Falcon9ロケットのフェアリングに搭載作業中のランダー。
画像:ispace
SpaceX(スペースX)は、12月1日に予定していたFalcon9ロケットの打ち上げを、ロケットの追加検査のために延期すると発表。これにともない、同ロケットで打ち上げを予定していた日本の宇宙ベンチャー・isapceが開発する月面着陸船(ランダー)の打ち上げも延期されることとなった。なお、新たな打ち上げ予定日は未定だ。
ispaceの月面着陸戦は、当初11月28日に打ち上げを予定していたものの、他社ロケットの打ち上げ延期に伴い、打ち上げ日程を11月30日に変更。その後、ロケットに一部確認作業が必要となったため、12月1日に再延期されていた。
ispaceの資料によると、今回の打ち上げでは月面への着陸までの間に10段階のマイルストーンを設定している。その中には「打ち上げ機からの分離」といった数時間で達成が確認できるものもあれば、「軌道投入後の安定運用」と確認に時間がかかるものもある。
そのため、ispaceのランダーの月面への着陸は、打ち上げから4.5カ月後の2023年春になる計画だ。成功すれば、日本初かつ「民間初」の月面着陸となる。
なお日本では、11月16日(日本時間)に米国航空宇宙局(NASA)のアルテミス計画初号機によって打ち上げられたJAXAの超小型探査機OMOTENASHIが、日本初の月面着陸を果たすと期待されていた。ただ、打ち上げ直後から通信が不安定になるなどのトラブルに苛まれ、JAXAは11月22日に月面への着陸を断念すると発表していた。
10年越しの夢、果たせるか
ispaceは2010年9月に創業した宇宙ベンチャー。現在では、日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動しており、スタッフも200名以上在籍するなど、国内の宇宙ベンチャーとしては最大規模だ。
ispaceは当初、アメリカのXPrize財団が主催した月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」の参加チーム「HAKUTO」として始まった。HAKUTOでは、月面ローバー(探査車)を開発。月面探査レースの最終選考に残った5チームのうちの1チームとして期待されていたものの、探査車を月面に運ぶ計画が整わず着陸は実現できていなかった。
ただその後、同社は2022年7月時点までに総計約268億円超の資金を調達。新たな月面探査計画を進めていた。
今回の月面着陸ミッションでは、「着陸機の設計及び技術の検証」と「信頼性の高い月面輸送サービスと月面データサービスの提供」という事業モデルの検証及び強化を目的としている。また今回のミッションのフィードバックを経て、2024年には月面「探査」ミッションの打ち上げも予定している。
ispaceの袴田武史代表は、ミッションの第一段階である「打ち上げ準備が完了」した段階で、次のようにコメントを発表している。
「ミッション1マイルストーンの第一段階を計画通り完了したことを嬉しく思います。
2016年に構想を開始してから約6年という短期間で、民間資本でここまで実現したことは誇るべき偉業です。短期間で確実な開発を民間で行うために、世界中から実績のある技術・部材を採用し信頼性と低コストのバランスをとった設計・開発方針を貫き、そしてその開発を支える顧客獲得・資金調達・組織構築等のすべての努力の結晶がこのSuccess1の打上機搭載完了に結実しました。
ミッション1の実現に向けて尽力した社員及び関係者の皆様に改めて感謝申し上げます。次の段階は打ち上げ日の初期クリティカル運用となります。引き続き気を引き締め必要な準備を進めてまいります」(11月28日発表のリリースより引用)