仕入や経費に150万円掛かっている場合、事業者は15万円の消費税を支払っていることになります。そこで、30万円から15万円を差し引き、その差分を納税することになります。これが、仕入税額控除の仕組みです。

仕入税額控除

預かった消費税から支払った消費税を差し引いた金額を納税する。これが「仕入税額控除」と呼ばれる仕組みだ。

出典:freee

インボイス制度が始まると、取引先は適格請求書(インボイス)を受領しないと、仕入税額控除ができなくなります。インボイスを作成するためには、適格請求書発行事業者に発行される登録番号を記載する必要があります。登録番号がない請求書の消費税は控除対象ではありません。

ちなみに、インボイスは適格「請求書」という名前ですが、必ずしも請求書だけに限っていません。領収書でもレシートでも納品書でも、課税取引において税率や税額を伝える手段すべてがインボイスの対象となります。

「インボイス制度が始まると、インボイスでしか税金を差し引くことができなくなります。そのため、控除が認められない消費税が生まれてくる可能性があります。その結果、税の負担が増えてしまうとなってしまうケースも出てきてしまうのです」(尾籠氏)

例えば、ある企業Aの売上が300万円で、消費税率が10%だった場合を考えてみましょう。150万円の仕入でインボイスを受け取っていれば、15万円分の消費税を控除できます。しかし、150万円のうち50万円分の仕入でインボイスを受け取れない場合は、5万円分が控除されず20万円分の消費税を納めなければいけません。この企業Aからみると「5万円分の増税」と感じることになります。

インボイス制度が始まると…の説明図

インボイスがない仕入の消費税は控除できません。

出典:freee

なぜインボイス制度が「取引に影響する可能性がある」と言われるのか

会社員が副業をする場合、インボイスはどう関わってくるでしょうか。

もちろん、会社員の給与を得る際にインボイスは必要ありません。ただ、副業で収入を得る際にインボイスに対応するかどうかを判断する必要があります。

副業でインボイスに対応する場合、適格請求書発行事業者の登録を申請します。当然ですが、消費税を納税する必要があります。

従来、個人事業主は「課税売上高が1000万円未満の場合、消費税を納めなくてもよい」ことになっていました。本格的な副業をしていない場合、免税事業者になっている人も多いでしょう。

もし適格請求書発行事業者の登録をすると、これまで受け取ったままもらっていた消費税を納税しなければならず、実質的な収入ダウンとなります。

インボイス制度が開始されたとしても、この免税の仕組みは続行されます。だったら、今のままの方が得だ、と考えるかもしれません。

ただし、ここに現実の「落とし穴」があります。

インボイス制度が始まると、インボイス(適格請求書)を発行しない事業者への支払いが控除できません。前出のとおり、発注者は実質的に税負担が増えてしまいます。

「取引先が免税のままでいいよ、うちが税金を多く払うから、と言ってくれる場合はそのままで問題ありません。

しかし、消費税分のコストが増えることを嫌がる場合は、取引を打ち切られる可能性は考えられます」(尾籠氏)

尾籠氏によると、独占禁止法や下請法など優越的な地位の濫用を防ぐ法律があり、例えばインボイスを機に適格請求書発行事業者にならないなら大幅に値下げしろ、という要求は罰せられる可能性が高くなると言います。また、「インボイス事業者にならなければ、消費税分はお支払いできません。承諾頂けなければ今後のお取引は考えさせていただきます」と要請した場合でも、独占禁止法上問題となる恐れがある、と尾籠氏は指摘します。

しかし、取引をするかどうかは事業者の自由です。取引をやめたとしても、理由を知らせる義務もありません。「インボイスに対応しない取引が打ち切られることがあり得る」という理由はここにあります。

実は「免税事業者」との取引は多い

課税事業者への変更依頼の調査

freeeが実施したアンケートによると、約6割の企業が免税事業者は課税事業者へ変更して欲しいと考えていました。

出典:freee

実際、freeeが10月にインターネットで法人に勤めている経理部門の担当者にアンケートを実施(n=558名)したところ、免税事業者と取引している企業は43%にのぼりました。

そして、そのうちの6割弱が課税事業者への変更を依頼した、もしくは依頼する予定、とのことです。少なくとも、多くの企業は課税事業者との取引を望んでいたそうです。

では、実際のところインボイス対応は必須なのか、と言えばそういうわけでもありません。例えば、「取引相手」や顧客が免税事業者や一般消費者の場合は、インボイスを発行する必要がありません。そもそもその取引先が消費税を納税していないためです。

副業で一般消費者向けに安価な商品を販売したり、小さな飲食店を経営している場合はインボイスに対応していないからといって、顧客が来なくなるとは限りません。

しかし、接待でも使われるような単価の高い飲食店を経営している場合、インボイスに対応していないと、発行した領収書を利用客が経費にしたときに消費税分を控除できません。そのため、接待の利用を避けられてしまう可能性はあります。

平成27年の国勢調査によると免税事業者数は488万社にのぼります。政府はそのうちインボイス事業者へ転換するのは約161万社と試算しています。新たな課税事業者の税負担額は平均約15万4000円、国の増収見込額は約2480億円と予測されています。

ちなみに、この161万社の多くが、BtoB事業者と考えられており、BtoC事業者の中には免税事業者のままでいるところも多いようです。

例えば、BtoBの副業とは、コンサルタントや広報の業務支援、SNSの運用代行、記事の執筆などが考えられます。

BtoCの副業であれば、手作りしたものをメルカリで売ったり、似顔絵を描いたり、YouTubeの動画編集を手伝うといった仕事があるでしょう。もちろん、個人向けのアドバイスをしたりSNSの個人アカウントを運用代行するならBtoCになりますし、企業の動画編集を行うのであればBtoBになります。

政府試算の図

免税事業者から課税事業者への転換はBtoB業者を中心に約161万社が見込まれています。

出典:freee

インボイス対応するなら税務署に登録を申請する必要がある

結論として、「インボイス事業者になるべきか、ならなくてもいいのか」は、取引先によります。取引先が免税事業者でも受け入れてくれる、もしくは課税事業者でないなら、インボイスを導入する必要はありません。

自分の取引先がインボイスに対応しているかどうか調べたいなら、国税庁の「適格請求書発行者事業者公表サイト」で法人番号を入力することで確認できます。法人番号は同じく国税庁の「法人番号公表サイト」で確認できます。

「適格請求書発行者事業者公表サイト」

取引先がインボイスに対応しているかどうかは「適格請求書発行者事業者公表サイト」で確認できます。

出典:freee

また、ほとんど認知されていませんが、2023年10月から6年間の経過措置期間が設けられています。2023年10月1日から3年間は仕入税額相当額の80%、2026年10月1日から3年間は仕入税額相当額の50%を控除できるというものです。つまり、しばらくはインボイスを受け取れなくても8割、もしくは5割を控除できるのです。

「(発注者側の視点では)下請け業者に対し、課税転換を強要するのではないかといった話はあるのですが、経過措置を鑑みたら、当面は免税事業者との取引でも一定割合を控除できます。(発注者が)免税事業者との取引を過剰に心配する必要はないと思います」(尾籠氏)

とは言え、インボイスの経過措置を利用する際は、きちんと記帳する必要があります。

現在は、税率10%と軽減税率8%、混在の3パターンですが、経過措置80%と経過措置50%それぞれの記載が必要なので、記帳パターンが3倍になります。この手間を嫌がるバックオフィスの人がいるかもしれません。

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