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加速する米中の「月面開発競争」。日本発スタートアップispaceもいよいよ月へ

SLSロケットの打ち上げの様子。NASAによるロケットの打ち上げはスペースシャトルの退役以来11年ぶり。

SLSロケットの打ち上げの様子。NASAによるロケットの打ち上げはスペースシャトルの退役以来11年ぶり。

NASA

日本時間2022年11月16日15時47分、NASA(米航空宇宙局)は新型ロケット「SLS」を打ち上げ、宇宙船「オリオン」が月へと出発した。ロケットの開発の遅れ、機体のトラブルやハリケーンの接近による度重なる延期を経て、NASAはようやくアポロ計画以来の月への「帰還」を果たすことになる。

今回の打ち上げは、アポロ計画以来となる有人月面着陸を目指すNASAの「アルテミス計画」の第一弾にあたり、宇宙船の安全性を確認するためのものだ。

アポロ計画による人類史上初の有人月面着陸の成功から50年以上が経った今、アメリカと中国を中心に新たな月面探査・開発競争が加速している。米中それぞれの狙いと、そこに食い込もうとする日本の民間企業の動きをみていこう。

旧ソ連・米国に次ぐ宇宙大国になった中国

アメリカがアルテミス計画の策定を開始したのは、トランプ政権下の2017年12月。その背景の一つに、月面探査や独自の宇宙ステーションの構築に乗り出し成果を上げ始めた中国の存在があることは否めない。

中国は2013年12月に無人探査機「嫦娥(じょうが)3号」を月面に軟着陸させ、旧ソ連とアメリカに続く3カ国目の月面着陸を達成した国となった。

その後も、2019年1月に「嫦娥4号」による月面の「裏側」への着陸を世界で初めて成功。さらに2020年12月には「嫦娥5号」が月の試料を回収、地球に持ち帰ることに成功したことで、国際社会から高い評価を得た。

国際宇宙会議2022にて撮影。中国の月探査計画(通称CLEP)は2004年に発表され、軌道周回、着陸、試料回収まで成功している。

国際宇宙会議2022にて撮影。中国の月探査計画(通称CLEP)は2004年に発表され、軌道周回、着陸、試料回収まで成功している。

撮影:井上榛香

現在、中国政府は月面に研究拠点を整備するプロジェクト(月面研究拠点:ILRS=International Lunar Research Station)の基礎構築を目指し、嫦娥6号、7号、8号からなる月探査計画の次期フェイズまでを承認している。

この月面研究拠点の構想自体は、2016年に発表されたものだ。

その後、2021年3月に、中国の宇宙開発を担う中国国家航天局とロシアの宇宙機関ロスコスモスが月面研究拠点の建設に関する覚書に署名し、両国の共同プロジェクトとなっている。覚書に署名した翌月に開催された国際連合のイベントで、中国とロシアは月探査に関心を持つ国や国際機関に月面研究拠点への参画を呼びかけていた。

月面研究拠点建設のロードマップ。本格的な建設は2030年代に始まる。

月面研究拠点建設のロードマップ。本格的な建設は2030年代に始まる。

撮影:井上榛香

2022年9月にフランス・パリで開催された国際宇宙会議でも中国国家航天局は「中国の月・深宇宙探査計画における国際協力の展望」と題したセッションを主宰。ウクライナ侵攻で国際的に厳しい立場にあるパートナー国ロシアについては言及しなかったものの、月探査計画や月面研究拠点への参画を再び各国に呼びかけていた。

セッションに登壇した中国宇宙技術研究院、科学技術委員会ディレクターミン・リー氏は「(国際協力の意義は)エンジニアリングにおけるリスクを軽減することと科学の価値を高めることの2つのポイントがある」と語っていた。

実際、2024年に打ち上げられる予定の嫦娥6号には、すでに欧州宇宙機関(ESA)とスウェーデン、イタリア、フランス、パキスタンの測定器や小型衛星の搭載が決定。続く嫦娥7号には、UAEの月面ローバーが搭載される予定だ。

国際的に見ても、この10年で中国は確実に宇宙開発をリードする存在になりつつある。

中国空間技術研究院のミン・リー氏(左から3番目)。国際宇宙会議2022にて。

中国空間技術研究院のミン・リー氏(左から3番目)。国際宇宙会議2022にて。

撮影:井上榛香

国際協力と官民連携で月を目指す、米の「アルテミス計画」

アメリカが進めるアルテミス計画には、こうした中国の躍進に対抗したドナルド・トランプ元大統領が、アポロ計画時代に代表されるような米国のリーダーシップを顕示しようとした意味合いもあったとみられている。

ただ、アルテミス計画がアポロ計画と大きく異なるのは、中国の月探査計画と同様に国際協力の下で進められることだ。

11月16日に打ち上げられたSLSロケットに、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の超小型探査機「OMOTENASHI」と「EQUULEUS」が相乗りしているのも、国際協力の一例として挙げられる。

アルテミス計画では、月軌道を周回する有人拠点「ゲートウェイ」が建設される予定だ。その建設には、日本や欧州、カナダらが参画している。日本は2024年に打ち上げられる予定の最初の有人モジュール(通称HALO)へのバッテリー提供や無人補給船による物資の補給を担う。

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月軌道ゲートウェイのイメージ。宇宙飛行士が4人程度滞在できる。月面や月近傍拠点への中継地点として利用される。

NASA

さらに、アルテミス計画に関連する月面開発には民間企業も参画し、事業の幅を広げている。

イーロン・マスク氏が代表を務めるSpaceXは、宇宙飛行士を月面に着陸させる宇宙船「スターシップ」の開発を、商用宇宙ステーションの建設を目指すAxiom Spaceは月面で使用する宇宙服の開発を担うことが決まっている。

また、日本発のスタートアップispaceもこの計画に参画している。ispaceが開発した月面着陸船である「ランダー」は11月28日17時46分(日本時間)に、SpaceXのFalcon9ロケットで打ち上げられ、月面へと向かう予定だ。

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ispaceのミッションのロードマップ。2023年4月末頃に月面着陸を目指す。ランダーで採取した月面の砂をNASAに販売する計画もある。

画像:ispace

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