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- 豚肉の需要が高まる中国では、高層ビルでブタを育てる「養豚ビル」が増えている。
- ガーディアンによると、湖北省に新しくできた26階建ての養豚ビルでは最大65万頭の豚を飼育できるという。
- ただ、こうした養豚ビルでは病気が蔓延しやすいと懸念する専門家もいる。
中国のHubei Zhongxin Kaiwei Modern Farmingは、年間120万頭の豚を食肉処理できる26階建ての高層ビルを建てた。ガーディアンは「世界最大の養豚ビル」だと報じている。
この養豚ビルは、中国で高まる豚肉の需要に応えようと湖北省鄂州市の郊外に建てられた。世界の豚肉の半分は中国で消費されていると、ガーディアンは数年前に報じていた。
ガーディアンが入手した発表文によると、この高層ビルでは最大65万頭の豚を飼育できる。建設には40億元(約776億円)かかったという。
合わせて80万平方メートルあるこの養豚ビルには先端技術が導入されていると、ガーディアンは伝えている。中央制御室のボタンで自動的にえさが与えられ、ブタの排泄物は発電などに使われる。
Hubei Zhongxin Kaiwei Modern Farmingはすでに3700頭の雌豚をこの養豚ビルに送り込んでいると、ガーディアンは報じた。
この養豚ビルの近くに住むある農業従事者は「考えられない。30年前は自分もブタを育てていたけれど、裏庭の豚小屋で2~3頭だった」と同紙に語っている。
「こうした施設で育てられたブタは2、3カ月で売れるようになると聞いたけれど、昔は1頭育てるのに1年くらいかかっていた。技術の発展によって、今後はこれがトレンドになるのだろう」とこの男性は続けた。
疾病対策としては、ビルで働く人々の検査と消毒を徹底し、養豚ビルに一度入ったら1週間はとどまることを義務付ける可能性があると、ガーディアンは発表文をもとに報じている。
中国農業科学院のZhu Zengyong教授は「養豚業は高度に自動化、自動制御された未来へ向かっていて、それに伴い、養豚業者の基準や敷居も高くなっていくだろう」とガーディアンに語っている。
ただ、こうした養豚ビルでは病気が蔓延しやすいなどと懸念する専門家もいる。
「こうした集約施設では家畜と野生動物の接触や病気を減らすことができるものの、一度施設内に病気が入り込めば、山火事のように一気に広がりかねない」とニューヨーク大学で環境学を研究しているマシュー・ハイエク(Matthew Hayek)助教はガーディアンに話している。
香港城市大学のダーク・ファイファー(Dirk Pfeiffer)教授は「動物たちの飼育密度が高ければ、感染性病原体が広がる危険性も変異の可能性も高まる」と話している。