「アルテミス1」ミッションの6日目にオリオン宇宙船から撮影された映像。宇宙船のすぐ近くの月と、月の地平線に沈もうとする地球の様子がとらえられている。
NASA
- NASAの宇宙船「オリオン」は、ミッション「アルテミス1」で、初めて月周回軌道に乗った。
- オリオン宇宙船からの写真は、それが地球を離れ、月の裏側へと疾走していることを示している。
- 50年前にアポロ計画が終了して以来、人間が搭乗するために作られた宇宙船が月へ行くのは初めてのことだ。
NASAの新型宇宙船「オリオン(Orion)」が月の裏側まで到達し、その美しい写真を地球に送ってきている。
2022年11月16日(現地時間。以下同)、オリオンは新型ロケット「スペース・ローンチ・システム (SLS)」の初号機に搭載されて打ち上げられた。この宇宙船もロケットも1972年の最後のアポロ計画以来初めて人類を月に送り届けるために設計され、NASAの月への野望を「アルテミス(Artemis)」という新たなプログラムで復活させたものだ。オリオンもロケットも今回初めて飛行に成功した。
ロケットの役目は終わったが、オリオンは今、25日間の月周回の旅を終えようとしている。このミッションは「アルテミス1」と呼ばれるもので、この宇宙船が安全に宇宙飛行士を運べるかどうかを確認する無人飛行試験だ。
下の写真は地球から遠ざかる時、オリオン宇宙船のカメラが地球を撮影したものだ。
オリオンの4つの太陽電池パネルの1つが打ち上げ直後に地球上空で展開される様子。
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オリオン宇宙船は11月20日、月が地球を抜いて主な重力源となる「月の重力圏」 に入った。
オリオン宇宙船の太陽電池パネルの先端に取り付けられたカメラで撮影された「オリオンと月」。
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2022年11月21日には、オリオン宇宙船は月をかすめるようにして、月面の約81マイル(約130km)上空を飛行し、3つのアポロ着陸地点の上空を通過した。NASAによると、オリオン宇宙船は時速5102マイル(約8210km)で通過してからその後減速し、時速3489マイル(約5615km)で宇宙空間を駆け抜けたという。
オリオン宇宙船が最も月面に接近して通過した日は、月の裏側が大きく見えた。
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オリオン宇宙船は月の裏側を飛行した。アポロ計画以降、この景色を直接体験した人類はいない。だが、今回オリオンがこの初飛行に成功すれば、NASAは次回宇宙飛行士を乗せて月へと送る予定だ。
11月25日、オリオン宇宙船は月から最も遠い地点、約5万7287マイル(約9万2194km)先に到達した。その後、11月28日に地球からの最遠距離記録を更新するはずだ。今回のミッションではこれまで人類を運ぶために作られたどの宇宙船よりも約2万マイル(約3万2186km)も地球から遠い場所に到達する。
このミッションは宇宙船の限界を試すためのものである。オリオン宇宙船には科学機器やセンサーを取り付けた3体のマネキンを搭載し、将来に搭乗予定の宇宙飛行士に影響を与える可能性のある加速度、振動、放射線を測定している。
「アルテミス1」ミッションの飛行1日目、宇宙船オリオンのクルーモジュール内部。宇宙飛行士の代わりに「ムーニキン(Moonikin)」という愛称のマネキンがクルーとして座っている。
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その後、月の重力がオリオンを地球へ向かわせ、大気圏に突入する。その際には、宇宙飛行士を保護する熱シールドの能力が試されることになる。そしてオリオンはパラシュートを開き、太平洋に着水する予定だ。
オリオンが地球の大気圏に再突入し、着水に向かって落下する様子を描いたアーティストによるイラスト。
NASA/Liam Yanulis
NASAは、2025年にSLS、オリオンとスペースX(SpaceX)の二段式大型ロケットであるスターシップ(Starship)を使って、再び月に宇宙飛行士を着陸させる。最終的には月面に恒久的な基地を設置し、月軌道上に新たな宇宙ステーションを建設する計画だ。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)