投資を単なるお金儲けにしない。SMBC日興証券が取り組む「Money for Good」とは

Environment(環境)Social(社会)Governance(ガバナンス)の頭文字を取った『ESG』。このESGへの貢献や配慮を加味した投資『ESG投資』が注目されている。その普及のためにSMBC日興証券は、地球にも社会にも“優しい”お金の循環を生み出す『Money for Good』の取り組みをスタートした。

今回は、Money for Goodに携わるSMBC日興証券の伊藤直子氏とサステナビリティを得意分野の一つとするコンサル会社で先進企業の調査分析に携わる傍ら、ファイナンシャルプランナーとしても活躍する三上諒子氏が対談。ESGとの出会いや現在の取り組み、また、個人が「選択できる」「実感できる」「支援できる」ESG投資のあり方について話を聞いた。

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ESGを意識したきっかけ

ESGという概念がグローバルで意識され始めたのは、2006年頃からだ。国連事務総長だったコフィー・アナン氏が、ESGに関する視点を投資プロセスに取り入れることを求めた「責任投資原則」(PRI:Principles for Responsible Investment)を提唱したことがきっかけのひとつといわれている。そこから遅れること10年、日本ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG指数に連動した運用を始めたことで、企業のIR部門や投資家に認知されるようになった。

SMBC日興証券の伊藤氏がESGに興味を持ったのは、その少し前、2015年3月のことだ。

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伊藤直子(いとう・なおこ)氏/SMBC日興証券 Nikko Open Innovation Lab。外資系・日系大手証券会社で役員秘書を経験し、2011年11月にSMBC日興証券に入社、株式調査部に所属。2015年3月に女性活躍推進に関する投資レポートを担当したことがESG投資を意識するきっかけとなった。また同時に自身のキャリアについても考えるきっかけとなり、2020年10月に現職に異動。ESG/SDGsをテーマに新規事業創出に取り組み、社会を良くするお金の循環をつくりたいとの思いから「Money for Good」を立ち上げた。

「当時は、私は株式調査部のストラテジーチームに所属していました。女性活躍推進法案が2015年2月20日に閣議決定され通常国会に提出されたタイミングで、「女性活躍促進が日本企業を変える」というタイトルの投資レポートの作成を担当しました。レポート作成を通じて、女性の生き方の選択肢が広がる可能性を感じ、ESGやSDGs、サステナビリティを意識するきっかけになりました」(伊藤氏)

それまでは誰かをサポートする側に回ることが好きだった伊藤氏だが、この出来事をきっかけに、自らも女性の働き方の選択肢を模索。異動願を出し、新規事業を生み出す新組織『Nikko Open Innovation Lab』で新しいチャレンジの第一歩を踏み出す。

「新しい事業を考えたとき、真っ先に頭に浮かんだのがESGやSDGsに関わるビジネスでした。そこから生まれたのが、社会を良くするお金の循環を作るプロジェクト『Money for Good』です。現在は、そのプロジェクトリーダーを務めています」(伊藤氏)

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三上諒子(みかみ・りょうこ)氏/HRガバナンス・リーダーズ R&D所属。大学時代には、世界最大の学生団体AIESECでの活動、ESG投資に関連した研究、サステナビリティのコンサル会社とFPサテライトでのインターンシップを経験し、大学卒業後はITベンチャーに就職。企業価値に関わるサステナビリティリスクと機会を強く認識し、現在はコーポレート・ガバナンス領域のコンサル会社でコンサルタントとして勤務。本職の傍ら、FPサテライト所属のファイナンシャルプランナーとしても活動を行う。本稿は取材者の意見を掲載したものであり、取材者の所属する組織の見解や方針を示すものではありません。

三上氏は現在、24歳、いわゆるZ世代である。持続可能なガバナンスの構築を支援するコンサルティング企業『HRガバナンス・リーダーズ』に在籍し、コンサルタントとして先進企業の事例調査や企業へのアドバイザリー業務に携わる傍ら、ファイナンシャルプランナーとしてメディアでの発信もおこなっている。

サステナビリティに興味を持ったのは、高校時代。国際人間学科で英語を学んでいたこともあり、内戦による教育格差など、国際的な社会課題に触れたことがきっかけだという。大学進学後は、世界最大の学生団体AIESEC(*アイセック:海外インターンシップの運営やオンラインの国際交流イベントなどを通じて世界中の若者のリーダーシップを育むことを目指している非営利組織)に所属。インターンシップを通じて、世界の社会課題に貢献する活動に参加することになる。

「AIESECで財務担当も務めていたことが、社会課題への貢献と組織の利益の両立を考えるきっかけとなりました。当時は商学部に在籍していたのですが、社会的リターンと経済的リターンの関係を考える中で出会った概念が『CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)』です。

社会的・経済的価値の両立を目指す経営戦略ですが、これが当たり前になれば、自然と持続可能な社会につながると腑に落ちました」(三上氏)

社会を良くするお金の循環を作る

三上氏はその後、ゼミで株式投資の研究をしているときにESG投資も知ることになる。若い世代とESG投資の関係について、こう語る。

「SDGsやサステナビリティには、さまざまな形の貢献方法があります。一昔前では地域の環境保全活動だったりNGOのボランティアだったりというアプローチで小さなインパクトしか生み出せませんでしたが、今は投資を通じて大きなインパクトを生み出すことができます。

先行きが不確実なうえに、自身の老後のことも考えなくてはいけない時代、社会課題への貢献と個人の資産形成が両立できる方がより良いという考えからも、ESG投資が注目されていると思います。

資産形成は中長期的な投資が求められますので、サステナビリティの実現に資金を投入していくことは理に適っているように感じます」(三上氏)

それは裏返すと、ESG投資によってリターンを得られると思えなければ、最初の一歩を踏み出せないということでもある。そこで必要になるのが、投資に値するかどうかを判断するデータの提供や可視化だ。

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「ESG投資という方法を定着させるには、何にどうお金が使われて、何が改善されるのかを明確にする必要があります。私たちの日々の購買行動が企業の正しい活動を後押しし、そこから出たアウトプットを再び私たちが享受する。そういったインベストメントチェーン(価値創造の連鎖)のなかで、私たちが担う役割をしっかり認識してもらうことが大事になります」(三上氏)

そうした流れのなかでSMBC日興証券が立ち上げたのが、『Money for Good』だ。プロジェクトリーダーの伊藤氏は「投資を単なるお金儲けではなくて、ESGに積極的な企業を応援するなど、社会を良くするためのツールだという認識を持っていただき、お金の流れで社会課題の解決を目指す」と意気込む。

「まず、社会課題の解決に取り組んでいる方や企業の情報発信から始めて、生活者の方々の意識がESGに向かうような形をつくりたいと思っています。

その次に、お金の流れ。クラウドファンディング、寄付、そしてESG投資など、お金の良い循環を生むサービスを提供していきます。

最後は、コミュニティの形成です。一人ひとりが社会課題について考えて取り組めるコミュニティを、たとえばWeb3.0などのテクノロジーを使いながら構築できたらと考えています。一人ひとりの力は小さいかもしれませんが、集まることによって大きな力となるはずです」(伊藤氏)

ESG投資による社会的リターンと投資リターンの関係性を可視化する

Money for Good』が目指す世界観を聞いた三上氏は、「まず、ネーミングがいい。グッドポイントです」と語り、こう続けた。

「投資が専門のSMBC日興証券が手掛けることが心強い。実際に投資で社会貢献をしたくなったときに、多くの投資関連情報やデータが把握できる体制が構築されているのは大きなポイントです。また、最終的にはコミュニティによって生活者と企業をつなぐところにも魅力を感じました。

私もファイナンシャルプランナーとして、生活者と企業をつなげる発信に重きを置いているので、非常に共感します。最終的に事業を提供する側とサービスを受け取る側をつないで、双方向のコミュニケーションのなかでサステナブルな世界を育んでいくことが不可欠だからです」(三上氏)

Money for Good』は、生活者の意識をESGに向けるべく、まずは情報発信からその一歩を踏み出す。そこでは、ESG投資によって集まったお金が何に使われて、どう改善されるのかを明確にする必要がある。

伊藤氏も「現状、ESG投資による社会的リターンと投資リターンの関係性が見えづらいのは、取り組むべき課題のひとつ」と認識している。三上氏も「購買や投資といったアクションによって、どこに影響を及ぼすのかがクリアになれば、行動に対するインセンティブがより生まれやすくなると思います」と語る。

社会的インパクトの可視化という課題の解決。そのために『Money for Good』は、非財務データサイエンス専門家集団である『サステナブル・ラボ』と協業し、ESG投資を考えたときにどの企業を応援すればいいかを決めるデータや情報を提供したいと考えている。

「社会的リターンと投資リターンの両立が図られないと、真の意味でESG投資は浸透しないのではないでしょうか。現状は、企業活動における社会的リターンが十分に可視化されている状況とはいえません。

またサステナビリティ、ESGの取り組みが財務・非財務データにどのように影響を与えるのか、まだまだ解明されていないため、結果として、投資判断の材料として十分に浸透しているとはいえない状況だと考えます。

まずは社会的リターンを可視化することが重要で、それによって、ESGやSDGsの取り組みと投資リターンや企業価値との因果関係の解明につながり、機関投資家だけでなく個人投資家にもESG投資がより浸透していくのではないかと考えています」(伊藤氏)

サステナビリティを意識しなくても自然に社会貢献できる世界へ

世界最大規模の消費財メーカーであるユニリーバは「サステナブルな暮らしを”あたりまえ”にする」というパーパスを掲げている。三上氏は「この考え方が最も重要」と語る。

「生活の中に組み込まれた仕組みで、気付けば社会や環境に貢献している。サステナブルかどうか強く意識しなくても、自然に貢献できる社会こそ、私が実現したい世界です」(三上氏)

そして、個人がESG投資についてアクションを起こすためのヒントもそこにあると三上氏は言う。

ESG投資だって、まずはできる範囲からでいいんです。自分ができることを把握し、徐々にスタンスを明確にしていけばいいと思います。そして、サステナビリティの取組みでは、倫理観が重要になると私は考えています。社会にとって何が良いことで、何が良くないことなのか。一人ひとりが倫理観に基づいた行動ができれば、ウェルビーイングの向上や地球環境の回復といった、サステナビリティの実現に一歩近づくのではないでしょうか」(三上氏)

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伊藤氏も「持続可能な社会を実現するには、まず自分自身の生活も持続可能である必要があるのではないでしょうか。何事も完璧を求めすぎると行き詰ったり、なかなか最初の一歩が踏み出せなかったりすることがあります。まずは、自分ができる範囲で、例え小さくても一歩を踏み出すことが大事だと思っています」と語る。

両氏とも最終的には意識しなくてもサステナビリティに貢献できる、無理のない仕組みが必要だと続けた。

「まずは、日常生活において商品やサービスを購入したり、働いたりすることは、実はお金の流れを通して人や社会、企業とつながっているということに意識を向けてほしいです。

そしてその日常において、例えば二つの商品で迷っているときに、フェアトレードに貢献しているなど、少しでも優しさがある方を選んでみるといったことです。そういった生活者の行動変化によって企業も認識をさらに改め、社会を良くする商品が益々増えていく。それは、無理せずに自然と社会貢献ができる、社会を良くするお金の循環につながります。

Money for Good』では、そうした少しの優しさを持てるきっかけになる情報を提供していきたいと思っています」(伊藤氏)

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SMBC日興証券の「Money for Good」についての詳細はこちら

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留意事項

本記事は情報提供のみを目的としており、特定のサービス・金融商品の勧誘を意図するものではありません。なお、この情報は、各記事の掲載時点で筆者が信頼できると判断した情報源をもとに作成したものですが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、筆者、発行媒体は保証を行っておらず、また、いかなる責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。

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