Elon Musk acquired Twitter on October 27.
Getty Images
イーロン・マスクに買収されて以降、ツイッター(Twitter)の技術的な堅牢さが試練に晒されている。関係者や専門家らの間では、近い将来サイトが崩壊するかもしれない、いや崩壊するだろうという見方まで出ている。
ツイッターほどのサイトになれば、すぐに(あるいはまったく)解決できない問題に直面したとしても簡単になくなったりはしない。しかし、マスクが買収してからわずか3週間の間に、ユーザー数がかつてない規模で急増する一方、大量の解雇と退職で従業員は急減したため、技術上の深刻な問題が起こる確度が高まっている。
11月初めにマスクが従業員の半数に当たる約3500人を解雇したことで、ツイッターの社内は事実上休業状態になった。加えて、マスクが「極限までハードコアに」働くことを要求すると、それに同意しなかった推定2000人の従業員が11月17日に退職した。
しかし、ツイッターのシステムの技術面を知る元役員は、同サイトが突然障害を起こすことは「考えにくい」と話す。たとえツイッターから全従業員がいなくなったとしても、しばらくは機能するだろうと同氏は見ている。というのも、ツイッターのシステムの大部分は独立して動くよう設定されており、遠隔操作で運営されているためである。
「それよりも、一部のユーザーから全ユーザーを対象に大規模な機能障害が発生することのほうがありそうなシナリオ」だと元役員は語る。投稿やリツイートといった機能は、不足の事態が発生すると故障したり停止したりしうるのだという。
「それを修正できる従業員がいなければ、発見が遅れ、何が原因でどうやって修正すればいいかも分からないでしょう」(元役員)
もう一つ起こりそうなシナリオとして、1つの重大な機能不全に陥ることはないにしても、小さな問題や故障がいくつも発生することはありそうだ、と元役員は言う。通知機能が働かなくなる、ツイートがフィードに表示されるまで何時間もかかる、といったことだ。今現在ツイッターの従業員が圧倒的に足りていないことを考えれば、小さな問題の修正にも時間を要するだろう。
「普通なら、こういう不具合を修正することはさほど難しくはありません。しかし今の状況では、数日か数週間はかかるでしょうね」(元役員)
こうした問題を防ぐためにはデータとサーバーのメンテナンスが重要になるわけだが、人員不足のためこの業務は中断している、とツイッターのシステムに詳しい元従業員は話す。
「マスクが来る前は、僕たちもやるべきタスクが大量にあったんですが、今じゃとうてい全部なんてこなせませんよ。ツイッターはもう終わりだ」(元従業員)
同元従業員は、遠からずツイッターは数日おきに重大な問題が発生して修復不能となるまで問題が積み重なり、事実上崩壊したサイトからユーザーが離れていくだろう、と予測する。
技術者やエンジニアリングの専門家らは、今後数週間のうちに問題が発生しそうな、一見軽度な事象についてツイッターに投稿している。たった一人の従業員が不正なコードを紛れ込ませただけでも、すぐに修正する者がいなければ有害となりうる。未然に誰にも発見されない、あるいは発見できてもその修正方法が分からなければ、セキュリティ上の脅威につながる。
ツイッターの現役エンジニアが11月17日に語ったところによると、彼を含む残留社員は今になって「ツイッターを存続させるためにあらゆることを学ばなければならない」ことに思い至ったという。
ツイッターが失った知識とコードベースを鑑みるにそれは不可能に近い、とある元従業員は語る。
「僕ら全員を解雇しておいて、週が明けたら誰かが出勤して魔法のように全てを直すなんて、あるわけないじゃないですか」(同従業員)
マスクは11月17日、新生ツイッターではやっていけないと判断したエンジニアに残留してもらうべく時間を割いた。ツイッターはエンジニアを失ったうえ、会社とユーザーのデータを扱う情報セキュリティ部門も、財務部門ももぬけの殻だと同社をよく知る2人の人物は明かす。
マスクは11月18日の早朝にいきなり、社内に残っているコーディング経験者を招集した。マスク自身がツイッターの技術を「もっと理解する」ためだという。
「彼(マスク)は、ツイッターが積み重ねてきたあらゆることを自分一人で、1日で理解できると思ってるんでしょうね。そんなバカげたことあるかよって、誰か教えてやってほしいです」(元従業員)
(編集・常盤亜由子)