投資家の間では、2023年の景気後退入りがほぼ確実視されている。そんな中でどう資産を守り、増やせばいいのか。豪資産運用大手マッコーリー・アセット・マネジメントの考える戦略とは。
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運用残高5410億米ドル(約75兆7400億円)の豪資産運用大手マッコーリー・アセット・マネジメントは、イギリスや大陸欧州諸国に続いてアメリカも数カ月以内に景気後退入りすると予測する。
もちろん、これは悪いニュースだ。ただし、マッコーリーの2023年見通しによれば、景気サイクルのステージが変わって回復に向かう日はそう遠くない。
マッコーリーのリサーチ責任者を務めるダニエル・マコーマック氏は11月30日の投資家・メディア向け説明会で次のように指摘した。
「2023年上半期中に、アメリカはかなり浅く、期間のきわめて短い景気後退を経験することになるでしょう。そして、第4四半期(10〜12月)には、アメリカ、イギリス、さらには大陸欧州という3つの経済圏が、世界経済の成長を力強くけん引しているはずです」
2010年代後半の経済および株式市場の数年にわたる力強いパフォーマンスは世界(全体)の成長あってこそ実現したもので、それだけにマッコーリーの予測は投資家たちの耳に心地よく響くはずだ。
しかし、マッコーリーのチームは今回、力強い回復が確実視されるとまでは言っておらず、むしろ今日の世界経済は3つの大きな障害に直面していると指摘する。
グローバリゼーションは過去数十年間にわたって経済成長を支えてきたが、いまやその力は弱まり、それどころか阻害要因にすらなりつつある。一方で生産性の伸びは鈍化し、多くの国では人口の高齢化が進んで労働者の数が減り、成長の達成と維持が難しくなってきている。
「これらは何かの拍子に一気に解消される類いの障害ではありません。今後しばらくは世界経済の景色を特徴づける要素であり続けるでしょう」
マッコーリーのシニアマネージングディレクターで株式部門を統括するジョン・レナード氏は、エネルギー価格の高止まり、住宅ローン金利の上昇、ドル高、景気刺激策をはじめとするコロナ対応の政府支出の削減など、足元の株式市場には暗雲が漂っているとしつつ、次に挙げる2つのテーマについては買いを推奨する。
「『グローバリゼーションの逆行』は、長期的なトレンドになると考えています」
レナード氏によれば、数多くの企業がいまサプライチェーンおよびオペレーションの変革に取り組んでおり、その一環としてオペレーションの一部を(ハイリスクな)中国やドイツなどからアメリカに移転させる動きが見られる。
アメリカ中西部はすでにこうした「リショアリング(企業の国内回帰)」ブームの恩恵を受けており、そのプラスの影響はやがて同エリアの住宅市場にも(移転需要の増加を通じて)広がっていく。
さらに、企業の設備投資サイクルも促進されるので、恩恵は一般消費財メーカーやハイテク・デジタル企業にまで波及するとレナード氏は指摘する。
「(設備投資の活発化は)生産性の向上を促すことになるため、目下アメリカで懸念されている生産性の低下を少なくとも一部相殺できる可能性があります。また、再生可能エネルギーやクリーン燃料への移行を伴うことで、長期的なアウトパフォームも期待できるでしょう」
マッコーリーが挙げるもう一方の買い推奨テーマは「リアルアセット(実物資産)」だ。
ただし、同社リサーチ責任者のマコーマック氏(前出)は、リアルアセットの中でもインフラと農業関連を強気としつつ、不動産についてはポジティブながらやや推奨度が落ちると指摘する。
インフラは、構造的な経済成長をけん引するいくつかの要因へのエクスポージャーを取ることができる上、(景気動向に左右されにくい)ディフェンシブな特性を持ち、インフレをヘッジしながら利回りを確保することができるという。
「こうした特性はいずれも投資家にとって非常に魅力的に映るはずです。インフラ資産はその魅力的な特性に加え、リスク・リワードのバランス(リターンを得られる期待値)も優れています」
また、農業関連の資産は、株式や債券に集中しがちなポートフォリオのリスクを分散化し、インフレ防衛の手段にもなる上、利回りも良く、安定したリターンをもたらすとマコーマックは説明する。
なお、不動産にも間違いなくチャンスはあるものの、足元について言えば、住宅ローン金利の上昇に伴う価格下落が今後どう推移するのかが懸念材料になっているという。