ラッティ氏の“未来型スーパーマーケット”は、コープ(生活協同組合)によってミラノに建てられた。
Carlo Ratti Associati
たとえば、スーパーでトマトを選ぶ時、トマトがどれくらい熟しているかを購入の判断基準にする人は多いと思う。では、それ以外の判断基準はあるだろうか? 見たり、触ったりしただけではわからないトマトを巡る「何か」。あなたが買おうとしているそのトマトが店頭に来るまでには、いったいどんな“物語”があったのだろうか。実の土台となった「蔓」の話、畑で発生した「二酸化炭素」のこと、成長過程で使った「化学薬品」などにかかわる“物語”(=ストーリー)を知りたいと思わないだろうか。
この記事では、顧客に商品のストーリーを教えてくれる“未来型スーパーマーケット”を紹介する。
昨年の12月下旬、コープ(生活協同組合)がミラノにオープンした。生鮮食品のコーナーには商品情報を説明するモニター(「拡張現実(AR)」と「特殊センサー」を使用)が設置されている。
このプロジェクトはMIT(マサチューセッツ工科大学) センサブル・シティ・ラボのディレクターであり、デザイン事務所「Carlo Ratti Associati」の共同設立者であるカルロ・ラッティ(Carlo Ratti)氏が指揮した。数カ月以内にイタリア以外にもオフィスを開設する予定だ。
さて、気になる店舗の中をのぞいてみよう。
イタリアの大手スーパー「コープ(生活協同組合)」が“未来型スーパーマーケット”として、2016年12月にミラノにオープン。
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ここの食料品は、一般的なスーパーマーケットのように並べられてはいない。
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ぶどうの隣にワイン、トマトの隣にトマト缶といったように、同じ原料から作られた食品がセットにして並べられている。
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生鮮食品の上には、横長の反射スクリーンが設置されている。
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顧客が商品を手に取った時、人感センサーと、ジェスチャーと音声で動くマイクロソフト・キネクト・センサーが反応し、その商品の栄養成分や価格、農薬や肥料、アレルギーを引き起こす可能性のある物質、売り場に到着するまでの一部始終が表示される。
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店内には、54ものモニターを使った65フィート(約19.8メートル)の大画面を設置した壁があり、オススメのレシピや、その日の売り上げNo.1商品が紹介される。
食料品は、低い本棚のような陳列棚に並ぶ。これは、隣の通路が見えると、見知らぬ利用客同士で会話が弾むのではないか、という発想からだ。
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早く買い物をして帰りたい、という顧客は多い。しかし、ラッティ氏は長居をしていって欲しいと願う。
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商品の情報があることで「顧客は納得して購入できる」と彼は信じている。
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「人々にもっと食物連鎖に興味を持ってもらいたい」とラッティ氏。
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“未来型スーパーマーケット”は、マーケティングツールとしても役立つのではないか。顧客が時間をかけて、食料品についての情報をより多く手に入れることができれば、もっとたくさんの商品が売れたり、より高価なオーガニック食品が選ばれたり、という可能性もあるのではないだろうか。
店内のモニターを広告スペースとして利用し、収益を上げることもできる。また、売り出し商品がある場合は、モニターを使ってその商品を宣伝すればいい。
将来的には、食料品だけでなく、体験も提供できるような店が増えて欲しい、とラッティ氏は期待する。彼の会社は、世界最大規模のイタリア食品市場「イータリー(Eataly)」にも協力している。
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「りんごを1秒で買えるのは、今までと一緒。ただ、もう5秒あれば、そのりんごについて多くのことを知ることができます。15秒もあれば、りんご畑のビデオを見ることができるかもしれません」
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[原文:An MIT professor designed this supermarket of the future — take a look inside]
(翻訳者:にこぱん)