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米金融大手ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)のストラテジストチームは、2023年の株式市場もさほど大きな期待はできないと考えているようだ。
同社チーフ米国株ストラテジストのデビッド・コスティンらは、11月21日付の顧客向けメールで、2023年のS&P500種株価指数の年末目標を現在(11月24日時点)の水準に近い4000に設定した。
この予測は、米連邦準備制度理事会(FRB)がアメリカ経済の景気後退を伴うことなくインフレを鎮圧する、いわゆるソフトランディングに成功することが前提となっている。
したがって、仮に景気後退入りを回避できなかった場合は、S&P500種指数が安値で3150まで下落する展開が想定されている。
【図表1】S&P500種株価指数の推移とゴールドマン・サックスによる2023年の予測。青の点線がソフトランディング、灰色の点線がハードランディング。
Goldman Sachs
ソフトランディングを基本シナリオと位置づけながらも、2023年を(強気ではなく)中立とする理由として、金利上昇により企業収益が低下する可能性をコスティンらは挙げる。
それでも、大半の銘柄が高いパフォーマンスを発揮する理想的な展開は期待薄ながら、リターンを得るチャンスはまだ残されているというのがコスティンの見方だ。
コスティンらのチームは前出の顧客向けメールで、投資家が2023年の株式市場に対してどのようにアプローチすべきか、リターンを得る機会をどこに見出すべきか、損失を回避するにはどうしたらいいか、投資戦略を5つのポイントに分けて紹介している。
2023年の投資戦略「5つのポイント」
第1に、投資家はポートフォリオを金利上昇に耐性のあるディフェンシブ銘柄に傾斜配分すべきとコスティンは指摘する。
ゴールドマンがとりわけ強く推奨するセクターは、ヘルスケア、生活必需品、エネルギー。
上記3セクターへのエクスポージャーを取る選択肢としては、上場投資信託(ETF)の「ヘルスケア・セレクト・セクターSPDRファンド」「ヴァンガード生活必需品ETF」「iシェアーズ・グローバル・エナジーETF」がある。
第2に、コスティンはインフレが沈静化に向かいつつも高止まりを続けている状況でアウトパフォームする銘柄を推奨する。
サブセクターとしては、医療機器、半導体、消費者サービス、ソフトウェアなどにそうした銘柄が集中する。
【図表2】インフレが高水準にとどまりながら沈静化に向かう状況下において、市場平均に対する超過リターンをサブセクター別に比較したチャート(1962年以降の該当時期のパフォーマンスを年換算)。
Goldman Sachs
これらのサブセクターへのエクスポージャーを取る選択肢としては、「ファースト・トラスト・インデックス医療機器ETF」「ヴァンエック半導体ETF」「iシェアーズ・米国一般消費財ETF」「SPDR S&Pソフトウェア&サービスETF」などが挙げられる。
第3に、収益性の低い長期保有株(ハイテクセクターのグロース株がその典型)は回避すべきとコスティンは指摘する。
「収益力の低いグロース株は、資本コスト上昇による割引率(将来における価値が現在どの程度の価値を持つかを計算する際の利率)の上昇リスクに加え、金融引き締めの環境下で資金調達源を増やす必要があり、それもリスクとなります」
第4に、厳しい経済状況にもかかわらず利益率を伸ばしている銘柄をコスティンは推奨する。
ここ数年、最も力強い(コロナ危機からの)利益率の回復を見せ、2023年も引き続き利益率を伸ばすことが予想される銘柄をコスティンは列挙する。
その筆頭に挙がるのは、航空機リース大手エア・リース(2023年の予想利益増加率は4.29%)、移動体通信大手TモバイルUS(同3.75%)、製薬大手イーライ・リリー(同3.68%)。
最後に第5のポイント。近年の利益率の増加が、売上高の伸びに伴うものではなく、経費の減少による結果と見られる銘柄は回避すべきとコスティンは指摘する。
支出が増えるなり(コロナ以前の)元通りになるなりすれば、嵩上げされた利益率が剥落していく可能性が高いからだ。
2019年以降、研究開発費を除く支出が最も縮小した企業、それゆえに利益率が低下するリスクの最も高い企業は、製薬大手ファイザー、コンピューター支援設計(CAD)ソフトウェアのオートデスク、医療機器のホロジック。
コスティンは上記3銘柄を含めてリスクの高い企業をリスト化し、(前出の顧客向けメールで)提示している。
「売上高に占める販売費および一般管理費(SG&A)の減少は、リストアップしたすべての銘柄について、純利益増加分の少なくとも半分を占めます。したがって、支出の縮小を生み出した環境が正常化し、(金融引き締めの影響などで)需要が減速すれば、利益率に下方圧力がかかることになります。
SG&Aが元通りになった結果、1株あたり利益(EPS)の下方修正という展開に向かった場合、リストアップした銘柄のパフォーマンスは低下するかもしれません」
(翻訳・編集:川村力)