アマゾン(Amazon)が1万人規模の人員整理に着手した。
REUTERS/Brendan McDermid
アマゾン(Amazon)は11月15日、数日前から報じられていたコーポレート従業員のレイオフ(一時解雇)に着手した。Insiderの調べで分かった。
従業員たちが報道を通じて1万人規模の人員整理計画を知ったのは、その前日の11月14日。一部の従業員たちからは経営幹部のコミュニケーション不足に対して怒りの声が上がっている。
数千人が参加する同社内のスラック(Slack)チャンネルで、ある従業員は同僚たちの思いを代弁するようにこう投稿した。
「私たちはどんなわけで、社内の告知ではなく友人からの情報提供を通じてレイオフを知ることになったのでしょう?(米フォーブスが毎年選出する)『世界最高の雇用主』ランキング上位の当社が、レイオフと従業員への敬意は別問題というのはいかがなものか。人間性のかけらくらい見せてもいいのでは?」
最初に人員整理の可能性を報じた米ニューヨーク・タイムズ(11月14日付)によれば、今回のレイオフは倉庫作業員などを除くコーポレート従業員が対象で、主にスマートアシスタント「アレクサ(Alexa)」などのデバイス部門や人事、小売り部門などが含まれるという。
Insiderが入手したスクリーンショットを見ると、およそ1万5000人の従業員をメンバーとする「アスク・アン・アマゾニアン(Ask an Amazonian)」チャンネルをはじめ、社内の複数のスラックチャンネルが、不安や怒り、絶望など従業員たちのあふれ出る感情で埋め尽くされている。
アマゾンの広報担当にコメントを求めたが、回答はなかった。
スラックチャンネルへの投稿を見る限り、従業員の多くが不満を感じているのは、おそらくアマゾン創業以来最大規模となる人員整理を実施するにもかかわらず、経営陣からの情報発信が不足していることだ。そのために不安が広がり、生産性の低下を招いていると従業員たちは批判する。
「レイオフのことを考えると、今日は仕事に全然集中できない、つらすぎるという人はいませんか?(160万人超という)会社の規模からすれば、1万人の解雇など大した数字ではないのでしょうが、だからと言って、恐怖も大したことないというわけにはいきません。
アマゾンに入社してから、住宅ローンの頭金を貯めようと必死になって働いて、ようやくあと少しというところまで来ました。明日にも解雇されて、次の仕事探しがうまくいかなかったら……すべてが水の泡になると思うと悲しいです」
レイオフ報道が出た翌日の11月15日、一部の従業員のカレンダーに人事部との不可解なミーティングが設定されていることが発覚し、解雇対象の従業員ではないかとの憶測が出回った。そして、Insiderがある取材源から確認したところ、従業員たちの懸念は現実となった。
突然のミーティング設定の対象になったある従業員は、スラックにこう書き込んだ。
「極度の不安を感じています。どんな運命が待ち受けているのかはっきりするまで、仕事の生産性はほぼゼロだと思います。現在の経営陣には失望しかありません。何から手をつけたらいいやら……」
大量解雇計画の判明に伴う混乱に拍車をかけているのは、シニアマネージャークラスの管理職でさえ、レイオフについて何も知らされていないことだ。スラックにはこんな書き込みがある。
「そう、マネージャーすら何も知らされていないんです。経営陣であれ管理職であれ、ひと言も語ってくれません」
アマゾンは2021年7月、「地球最高の雇用主(Earth's Best Employer)」を目指すと宣言し、取り組みの指針をこう謳(うた)った。
「リーダーは、職場環境をより安全に、より生産的に、より実力が発揮しやすく、より多様かつ公正にするべく、日々取り組みます。リーダーは共感を持ち、自ら仕事を楽しみ、そして誰もが仕事を楽しめるようにします」
それゆえに従業員たちの失望は大きい。
「インクルージョン(包摂)に関するトレーニングを実施するとか、地球最高の雇用主を目指してリーダーが共感を持って取り組むとか、いろいろ言っておきながら、最後は報道を通じて大量解雇の事実を知らされるなんて。
どう考えていいのか分かりません。怖い?失望した?悲しい?その全部かもしれませんね」
ブラックユーモアで反応した従業員もいる。
「明日から長期休暇を取ったらどうなるだろう?レイオフを告知する1on1ミーティングも設定できないね」
あるスラックチャンネルでは、デマに騙(だま)されないよう注意を促す従業員たちの書き込みも見られる。大規模な人員削減の可能性が報じられた直後(10月末)のツイッターで、同社の従業員を装う男たちがサンフランシスコ本社屋前で解雇されたと語るデマ動画が出回ったからだ。
「元アマゾン従業員だと主張する人たちのコメントは割り引いて考えるようくれぐれもご注意を。
解雇されたばかりのツイッター従業員を装い、CNBCとブルームバーグを騙してインタビューに応じたソフトウェアエンジニア『Rahul Ligma』(のちに架空の人物名だと判明)の件をお忘れなきよう」
そうした混乱と失望に満ちた社内でなお、互いを励まし合う従業員たちの書き込みも見られた。
レジュメ(履歴書)を最新の内容にアップデートしたり、つなぎの資金を準備したり、心の安寧を得られる何かを探したり、アドバイスをリスト化して共有する従業員もいた。
その従業員は書き込みをこう結んでいる。
「それでも心を落ち着かせるのは難しいかもしれません。私ならこう考えます。これから何が起きるのか、私たちにはコントロールできないのだから、『最高の展開を望み、最悪の事態に備える』それが一番だと」
(翻訳・編集:川村力)