※本記事は、2022年8月22日に公開した記事の再掲です。
干ばつに見舞われたネバダ州のミード湖では、これまで湖底に沈んでいた瓦礫が姿を現した(2022年5月10日、アメリカ)。
Mario Tama/Getty Images
- 干ばつによる水位低下の影響で、各地で遺跡や遺物、遺体が見つかっている。
- 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書によると、アメリカを含む世界各地で干ばつがより頻繁に発生し、これまで以上に深刻な被害をもたらしているという。
- ネバダ州にあるアメリカ最大の人工貯水池ミード湖では2022年5月以降、4体の遺体が見つかった。
2022年、気候変動によって深刻化した干ばつにより、世界中の川や湖、小川の水位が低下したことで、過去の遺物が姿を現している。温暖化が進めば、古代の遺物や長い間水に沈んでいた遺体がさらに見つかる可能性があると専門家は指摘している。
ネバダ州にのミード湖はその典型例だ。サザン・ネバダ電力公社(Southern Nevada Power Authority)によると、湖の水位は2000年以降、150フィート(約46メートル)低下したという。8月12日の朝には水位は1041.63フィート(約317メートル)となり、近くにフーバーダムが建設された後、1937年以来最も低くなった。4月に公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の報告書によると、気候変動の影響でアメリカを含む世界の多くの地域で干ばつがより頻繁に発生し、より深刻な被害を広範囲にもたらしている —— ミード湖の水位低下はそうした大きな現象の一部だ。
第二次世界大戦時代に使われていた船や爆弾からラスベガスに近いミード湖で発見された遺骨まで、気候変動の影響で深刻化する干ばつによって、各地で思いもよらない発見が相次いでいる。
ミード湖に沈む秘密
干ばつによって水位が下がったミード湖。この近くで遺体の入ったドラム缶が見つかった(2022年5月5日、アメリカ)。
Mario Tama/Getty Images
深刻な干ばつに襲われたネバダ州のミード湖では水位が過去最低を記録し、これまで沈んでいた遺体が姿を現した。5月には1週間で2体、7月と8月にも2体の白骨化した遺体が見つかり、これまでに4体が発見された。
ネバダ州クラーク郡の検死官事務所に協力している法人類学者ジェニファー・バーンズ(Jennifer Byrnes)氏によると、気候変動に伴う干ばつによって水位が記録的な低さになっていることから、まだまだ遺体が見つかる可能性があるという。
「水位が下がるにつれ、徐々に行方不明者の遺体が見つかるだろうと考えている」と、バーンズ氏はInsiderに語っている。
干上がったミード湖の底からは、沈没したボートが泥に突き刺さって直立した状態で見つかった(2022年6月22日、アメリカ)。
AP Photo/John Locher
ミード湖の水位が下がったことで、6月と7月には水没した船や打ち上げられたボートハウス、ヨット、モーターボートなどが不気味な"ボートの墓場"のようになっているとAP通信が報じた。
姿を現した第二次世界大戦時代の遺物
水位が下がり続けるミード湖のマリーナ付近では、水深60メートルほどに沈んでいた第二次世界大戦時代の「ヒギンズ・ボート」(LCVP)が姿を現した(2022年7月1日、アメリカ)。
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AP通信によると、6月にはミード湖の水位が下がったことで、これまで沈んでいた第二次世界大戦時代のヒギンズ・ボート(上陸用舟艇の一種)が数十年ぶりに姿を現したという。アメリカ国立公園局は、このヒギンズ・ボートはさまざまな作業のために使用され、その後、沈没する前に部分的に引き揚げられたようだとCNNにコメントしている。
「偶然沈んだのか、あるいは使わなくなった船を処分するために意図的に沈めたのかは不明だ」という。
ミード湖の水が減り続ければ、第二次世界大戦時代の遺物が他にも姿を現すかもしれない。ミード湖には第二次世界大戦で使用されたB-29爆撃機も沈んでいる。
水位が低下したイタリアのポー川では、第二次世界大戦時代の不発弾が見つかった(2022年8月4日)。
Nicola Ciancaglini/Ciancaphoto Studio/Getty Images
一方、イタリアでは6月、過去70年で最悪の干ばつによってイタリア最長のポー川の水位が下がり、第二次世界大戦中に沈没したはしけが姿を現した。7月下旬には、第二次世界大戦時の重さ450キロの不発弾も見つかった。
「この不発弾はポー川の川べりで漁師が発見した。干ばつで水位が下がったことが原因だ」と地元当局はロイター通信に語った。不発弾は軍の爆弾処理の専門家が安全に配慮した上で処理した。
川の水位が下がり、失われた都市が出現
世界各地の干ばつは、古い遺跡や古代の遺物を露出させている。2021年12月には極度の干ばつで水位が下がったイラクのチグリス川沿いで3400年前の古代都市が見つかり、考古学者たちは現地に急行した。これ以上の気候変動の影響にさらされたり、破壊されたりする前に、できるだけ発掘し、地図を作るためだ。
「ケムネ」と呼ばれるこの遺跡は、高さ約6メートルの壁に囲まれた宮殿や複数の塔、多層階の建物などで構成されている。
貯水池に沈んでいたスペインのアセレド村。水位が下がったことで、その姿を現した(2022年2月10日)。
REUTERS/Miguel Vidal
2022年2月には、スペインとポルトガルの国境にあるダムが干ばつで枯渇し、貯水池に沈められていたスペインのアセレド村が再び姿を現した。スペイン北西部のガリシア地方にあったこの村は1992年、アルト・リンドーソ貯水池を作るために水没させられ、最近では廃墟となって再び現れた、何十年も水没していた村を見たいという観光客を引きつけている。
しかし、これは温暖化した世界で何が起こるかを示す、懸念すべき兆候だと話す地元住民もいる。
「まるで映画を見ているようだ。悲しい気持ちになる」と、この地域に住む65歳の男性はロイター通信に語った。
「これが気候変動に伴う干ばつなどで今後何年にもわたって起こることなのではないかと感じている」
[原文:Droughts are unearthing unexpected finds ranging from World War II bombs to Sin City skeletons]
(翻訳・仲田文子、編集・山口佳美)
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