Susan Walsh/AP
- イーロン・マスクは、テスラでのリーダーシップのスタイルでツイッターを経営しようとしている。
- マスクはかつてテスラの従業員に対して「スーパーハードコア」「ウルトラハードコア」に働くように伝えていた。
- ツイッターにおけるマスクのリーダーシップは、同社にとっての大きな転換を意味し、大量離職を引き起こしている。
イーロン・マスク(Elon Musk)は、ツイッター(Twitter)でもテスラ(Tesla)の経営スタイルを取ろうとしている。
2022年11月16日、マスクはツイッターの従業員に対して「極めてハードコア」に働くか、辞職するかの最後通告をした。
マスクは深夜に送ったメールに「これは、長時間、高いテンションで働くことを意味する」と記している。
「並外れたパフォーマンスだけが合格点となる」
このメールが大量離職につながった。だがこれは、テスラの従業員にとってはあまりにも身近な動きだ。
テスラCEOとしてのマスクは長年にわたり、高い目標を掲げ、従業員に完璧を求めることで知られてきた。2021年も、マスクは四半期を好調に終えるために「ウルトラハードコアになれ」と従業員を鼓舞し、その後、モデル3の生産目標を達成するために、多数の従業員に対して感謝祭の週末まで自主的に働くよう呼びかけた。
マスクはテスラ従業員に「ウルトラハードコア」に働くことを求めた
2012年、マスクはテスラの全従業員に向けて「ウルトラハードコア」という件名のメールを送った。
「あなた方のほとんどがこれまで経験したことのないような激務になることを覚悟してほしい」とそのメールに記されていた。
「業界に革命を起こすことは、気の弱い人にはできないが、これほどやりがいのある、エキサイティングなことはない。私は個人的に、並外れた結果を出した人には、並外れた報酬を与えるようにしている。それが公平で正しいことだからだ」
マスクは補足のメールを送り「配偶者や子ども、親戚、友人に、このメールの内容を説明してほしい」と述べ、「というのも今後6カ月間、彼らがあなたに会うことはかなり少なくなり、休暇はほぼゼロになるからだ」と続けた。このメールの件名は「真のテスト」となっていたという。
「正気を保ち、離婚を避けるために、休みや旅行の予定を必要最低限に減らしてほしい」
マスクは勤勉であることで知られている。彼は週に120時間も働いたことがあると述べており、テスラの工場の床で眠っていたという。最近ではツイッター本部でも泊まり込んでいるようだ。
彼は従業員にも同じような献身を期待している。ツイッター本社で寝泊まりしたことで話題になったマネージャーは、マスクの腹心の部下になった。
このような方針やマスク自身に反発すると、それなりの結果を招く可能性がある。
マスクはツイッターのCEOに就任すると、自身のツイッターアカウントのユーザー名を「Chief Twit(ツイッターのボス)」に変更し、すぐに従業員の半数以上を削減した。ツイートやスラック(Slack)の社内チャンネルでマスクを批判したとされる従業員も解雇された。
彼はテスラやスペースX(SpaceX)でも同様の措置を取っている。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のティム・ヒギンズ(Tim Higgins)記者は、マスクが怒りに任せて従業員を解雇したとされるいくつかの事件について詳細に記した本を2021年に出版した。
当時、マスクは本で主張されていたいくつかのことに異議を唱え「間違っている」とツイートした。また、怒りに任せて解雇するという主張も否定し、「明確で率直な」フィードバックを与えているだけだと述べた。
マスクのリーダーシップによって大きく変わるツイッター
マスクが最初にツイッターの買収を申し出たとき、元テスラ取締役のスティーブ・ウェストリー(Steve Westly)はツイッター従業員に対して不測の事態に備えて「トラックシューズを履いておくように」と警告した。
マスクの実益を重んじるリーダーシップのスタイルは、ジャック・ドーシー(Jack Dorsey)やパラグ・アグラワル(Parag Agrawal)の経営スタイルからの決別を表している。
マスクは買収後すぐに、毎月の「休息日」や無料ランチの廃止を決め、リモートワークもほぼ禁止した。
このようなリーダーシップのスタイルによって、テスラは世界有数の企業になったが、ツイッターでも同じインパクトを与えられるかどうかは議論の余地がある。
ソーシャルメディア企業の経営は、マスクの手に負えないものかもしれないと語る専門家もいる。
監視団体「Media Matters for America」のアンジェロ・カルーソン(Angelo Carusone)代表は「彼の他の会社での経験は、ツイッターには通用しない」とInsiderに述べている。
「テスラやスペースXで彼は静的な製品を扱ってきた。だがツイッターは動的な生命体のようなものだ。手を加えられるような機械ではなく、人間で構成される製品なのだ」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)