11月18日に発売になったライカスマホの2世代目「Leitz Phone 2」。
撮影:林佑樹
ソフトバンクから新型スマホ「Leitz Phone 2」(ライツフォン・ツー)が11月18日、発売された。一括購入時の価格は22万5360円(税込)。
2021年7月発売の「Leitz Phone 1」から「カメラ重視」の路線を引き継ぎ、シャープの「AQUOS R7」をベースとした光学性能に「ライカ」なエフェクトが追加されている。
ハードウェアやソフトウェアの概要については既報の通りだ。この記事では、特にカメラ性能に注目した実機インプレッションをお届けする。
「不便が楽しい」他とは違う撮影体験
「Leitz Phone 2」のカメラは、ひと言でいうと「フィルム的な感覚でシャッターを切る」という撮影体験だ。
近年では、スマホのカメラにしろ、デジタル一眼にしろ、失敗を気にせず気楽に撮影できるようになった。
とりわけ、スマホに至っては日常的に撮影できるのがすっかり当たり前になっている。
Leitz Phone 2も同様にスマホではあるが、
- 撮影するタイミングを考える
- レンズフードを外そうかどうしようか迷う
- 最大の特徴である「Leitz Looks(ライツルックス)」をどれにしようか、露出をどうするか悩む
など、2022年の一般的なスマホ撮影シーンと比べると「気にする点」が多い。見方を変えれば、あまり気楽に撮影できない、とも言える。
UX(ユーザー体験)として制約が生じており、先に記したようにフィルム的な感覚で数日を過ごした。
自分の意図がキレイに決まると気持ちいい絵が撮れる。最近のスマホの写真にはない感覚だ。
撮影:林佑樹
おさらいしておくと、カメラモードの1つでありLeitz Looksには「SUMMILUX 28」「SUMMILUX 35」「NOCTILUX 50」という3つのレンズをエミュレートする機能がある。
さらに、フィルターとして「ORIGINAL」「MONOCHROME」「CINEMA CLASSIC」「CINEMA CONTEMPORARY」がある。フィルターはフィルム的な立ち位置で、エミュレートしたレンズとフィルターを組み合わせて撮影していく。
また、標準設定ではオートHDRがオンになっているが、これをオフにすると雰囲気が結構変わる。ただ、オートHDRは手ブレの原因にもなりやすく、今回はもっぱらオフにしていた。
オンの状態では明るい環境でシャッター速度が速くなるシーンでないと撮影しにくく、フィルム的といえばフィルム的だ。ライカファンによっては、むしろ「ツボ」に入る部分もあるかもしれない。
フィルムっぽい撮影体験
撮影したデータには、どういったLeitz Looksの組みあわせだったかは記録されない。
すっかりExif(撮影情報の電磁的な記録)が当たり前になっているが、この点もフィルム的と感じた理由でもある(実際このレビュー記事を書く際にも難航した)。
SUMMILUX 28、SUMMILUX 35、NOCTILUX 50は、焦点距離(デジタルズーム)とボケ感の違いが主になる。
ポイントとしてはプレビュー画面と出力が異なり、AQUOS R7で撮影したあとにライカ純正謹製のエフェクトで処理されている形だ。
よって光学的なボケではなく、ToF(被写体との距離を測るセンサー)と視差からボカす場所を決めている。わかりやすいオブジェクト、例えば人間ならばまず違和感はないが、複雑な形状は苦手のようだ。
実機の画面でのボケはあくまでサンプルで、実際の出力とは異なるケースがあった。ボケが生じていた部分がボケていないこともあった。不思議な気もするが、そういう挙動なのだろう。
画像:筆者によるスクリーンショット
SUMMILUX 35×MONOCHROME。背景がとにかくボケる。
撮影:林佑樹
SUMMILUX 28×ORIGINAL。そんなにボケないだろうとおもっても背景はしっかりボケる。また着物の色は青みがかった灰色に近い色だが、Leitz Looksでは思いっきり違う色になった。雰囲気優先といえばそれまでだが、撮影時点ではわからないため、初回では驚いた。
撮影:林佑樹
NOCTILUX 50×CINEMA CONTEMPORARY。想像以上に大きいボケが生まれる。また、CINEMA CONTEMPORARYはシャドウ部が極端に落ち込みやすい印象だ。
撮影:林佑樹
遠景を撮影した際はボケ感は生じず、フィルターが適用されるだけになる。
たまに遠景でもレンズをエミュレートしようとするときがあり、その結果、ピンの外れた写真が出力されることもあった。
なお、Leitz Looksを使用しない場合はAQUOS R7のままのようで、ごく一般的なスマホカメラの挙動になる。
SUMMILUX 28×MONOCHROME。これくらいの距離まではボケる範囲に含まれている。
撮影:林佑樹
SUMMILUX 28×CINEMA CONTEMPORARY。オートHDRもオンにしている。レンズのエミュレートが生じている感はない。どちらかといえば、うまくオートHDRが効いて、雰囲気のある状態になっている。
撮影:林佑樹
SUMMILUX 28×CINEMA CONTEMPORARY。光線がしっかりしていると、くっきりした発色で気持ちいい写真になる。
撮影:林佑樹
ちなみに、露出は明るめに設定されているが、少し露出を下げると雰囲気がガラッと変わる。どのフィルターでも同様なので、撮り方次第で楽しめる部分だろう。
撮影:林佑樹
Leitz Looksにはいわゆる「夜景モード」が存在しないため、平たく言えば荒い絵になりやすい。また、暖色系のほとんどは見た目以上に色が薄くなる。
MONOCHROMEを選ぶと粒子ノイズが乗ったような雰囲気になるが、フィルムのノイズとは異なるため、素直に通常の撮影モードで夜景を撮影したほうが無難な印象がある。
淡い光がある状態で、かつ三脚があればそれなりにキレイに撮れる。ただし接写のみ。遠景はどうやってもダメだった。
撮影:林佑樹
クセをつかむまでは大変だが、素性がわかってくるとピーク性能を引きだすにはどうしたらいいか、このパターンはまず大丈夫だろうと、ちょっとずつ楽しくなってくる。
「便利一直線」のスマホカメラの傾向からすると、時代に逆行しているが、「不便が楽しい」といった感覚だ。
条件付きだが販促ツールとしての可能性
夜景の際に触れているが、肉眼では暖色系であっても、やや淡い感じ、もしくは白っぽく記録されている。
照明の性能がもろに影響しており、逆に言えばCRI-Ra96(光源の質、高いほど質がいい)で見た場合、太陽光に近いスペクトルであれば、別段補正など必要なく、いわゆる「いい感じ」の写真を即座に展開できる。
例えば、照明器具のメーカー・オーデリック製のライトであれば、NOCTILUX 50とCINEMA CLASSICの組み合わせは「物撮りカメラ」として強力で、料理や小物のアピールに便利だ。
オーデリックなどのハイエンドなLEDの環境下で撮影してみた。白米のおいしそうな雰囲気が出ている。
撮影:林佑樹
個人的には金属の鈍い質感が最高なのだが、料理自体の色あいも良好だ。
撮影:林佑樹
デザートの雰囲気もよくなっている。
撮影:林佑樹
よくあるシーンを中心に撮影感覚を書いてきたが、最後に個人的に気に入った点をいくつか挙げてみよう。
まず触れておきたいのが付属のキャップだ。マグネット固定式に変更されており、着脱は楽になったのだが、問題がひとつある。
下記の写真のようにロゴが上を向いていると正しく機能するため、例えば逆さに取り付けるとすぐにキャップは外れてしまう。
うっかり取り付け方向を誤ると、筆者のようにキャップを湯豆腐の中に落とすことになるので気を付けてほしい。
キャップの向きは決まっているのは、さすがに不便だ。
撮影:林佑樹
NOCTILUX 50×CINEMA CLASSIC。露出を下げてあれこれ考えるをやめてみたところ、たまたま好みの雰囲気になった。
撮影:林佑樹
SUMMILUX 28×ORIGINAL。これくらいの距離だと、ときどきボケ機能がほどよく効くことがあった。
撮影:林佑樹
NOCTILUX 50×ORIGINAL。意図的に露出を下げてアンダー気味にしているが、日が落ち始めた雰囲気が出ていていい。
撮影:林佑樹
SUMMILUX 28×CINEMA CONTEMPORARY。光線位置によっては、意図せずふわっとした絵作りになることも。
撮影:林佑樹
NOCTILUX 50×CINEMA CLASSIC。今回の撮影では、この組み合わせで露出を下げたパターンの撮影が多かった。絵の持つ重みが程よいからだ。
撮影:林佑樹
SUMMILUX 35×MONOCHROME。意外と前ボケも無難なエミュレートになっているが、うまくいかないことも多い。
撮影:林佑樹
記録した写真がどういう絵になっているか、シャッターを切った時とは異なることにはもどかしさもある。
ただ、途中から「さっきはイマイチだったが今度はどうだろう」と楽しみでもあったため、「余地のある不便」は趣味性の高いスマホカメラにはアリなのかもしれない。
SUMMILUX 28×MONOCHROME。Leitz Phone 2ならではの絵ではないが、露出を少し下げたMONOCHROMEの雰囲気はいい。
撮影:林佑樹
SUMMILUX 28×MONOCHROME。そこそこの距離にフォーカスを合わせると、あまり自己主張をしないボケになることも。
撮影:林佑樹
NOCTILUX 50×CINEMA CLASSIC。これからの夜景撮影が増える冬のイベントシーズンでは強力なアイテムになるのではないだろうか。
撮影:林佑樹