グーグルは創業以来大規模な人員削減を行ったことがないことを誇りにしているが……。
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グーグルは経済が減速する中でも最後まで人員削減を行わずにいるテックジャイアントの一つだ。同社は創業以来大規模な人員削減を行ったことがないことを誇りにしているが、他の道はないかもしれないと、あるアナリストは指摘する。
社員を減らすためにグーグルが用いる典型的な方法——他社に移ろうとする社員を引き留めない——ではもううまくいかないと、バーンスタインのアナリストであるマーク・シュムリクはクライアント向けのメモの中で書いている。
ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達しづらくなっているため、スタートアップは採用を行わない。メタやアマゾンなどの企業は既に人員削減を行っている。つまり、「人員の自然減」戦術はうまくいかないのだ。
「グーグルは、もっと思い切ったアクションをとらないかぎり社員の増加を収益の成長以下に抑えるのが難しいことに気づくだろう」(シュムリク)
グーグルは第3四半期に約1万2000人の新社員を採用している。これは前年同期比で24%の増加だ。一方、収益は前年同期比でたった6%増である。これを受け、アクティビストファンドのTCIは同社に大規模な人員削減を直ちに行うよう求めた。
社員数の問題はグーグルの直近の決算発表でも取り上げられた。サンダー・ピチャイCEOとルース・ポラットCFOはともに、第4四半期には採用を大幅に減らすつもりだと述べた。しかし、減らしたとしても6000人の採用を見込んでいるという事実に不満を抱くアナリストが何人かいるようだ。
グーグルは既に業績評価基準を厳しくしており、それによってクビ切りのまな板に乗せられる社員が増える可能性はある。
「もしあなたがグーグルの社員なら、自分に関係のあるカットは寿司バーのトロのカットだけであることを願いながら鳴りを潜めていることだ」とシュムリクは書いている。
グーグルが大規模な人員削減に消極的なのには文化的・歴史的な理由がある。社員にやさしい職場であるという評判を築いてきた同社は人員削減を行うというスティグマを背負いたくないのだと、同社の複数の元幹部がInsiderに明かす。
シュムリクはメモでそのことに触れ、グーグルには「コスト削減と規律を重視するこれ見よがしの努力を積極的に避ける、独特のカルチャー」があると指摘している。
その結果、グーグルは肥大化して決断力が鈍ったと、グーグルの元幹部数人が異口同音に話す。同社はこれまで、ゲームサービスのステイディア(Stadia)など個別のプロジェクトを打ち切ったことはあったが、それらはピンポイントでの人員削減だった。
だが、膨れ上がる社員を抱えるグーグルが利益率の鈍化に対処するにはそれでは不十分だとの批判も聞かれる。そしてこれまでとは違って、気がついたらコスト削減できていた、なんてことにはならない。
「VC市場は急激に冷え込んでいるため、スタートアップが社員を増やせるような資金はもうない。仮想通貨(暗号資産)市場も崩壊し、潜在的なテック採用プールというサブセクター全体が断たれている」(シュムリク)
(編集・常盤亜由子)